「万引き」「いじめ」「暴力」...。高校野球でこんな不祥事が相次いでいるのを知っているだろうか。しかも毎月、処分が行われている。高校が圧倒的に多い「野球部員が窃盗と、盗品授受。よって対外試合禁止3ヶ月とする」2016年12月16日、日本学生野球協会の審査室会議が当該高校に下した処分である。この会議は学生の不祥事の処分を決めるもので、計10件の処分が発表された。その内容は部員だけでなく監督、部長の行為も含まれている。「部員のいじめ」「部員の暴力」「監督、部長の暴力」この審査室は毎月のように開かれている。不祥事がいかに多いかを示す証明である。今年も多かった。高校が圧倒的に多く、9月には15件、7月には13件(他に大学1件)、10月12件、3月11件。ひと桁だった他の月の分も加えると、1年間で100件近くになる。高校野球というと、春夏の甲子園大会が象徴となっている。「汗と涙」が常に報道され、日本のスポーツ大会ではもっともファンを興奮させる最大のイベントといっていい。優秀選手にとってはプロ野球への登竜門である。実は、一方では、驚くべき不祥事が起きている。高校野球のイメージを損なう「もう一つの顔」だ。監督や部長らのとんでも行為部員の事件は「いじめ」「暴力」が多いのだが、深刻なのは監督や部長らのとんでもない行為である。その筆頭が破廉恥行為。「女子学生と不適切な関係」「児童買春」も明るみになった。いずれも部を総括する部長や副部長。彼らは「除名」処分とされ、高校球界から追い払われた。学校の姿勢が問われるのは中学生のスカウト行為である。ある高校は公立中学校、少年野球チームの指導者に手紙を送付。入学の便宜を図るような中身だったという。また、ある高校では禁止されている中学生を練習に参加させた。この中学生スカウト行為は強いチームにしたいという思いからなのだろう。確かに強力チームになれば受験生が増える。その年に活躍したプロ野球選手の出身校には志望者が殺到する。「甲子園があるから」それが現実である。小学生でも高学年になると、保護者も夢を持つ。中学に進んで好成績を残せば、高校から目を付けられる。そして「甲子園への道」と意識する。審査室から処分を受けた高校の中には、甲子園に何度も出場した有名校もある。進学校もある。プロ野球の有名選手が出た高校もある。不祥事の内容を見ると、現在の社会で起きている同じ事件ばかり。高校野球は「現代社会の縮図」といっていいだろう。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)
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