高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
安倍首相「働きかけ」有無の調べ方 「国有地売却」問題のキモ

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   学校法人「森友学園」への国有地売却を巡って、安倍晋三首相の関与が国会で問題となっている。安倍首相は関与を否定しており、昭恵夫人も含めて関与が明らかになった場合は「総理大臣も国会議員も辞める」と明言している。

   筆者は財務省勤務時代、財務局理財部長を経験したことがある。国有地売却の実務は財務局管財部長が行うので、直接の実務者ではなかったが、その手伝いくらいはやったことがある。そのほか、役人を長く経験したので、政治関与の方法などもそれなりに知っている。こうした経験を踏まえて、このニュースの見方を紹介しよう。

  • 2016年8月撮影
    2016年8月撮影

財務省財務局長らの応接録を調べればいい

   政治関与の話は、調べれば簡単にわかる。今回の場合、本省理財局長、財務局長、財務局管財部長らの応接録を調べればいい。鑑定評価も調べるのは容易だ。一定額以上の売却では審議会(国有財産近畿地方審議会)プロセスもあるので、それを見ても手続きフローを調べるのは簡単である。これらの話は、すでに公表されているか、そうでなくても情報公開対象なので、売却先が拒否しているなど一定の場合以外、情報請求すれば公開される。

   政治関与であれば、権限のない担当者に話をしても意味がないので、必ず役所の幹部に働きかけがある。一般的には、政治家本人から役所の幹部へ話がある。しばしば秘書が話にくると言われるが、政治家本人から話がなければ、役所の方もたいした話でないと放置しておくことも多い。

   政治家から働きかけを受けた場合、応接録を作る。作らないと、責任はすべて役所が被ることになるから、役人側の保身のためでもある。日時、方法、内容などが具体的に記されるので、どこの役所でも定型化された様式があるくらいだ。

   なお、かなり昔は、それこそ政治家の口利きや取得希望者・社が自ら役所へ働きかけて、安く国有地を取得できたこともあったらしい。大手新聞社の本社の土地取得では、そうした武勇伝を聞いたこともある。しかし、今では審議会プロセスもあり、外部チェックも入っているので、昔のような荒技はちょっと考えにくい。

価格算定が不適正なら、財務局の事務ミスということに

   また、安倍首相自身も、かつて財務省からの情報リークで苦しめられた経験もあり、財務省が政治家を籠絡する手口も知っているので、財務省案件に関与したとはちょっと考えにくい。もしあれば首相自ら明言しているように、総理の首が飛ぶ。

   いずれにしても、政治家から働きかけを受ければ、対処方針を決めて、現場の担当者へ伝える。通常であれば、現場の判断はそのままで、結果連絡について政治家にも当事者と同時か少し早く伝えるだけだ。

   政治関与がなければ、価格算定に財務局の事務ミスがあったかどうかという問題だ。本件の場合、土地価格9億超、地中のゴミ撤去費用8億円で、差し引き1億円超が売却価格となったわけだが、これが適正かどうかである。土地価格は鑑定評価を使い、ゴミ撤去費用の算定は国交省のものを使っている。それらが不適切であれば、財務局の事務ミスということになる。

   初期段階では、あまりに売却価格が低いということが一部で報道され、安倍首相・夫人が関与しているかもしれないということで過熱している。しかし、キモの政治関与のところの報道は憶測ばかりである。簡単に公開情報でわかったり情報公開請求できたりするものばかりなので、それらを踏まえたファクトに基づく報道がほしいところだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、 いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。 著書に「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、 「これが世界と日本経済の真実だ」(悟空出版) など。


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