金正男氏「中国の保護は煩わしい」発言 東京新聞・五味編集委員明かす

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   マレーシア・クアラルンプールで暗殺された金正男氏(45)に長時間インタビューをした唯一の記者として知られる東京新聞の五味洋治編集委員が2017年2月17日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見し、「個人的にも非常にショックを受けている」と沈痛な面持ちで語った。

   北朝鮮の世襲に批判的な発言を繰り返していた正男氏は中国当局の保護を受けていたが、五味氏によると、正男氏は友人に対して「そういう保護が煩わしい」などと話していたという。正男氏は、こういった事情を背景に東南アジアに頻繁に出かけ、結果として中国の手が届きにくいマレーシアで殺害された。五味氏は、今回の事件で中国は戸惑っており、中朝関係は悪化するとの見方も示した。

  • 日本外国特派員協会で会見した東京新聞の五味洋治編集委員
    日本外国特派員協会で会見した東京新聞の五味洋治編集委員

「彼なりの決心で、現在の北朝鮮の体制を批判」

   五味氏は2004年に北京空港で偶然に正男氏に会い、2010年からメールのやり取りが始まった。11年1月にマカオ、同5月に北京で長時間のインタビューを行った。五味氏は12年にインタビュー7時間、メール150通をまとめた著書「父・金正日と私 金正男独占告白」(文藝春秋社)を12年に出版したが、正男氏は出版に反発。メールのやり取りは12年1月を最後に途絶えた。

   五味氏によると、正男氏は北朝鮮の体制に批判的で、

「権力の世襲は社会主義体制と合わず、指導者は民主的な方法で選ばれるべきだ」
「北朝鮮は中国式の改革開放しか生きる道はない」

などと話していたという。

   五味氏は今回の記者会見の冒頭で、正男氏の意に沿わない形で著書が出版されたことへの批判を念頭に置いて、

「この発言を報道したり、本にしたことで彼が暗殺されたと皆様がお考えなら、むしろ、こういう発言で一人の人間を抹殺するという、そちらの方法の焦点が当てられるべき」

と語り、正男氏に対する取材を

「私もかなりのリスクを冒して彼と会ったが、今、私が称賛したいのは、彼の勇気だ。彼がその後、たとえ命乞いの手紙を出したとしても、彼は彼なりの決心で、現在の北朝鮮の体制に関する批判をしたのだと思う」

と振り返った。

   誰が正男氏の殺害を指示したかについては「私が確実に言える証拠がない」としたものの、正男氏が中国の保護下にあったことを説明。最近は、正男氏が中国と距離を置いていたことも明らかにした。

「中国との関係は、必ずしも順調ではなかったのかも」

   五味氏は、さらに

「彼は中国に家があり、中国にいる間は中国の公安当局のボディーガードがついていると認めていた。私が会ったときには、中国人ドライバーの車で出迎えを受けていた。本人も『中国から保護を受けている』と言っていたが、ここ数年は、そういう保護が煩わしいと言っていたと、彼の友人から聞いた。ここ数年、彼が東南アジアを行き来していたというのは私も確認している。そのため、中国と金正男氏との関係は、必ずしも順調ではなかったのかもしれない、と私は見ている」

と語った。

   中国外務省の耿爽副報道局長は2月16日の定例会見で、今回の暗殺事件が中朝関係に与える影響について質問され、

「ご指摘の事件に関する報道は承知している。事態の進展を見守っている。中朝関係について言えば、両国は友好的伝統がある親密な隣国だ」

と述べるにとどめている。五味氏は、こういった反応が「戸惑いの証拠」だとして、

「この事件でますます(中朝が)遠ざかる、関係が悪くなるのではないかという感じもしている」

と話した。

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