2024年 4月 25日 (木)

PTAを入退会自由にした小学校 「ボランティアの力でこれだけやれる」

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   わが子の新入学・進級シーズンの到来とともにママを憂うつにさせるPTAの役員選び。PTAと断固闘って理不尽な役員の押し付けを撤回させたママの奮闘を取材したJ-CASTヘルスケア2017年2月24日付記事「たったひとりでPTAに立ち向かったママ 『私は壮絶バトルで役員免除を勝ち取った」は大きな反響を呼んだ。

   PTAは任意団体だから本来入退会は自由なはずだ。それを強制的に加入させているところに問題の原点がある。「PTA問題」の第2弾として、PTAの入退会を自由にして役員をスリム化、ボランティアを中心に運営するシステムに変えて、「役員の押し付け合い」をなくしたユニークな小学校の取り組みを紹介する。

  • 運動会のPTAスタッフもボランティアが行なう(写真はイメージです)
    運動会のPTAスタッフもボランティアが行なう(写真はイメージです)
  • 運動会のPTAスタッフもボランティアが行なう(写真はイメージです)

2代のシングルファーザーPTA会長の挑戦

   その小学校は、札幌市東区にある市立札苗小学校だ。NHKや日経新聞など、これまで多くのメディアに紹介されてきた。J-CASTヘルスケアが取材を申し込むと、残念ながら中島正彦教頭からこう断られてしまった。

「最近、メディアから問い合わせが非常に多くなり、それに1つ1つ対応することが大変になってしまいました。そこで、公平を期するためにPTA役員会で取材をすべてお断りすることを決めました。その代わり、PTAのホームページ(ウェブサイト)に活動内容を詳しく報告しておりますので、ご覧になってください」

   札苗小学校PTAのサイトには、運動会、餅つき大会、ふれあい祭りといった行事とともに、過去に取り上げたメディアの記事もアップされている。それらを参考に、札苗小学校PTAの活動を紹介しよう。

   始まりは2013年2月のPTA総会。PTAの会則に「入退会の自由」を盛り込むことを賛成多数で決め、役員組織を大幅にスリム化した。具体的には、会則の会員を「会員は......会の目的や趣旨に賛同し入会を希望した者とする。ただし、その目的と趣旨から、全ての保護者、教師の参加が望ましい」とした。また、役員も「広報委員会」「美化委員会」などの従来の委員会制度をやめ、事務局だけにした。事務局は会長1人(保護者)、副会長2人以上(保護者・教師1人以上)と事務局員6人(保護者3人・教師3人)だけだ。それ以外、様々な活動に必要な人間をそのつど自主的なボランティアでまかなっている。

   改革を始めた当時の会長は上田隆樹さん。妻を病気で亡くし一人娘を育てるシングルファーザーだ。上田さんは、2013年6月12日付読売新聞「変わるPTA① 原則いつでも入退会自由」の中で、経緯をこう説明している(要約抜粋)。

「PTAのあり方に息苦しさを感じていた。広報誌作成、校内花壇の手入れ、登下校の見守り......。前年並みの活動内容と人員の維持を優先するあまり、自発的な活動の余地が残されていないように感じたからだ。子どもの卒業までに委員を2回以上務めるという、明文化されていないルールもあった。PTA活動から『やらされている感』を払しょくしたかった」

「活動の手伝いなら引き受けてもいい」人が9割以上

   会長になって2年目の2012年、改革の動きをスタート。会員にアンケートをとると、7割の人は入退会が自由であることを知らなかった。また、役員になることへ強い負担を感じていた。その一方で、「活動の手伝いなら引き受けてもいい」という人が92%もいた。つまり、大半の親はPTA活動に意義を感じているのだ。そこで、入退会を自由にし、行事や活動ごとにボランティアを募る方式を提案すると、反対者が多かった。役員は当初、上田さん以外の全員が反対。入退会を自由にしたら加入者が激減し、活動を支える予算が確保できなくなることを心配したのだ。

   しかし、実際に改革を始めると、3年後の2016年4月現在でPTA加入率は95.5%と非常に高い。上田さんの「ボランティア精神」に訴える考え方に共感する親が多いということだ。上田さんの後に2015年からPTA会長になった川崎克彦さんもシングルファーザーである。川崎さんは、上田さんが始めた「ボランティア路線」をさらに推し進めた。2016年6月4日付朝日新聞「『PTA強制加入』改革の狙いは」の中で、こう語っている(要約抜粋)。

「PTAに入って息子のいじめ情報をキャッチできた」

「PTAの入退会は自由であるべきですが、その上でみんながPTAに参加するのが望ましいと思っています。私自身が入会してよかったと思っているからです。私は息子が幼稚園の時から、一人で子育てと仕事を続けてきました。息子が小学校に入り、PTAの学級委員に選ばれました。最初は『これは大変だ』と思ったのですが、やってみると、息子の学校生活がよくわかるようになったのです。たくさんの親と知り合いになり、息子の情報をキャッチできました。息子がいじめられているのではと教えてもらい、対策をとることができました」

   そして、たくさんの親が参加しやすい仕組みづくりを進めた。

「たとえば、今年度の初めに1年間の主な行事を説明し、ボランティアも募集しました。前もって告知することで予定が合わせやすくなり、参加者が増えると思ったからです。学校に来られない人には、自宅で出来るベルマークの切り抜き作業をお願いすることにしました」

   札苗小学校PTAのサイトをみると、多くの行事が写真つきでアップされている。2017年2月「バルーンアート講座」、2016年12月「もちつき体験会」、同年10月「なえフェスタ」、同年5月「大運動会」......。それぞれの紹介記事に「多くのボランティアの協力で...」「おやじの会の皆さんに...」といった記述が見える。

荒れ放題の花壇がボランティアの手でキレイに

   もちろん、委員会制度がなくなり、できなくなったこともあるようだ。2016年4月22日にこんな記述が――。

「委員会制度がなくなってから、校舎前の花壇整備はPTAでは行っていませんでした。荒れ放題の花壇を見かねた事務局員とOBさんで草とりと土おこしをしてみました。花壇の様子の変化に気づいた方はいらっしゃるでしょうか? 人手がありますと、もっともっときれいな花壇に生まれ変わります。ガーデニングの知識がない事務局員ですので、助言、お手伝い大歓迎です!」

   そのひと月後の2016年5月31日にはこんな記述があった。

「学校前花壇の花植え作業を(5月23日に)行いました。『アイラブサツナエ』と花で文字を作りました。花植え後の風で何個か花が枯れてしまいましたが、来年以降も有志の方の声があれば、続けたいと思っておりますので御協力よろしくお願いします。花植え作業ボランティアさんのおかげできれいな花壇になっております。お時間ありましたら、雑草抜きなど気づいたときにやっていただけると助かります」
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