手荒れはバリアを作ってくれる常在菌の死滅が原因なので、食器洗い後に自分の体から常在菌を移植すればいい――。この真偽不明な説が、「盲点だった」「やってみます」などの声とともにネット上で「拡散」している。「たくさん移るようにこすりまくった」2017年4月22日、あるツイッターユーザーがこんな投稿をした。「手荒れになるのは皮膚上でバリアを作ってくれている常在菌が死滅するからで、それなら食器洗いが終わったら自分の体の常在菌が生き残ってそうなところから移植すればいい=首筋とか胸元とか二の腕とかをぺたぺた触ればいいという話を聞いて実行したら二日で治ったので、主婦の皆さんぜひお試し下さい」(原文ママ、現在アカウントごと削除済み)。(皮膚)常在菌とは、表皮ブドウ球菌やアクネ桿菌など人の皮膚に一定数存在する細菌をさす。この投稿は、約5万7000リツイートされてネット上で拡散。ネットメディア「grape(グレイプ)」や、複数のまとめサイトでも、このツイートが紹介された(その後、グレイプは記事を削除)。ツイッターでの反応を見ると、「自分いつも皿洗いの後に荒れてしまいます...やってみたいと思います!」「常在菌が生き残ってそうなところをさわればいいんですね!? やってみよう」「つい保湿に目が行きがちだけど常在菌は盲点だった」と「信奉者」が続出しており、なかには、「薬じゃなくて常在菌さんにお世話になればいーんだ!アルコール除菌で手を拭いたらだめなんだ!」「たくさん移るようにこすりまくった」「つまり恋人から常在菌を移植してもらえばいいのでは?」といった極端な意見も少なくなかった。一方で、「手荒れの原因は皮脂が水で流されるからでしょ...常在菌は外部から入ってくる菌から守ってくれるわけで」「常在菌って言うけど、さすがにふんわりしすぎ。食中毒のもとになるブドウ球菌や大腸菌もいるのよ」と疑問視する声も出ている。「聞いたことがない」この投稿内容に、医学的なエビデンスはあるのだろうか。微生物検査の受託事業を行う民間企業の担当者は、J-CASTニュースの取材に対し、「これまで手荒れと常在菌の関係について、調査したり、該当する文献はみたことがないです」とし、「食器用洗剤で、皮膚の表面についた皮脂などは落ちますが、風呂上りなどで体温が上昇している時を除き、普段は毛根の奥にある常在菌がなくなるということは考えづらいです」と話す。「皮膚同士の接触で手荒れが治ったり、防げるということについては、仮に移せたとしても、それによって手荒れが緩和するというのは聞いたことが無いです。むしろ、顔や首などにむやみやたらと触ることで、害のある外来菌が移る可能性もあります」とも指摘した。
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