ブラック企業への圧力となるか 「ホワイト認証」の民間機構、設立

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   「ブラック企業ゼロ」をめざして、一般社団法人・ホワイト認証推進機構(東京・渋谷区)が設立された。「形式」とともに「実態」としても労働法制を遵守する企業を「ホワイト企業」として認証し、これを通じて労働環境の改善を図る。

   旧民主党政権時代、内閣官房長官や法務大臣などを歴任してきた弁護士の仙谷由人氏(71)が代表理事を務める。仙谷氏が持つ国家行政とのパイプが、厚生労働省との情報交換や、機構の信頼性、知名度向上といった面で生かされそうだ。

  • ホワイト認証推進機構・理事長の仙谷由人氏
    ホワイト認証推進機構・理事長の仙谷由人氏
  • 理事の大川原栄氏
    理事の大川原栄氏

「ブラック企業は労働者を『使い捨て』のように扱うが...」

   ホワイト認証推進機構は2017年3月14日、厚生労働省内で設立記者会見を開き、仙谷氏と、いずれも理事で弁護士の大川原栄、田場暁生両氏が出席した。大川原氏は、「アンチ・ブラック企業」を掲げて活動する専門家チーム「ホワイト弁護団」の代表も務めている。

   仙谷氏は、少子化と人口減少による「労働力不足」の問題から、今後は労働生産性を向上させる必要がある点に触れた。そのためには「労働者と経営者が対等な立場で議論し、自律的に労働環境を改善していくことで、働くことに喜びを見出せるようにならなければなりません」と話した。

   一方的な「搾取」とも言えるブラック企業問題は深刻さを増している。直近では、過酷な労働の末に自ら命を絶った高橋まつりさんが勤めていた、大手広告代理店・電通の問題が象徴的だ。16年9月に高橋さんに労災認定が下り、その労働実態が明らかになった。死の直前の数か月の残業時間は、労働組合との取り決め上限である「70時間」ギリギリの69時間前後と記録されていたが、実態は100時間を優に超える月も珍しくなかったと、その後の調査で判明した。

   ブラック企業の今後について、大川原氏はこう話す。

「ブラック企業は労働者を『使い捨て』のように扱い、いくらでも新しい人が入ってくるかのような前提でやってきました。しかし、これからは労働者が企業を選ぶ時代です。労働者が辞めると代わりが見つからなくなります。合理的な経営を続けるためには、働きやすい労働環境という点に目を向ける必要があるのです」

   ホワイト弁護団の案件の中でも、ブラック企業を追及した結果、未払い残業代が支払われたケースなどはあったものの、「その問題が解決するだけで、根本的な企業体質の改善にはつながってきませんでした」という。その一つの原因として、

「労働法制を守る真面目な企業が評価されない時代が続いてきました」

と指摘する。

仙谷氏「実際は就業規則の中身まで分かっているか疑わしい」

   同機構が付与する「ホワイト認証」の審査基準は、大きく(1)経営陣が労働法制を遵守する意欲を持っているか(2)労働法制にもとづいて社内労務管理規定が整備され、適切な運用実態が存在するか――の2点。問題がなければ「認証書」と「ステッカー」が与えられるほか「認証ロゴマーク」が使えるようになる。審査は事業所単位で行われ、審査項目は約150。認証の有効期間は2年間で自動更新されず、引き続き認証を受けるには再度審査を受ける必要がある。

   認証にあたっての大きな特徴は、規定の整備という形式だけでなく、実態としてその規定が適切に運用されているか、という点まで厳しく審査する点だ。実態調査には労働者と経営者にアンケートも取り、双方の認識の違いを浮かび上がらせる。大川原氏はこう話す。

「形の上では100点だとしても、運用上どうなんだということです。たとえば、時間外労働を行うのに必要な『三六協定』が結ばれている場合、その内容がしっかりと従業員に伝わっているか、などを弁護士が実際に事業所に赴いてチェックします。他に、『パワハラ規定』があったとして、じゃあパワハラ問題が起きたらどこに相談すればいいのか、社内の担当者名は明示しているか。そういった点までチェックします」

   仙谷氏は、実態の把握の重要性をこう話す。

「たとえば自分の会社の約款や就業規則を持って歩いている人はほとんどいないでしょう。雇用者は労働条件をどれだけ伝え、労働者はどれだけ受け取り、運用までなされているか。私の経験上、実際は労使ともに中身まで分かっているかは疑わしいです。我々は、そうやって曖昧にされてきた就業規則や労働協約の実態を調査し、専門家のチェックの上で認証を与えていくわけです。ホワイト認証があれば、労働環境が安心できる事業所という印になります」

ホワイト認証の効果は?

   こうした審査を経て与えられるホワイト認証の効果として、大川原氏は(1)経営者が人材を確保しやすくなる(2)労働者の働く意欲が喚起される(3)企業のブランド力が向上し、中長期的な安定経営につながる――という点があるとしている。

   ホワイト認証取得後も、同機構が連携している社会保険労務士やコンサルタントといった経営改善の専門家が、労使双方からの相談に応じる「フォローアップシステム」で継続支援する。また、取得できなかった場合でも、1年以内に審査基準をクリアできそうであれば「準認証」を与え、社労士やコンサルがホワイト認証取得に向けた支援を行っていく。

   厚生労働省は16年5月、違法に労働させていた企業の名前を公表し、国による初のブラック企業認定として話題を集めた。ただ、大川原氏は

「ブラック企業があっても、行政は民間経営まで関われないため、監督指導をしてあとは自助努力に任せるのが限界です。一方、我々は専門家による具体的な改善の提案ができます」

と民間組織の利点にも言及していた。

   同機構は17年3月中にも、申請があった社会福祉法人、医療法人、派遣会社を含む20事業所にホワイト認証を付与する予定。中小企業を対象に認証を進めており、大川原氏は「将来的には大企業、上場企業、そして社会のスタンダードになれるように活動していく」という。

   認証取得にかかる費用は同機構のウェブサイトで公表している。企業の従業員数によって変わり、1~9人なら20万円、10~49人なら30~50万円、50~99人なら50~100万円で、100人以上になると個別に見積もる。99人以下の場合も「事務所数などの条件により変動する場合もあります」としている。

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