ソフトバンク株、微妙な一進一退 「トランプリスクの陰」との関係

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   ソフトバンクグループ株が、直近の取引時間中の高値(8900円、2017年5月12日)をピークに伸び悩んでいる。初めて1兆円超の純利益を計上した17年3月期連結決算を発表した5月10日以降、「10兆円ファンド」組成の発表など「桁違い」で前向きな明るいニュースが続いているが、1月につけた年初来高値(9066円)にも届かない。「孫正義社長が米トランプ政権に食い込んでいることの強みと弱みを投資家が計りかねている」との指摘も出ている。

   2017年3月期の連結決算は、純利益は1兆4263億円と、前期(4741億円)の3倍に上った。2年ぶりに過去最高を更新し、初の1兆円台というだけでなく、2兆円も視野に入る水準だ。国内通信事業が堅調な中、グループの足を引っ張る米通信子会社スプリントの業績がやや改善。フィンランドのゲーム大手スーパーセル株や中国通販大手アリババ株の売却益といった一時的な要因も貢献した。2016年9月、3.3兆円をかけた英半導体設計大手アームの買収に打って出たことも増益に寄与している。

  • (12年10月撮影)
    (12年10月撮影)

純利益「初の1兆円超え」

   日本郵政や東芝のように、日本企業による海外企業の「高値づかみ買収」で減損処理を余儀なくされるケースが最近相次いでいるが、決算発表で記者会見した孫正義社長は「(半導体の)マーケットが拡大している。損失の計上は全く心配していない」と強調した。初の「純利益1兆円」については、「1兆円到達は当社とトヨタ自動車だけ。設立から達成までトヨタは67年かかったが当社は36年だ」と胸を張った。また、「感動のようなものはない。なぜならこれは通過点だからだ」と孫流の表現でさらなる成長を誓った。自動車メーカーとして世界販売台数の首位争いを演じるトヨタの2017年3月期の純利益は1兆8311億円で、ソフトバンクはその差約4000億円まで迫っている。

   株式市場は「初の1兆円超え」を素直に好感。5月11日のソフトバンクの株価は取引時間中に前日終値の8700円から急伸し、2.2%高い8895円まで上昇した。しかし、翌12日には少し伸びたものの力強さに欠けた。取引時間中の高値は8900円にとどまり、終値は8657円と急落と言っていい動きを見せ、翌週も、18日に一時、8216円まで下げた。市場からは「利益確定売り」のほか、「懸案だった米携帯電話子会社スプリント(米4位)が同業の米TモバイルUS(米3位)と再編統合する姿が見えてきたものの、確実性に欠ける」との声が聞かれた。

米政権の政策遂行能力に疑問符

   スプリントはソフトバンクが2013年に買収して以降、通期ベースで一度も純損益が黒字になっていない。成熟市場で競争が激化する中、TモバイルUSとの再編に活路を探るが、寡占化を懸念するオバマ政権下では認められなかった。規制緩和に積極的とされるトランプ政権に交代し、統合が認められる可能性が急浮上。今回、5月10日の記者会見で孫社長も「積極的に再編交渉に臨む」と表明し、市場に一時、期待が広がった。その期待に持続力がないのは、米連邦捜査局(FBI)長官解任をきっかけに「ロシアゲート」の疑惑が広がるなど、常にあれやこれやでトランプ政権の足元がふらつき、政策遂行能力に疑問符がつくからだ。実際、公約に掲げた大型減税の具体化はいまだ見通せないのが実情だ。

   ソフトバンク株はその後も、サウジアラビアの政府系ファンドと組成し、米アップルや台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業なども出資する「10兆円ファンド」の発足発表を受けた5月22日に終値で前営業日比1.9%高の8535円とやや伸びる場面もあったが、やはり持続力にかけ、23日には反落するなど一進一退だ。業績や戦略は悪くないが、株価が上昇局面に入りきれない。「しばらくは米政権の政策実行力が株価のカギを握る」との見方も出ている。

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