2024年 4月 26日 (金)

【男と女の相談室】「お前は犯人ヅラ」と言われたら 人工知能が顔写真で犯罪者判定

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   「このツラ構えは、絶対にやっている! しょっぴいて叩けばホコリが出るだろう」。今どきこんなセリフを刑事ものドラマで言わせれば、「人権侵害だ」とインターネット上で炎上するのは必至だ。

   中国の研究チームがAI(人工知能)を使って顔写真から犯罪者か犯罪者でないか「判別」する方法を開発、ネット上で「これは冗談?   それとも中国の司法当局は本気で使うつもり?」「理にかなった研究だ」と話題になっている。

  • 「犯人」は顔を見ればわかる?
    「犯人」は顔を見ればわかる?
  • 「犯人」は顔を見ればわかる?

「鼻の下が長い」「両目の間隔が短い」と犯罪者

   研究をまとめたのは中国・上海交通大学の暁呉氏と西帳氏の2人。米マサチューセッツ工科大学(MIT)の子会社が運営するテクノロジーの学術サイト「MITテクノロジ・レビュー」(電子版)の2016年11月21日号に発表した。

   論文によると、研究チームは、18~55歳までの1856人の中国人男性の顔写真を実験に使った。写真は顔に傷やホクロ、メガネや垂れた髪など覆う部分がなく、すべて身分証明書の写真を使った。犯罪者の場合でも警察で撮影した写真は使用していない。1856人のうち、前科のない非犯罪者は1126人、犯罪者は730人。犯罪者のうち235人は殺害、強盗、誘拐、暴行などの凶悪犯だ。

   これらの顔写真を、膨大な量の犯罪者の写真から「学習」したAIに見せ、4つの画像処理の方法を使って「犯罪者」か「非犯罪者」を判定させた。すると、その中の1つ「畳み込みニューラルネットワーク」(CNN=Convolutional Neural Network)という画像認識方法を使うと、89.5%の高率で「犯罪者」を識別した。CNNは、脳の視覚野の神経結合と似たネットワークで、人間の認知とよく似た学習が行われるため、最近注目されている方法だ。ほかの3つの画像認識方法でも、数パーセントの差の範囲内で「犯罪者」を識別した。

   いったい、AIはどうやって「犯罪者」と「非犯罪者」を識別したのか。両者には次のような「違い」があるという。

(1)犯罪者は、鼻の先と唇の両端を結ぶ二等辺三角形の形に特徴がある。二等辺三角形の頂点の角度が、非犯罪者に比べ、平均19.6%小さい。つまり、角度が小さいため、三角形が尖がっており、鼻の下が長く見える。
(2)犯罪者は、上唇の曲率(カーブ)が非犯罪者に比べ、平均で23.4%大きい。つまり、口を「へ」の字で曲げる割合が高く、ムッツリした表情になる。これに対し、非犯罪者はちょっと微笑んでいる印象を受ける。
(3)左右の目の間の距離が、犯罪者は非犯罪者に比べ、平均で5.6%短い。つまり、目と目の間隔が狭いのだ。

   以上のことから、論文に掲載されている犯罪者と非犯罪者の見本の顔写真を見ると、全体的に犯罪者はやや陰気な、非犯罪者はやや陽気な印象を受ける。

男性ホルモン値が高いと犯罪者になりやすい

   そして、犯罪者の顔の形が非犯罪者と違う特徴を持つ理由として、論文では、「犯罪者の多くは男性ホルモンのテストステロン値が高い」という、これまで多くの国で発表された研究成果をあげ、「ホルモンの影響で顔の形が変わってくる」と説明している。今回の結果について、研究チームは、アリストテレスの「外見の特徴から本質を推論することは可能である」という言葉を引用しながら次のようにコメントしている。

「外見から性格を推論することを、心理学者ではなく機械が行なって、なぜいけないのでしょうか?   今後の懸念事項は、『偽陽性』の問題です。つまり無実の人を有罪と認定すること。そして、『偽陰性』の問題もあります。有罪の人を無実と認定することです。AIを司法制度に導入するためには、偽陽性と偽陰性をできるだけ排除できるよう精度をあげなくてはなりません」

   「偽陽性」や「偽陰性」は、エイズや乳がんの検査の時に、「陽性」か「陰性」かがはっきりしない場合、いったん「偽陽性」とか「偽陰性」と判定し、より精密な検査で調べ直すなど、医学の世界ではよく行なわれる。しかし、それを司法の世界で行なうのは人権上問題だ。研究チームは、犯罪捜査と医学検査を同様に考え、このAIの導入を本気で目指しているのだろうか。

「最悪の研究」か「司法の偏見に対する風刺」か

   この論文については、「MITテクノロジ・レビュー」のコメント欄に世界中の専門家から多くの投稿が寄せられている。批判が圧倒的に多い。

「論文の要約を最初に読んだ時、冗談かと思った。私が今までに読んだ最悪の研究だ。非科学的研究の好例として学校で教えるべきだ」
「非常に面白く読んだ。刑事司法の分野で根強く残る、外見(貧困・人種など)から判断する偏見をこれほど明確に表した研究はない。研究者は、そうした偏見と戦うために、あえてこの論文を発表したのだろう」
「私はそうした『陰謀』説や『風刺』説をとらない。中国の司法制度の現状を考えると、顔写真に使われた『犯罪者』が、本当に罪を犯したかどうか疑問だ。また、『非犯罪者』が罪を犯していないとどうして証明できるのか?」
「犯罪を行なうと顔が物理的に変わることはありうる。カルト教団のリーダーで5人を殺害したチャールズ・マンソンも犯行前は非常に穏やかな顔をしていたが、別人のように変貌した」
「有罪判決や投獄生活人格に影響を与え、顔を変えることもあると思う」
姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中