芸能人インスタに巣食う「スパム」業者の正体 名前変えて同じ商品次々と

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   「あたしも××××で、××キロやせました!」「▲▲さんみたいな白い歯になりたいな~、私は▲▲▲▲でホワイトニングしてます!」――インスタグラムで、有名人の投稿に必ずと言っていいほど殺到するのが、こうした美容、健康系製品などを宣伝する「スパム」コメントだ。

   手を変え品を変えながら、インスタ運営を、有名人を、そして何より消費者を悩ませるこれらのスパムコメントを書き込み続けるのは、いったい何者なのか。J-CASTニュースは、数ある不審な業者の一つについて、その正体を探った。

  • インスタグラムに寄せられる「スパム」のイメージ
    インスタグラムに寄せられる「スパム」のイメージ
  • 問題の「株式会社」「合同会社」の製品(一部画像を加工しています)
    問題の「株式会社」「合同会社」の製品(一部画像を加工しています)

違う商品名、すべて同一商品

 

   埼玉県川口市。埼玉高速鉄道の駅からほど近い一角にある、小さなマンスリーマンション。ここに書類上の本店がある「株式会社」。登記情報によれば、設立は2015年10月だ。

 

   取り扱う製品には、ホワイトニング歯磨き粉をはじめ、複数のダイエットサプリなどがある。そしてこれらの製品は、いずれも芸能人のインスタグラムに、大量の「宣伝」コメントが書き込まれている。たとえば、こんな具合だ。

「○○○(編集部注=原文は商品名)、真似して私も始めたよ ホワイトニング通うより全然安いし、効果がすぐ現れるから良いね」
「○○○(編集部注=原文は商品名)はいいねー すぐに効果出るし、理にかなったダイエット法 いくらでも続けられちゃう」

   悪評が定着することを避けるためか、これらのスパムでは、同じ商品に対してさまざまな名称が使われる。たとえばホワイトニング歯磨き粉については、計5種類以上の名前が確認できる。

「あの芸能人も愛用!」事務所は...

   インスタでは直接リンクを張ることができないため、興味を持った消費者は、こうした商品名で検索することになる。すると、

「あの海外有名セレブも愛用!」
「芸能人やモデルの為に開発されたものでしたが最近ようやく一般解禁されました」
「TVでも紹介されています!!」

などとうたうランディングページが表示される。そこには、「愛用者」だという人気女優やミュージシャンのコメントがずらり。ページ下部には「購入ページはこちら」というリンクが張られ、そこからメインの通販サイトに誘導される、という仕組みだ。

   もっとも、「愛用者」として写真と談話が掲載されていたある人気女性タレントの所属事務所は、取材に対し、

「えっ、インスタのあのスパムの商品ですか? そうしたコメントは出していません」

と、関係を全面否定する。

   オーストラリア出身の世界的モデル、ミランダ・カーさんが、あるホワイトニング歯磨き粉を手に微笑む写真も見られるが、これとそっくりだが、別の商品を持っている写真が海外のウェブサイトにあり、これを加工して、手にした商品だけを差し替えたものの可能性が高い。

芸能人から「損害賠償」求められる可能性も...

   アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士は、こうしたスパムによる宣伝行為は、インスタの利用規約に反するのはもちろんのこと、「犯罪が成立する」場合もあると指摘する。

「例えば、著名人のインスタのコメント欄に、関係のない美容製品などの宣伝(スパム)を大量に書きこむと、ファンとの交流という芸能活動を妨害しているため、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です」

   さらに「何を損害とするかは難しい」ものの、「犯罪が成立しなかったとしても、ファンとの交流を妨害されているわけですから損害賠償請求をする余地があります」ともいう。

   うっとうしいだけではなく、法に触れる、あるいは「損害賠償」の対象になる可能性もあるインスタスパム。業者は、いったい何者なのか。

   冒頭の「株式会社」は、住所は上記のようにマンスリーマンションで、問い合わせ先は「050」から始まるIP電話で固定電話ではない。しかも、番号はしばしば差し替わる。

インスタ以前にも類似した宣伝が

   編集部では、実際に商品を入手し、パッケージに記載された情報を調べてみることにした。すると、問い合わせ先の電話番号が、冒頭の株式会社と同じく、川口市を本社として過去に活動していた、ある「合同会社」と一致することがわかった。

   この「合同会社」の製品も、インスタへの「スパム」行為で有名だった。宣伝手法はほぼ同じで、特に主力商品だったダイエットサプリの商品名は2014~15年ごろ、インスタのあちこちに名前が書きこまれ、スパムの代名詞的存在だった。

   このダイエットサプリは2016年1月、消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受け、この前後に販売を終了している。「合同会社」の活動も、時を同じくして確認できなくなる。

   ところが、一部の製品については、そのまま販売が継続された。「合同会社」の名前はサイトから消され、入れ替わりに別の会社が、販売会社として記載される。それが冒頭の「株式会社」だ。

   さらにさかのぼると、「合同会社」の一部製品は、ある美容情報サイトで、別の業者の製品として過去に登録されていたことが、インターネット・アーカイブの履歴から確認できる。

   これらの製品は、インスタグラムの流行以前の2013年ごろ、フェイスブックやYahoo!ニュースのコメント欄などで盛んに宣伝され、やはりユーザーの顰蹙を買っていた。

   現在活動する川口市の「株式会社」と、過去のスパムとの関連は、現時点では不明だが、芸能人の愛用をうたう宣伝手法や、サイトの構成なども含め、類似点が多い。

業者は取材を拒絶

   川口市の「株式会社」に製品を納入している都内の企業に、J-CASTニュースは話を聞くことができた。

   この企業は、OEMやプライベートブランド美容品を主に手掛けている。「株式会社」からは2年ほど前に依頼を受け、その製品のうちひとつを受託生産してきた。

   とはいえ、数百社に上る取引先の1社でしかなく、請け負った製品がこのような手法で売りさばかれていたことは、この取材で初めて知ったと担当者は語る。「うちの信用にかかわる」と非常に困惑した様子で、弁護士とも相談して対応を決めたいという。

   こうした取材結果を踏まえ、J-CASTニュース編集部は6月7日以降、「株式会社」に対し、メールや郵送で計3回、スパム宣伝への関与の有無、あるいは他の業者との関係などについて取材を申し込んだ。いずれも回答期限までに返答はなく、6月19日の電話では、「カスタマーセンター」を名乗る男性が出てきたが、

「担当者が不在でして、私からは何も......。ただ、取材は基本的にお断りさせていただいてます」

   取材は拒まれた。

インスタ運営も対策に苦慮

   同じようなスパム行為を行う業者は、他にも複数ある。またインスタに限った話ではないが、これらSNSの宣伝を通じて購入した製品をめぐっては、契約上のトラブルも懸念される。

   北海道・東北地方の40代女性は、ある有名人のSNSのコメント欄を見て、「キャンペーン中で1箱5000円」だというサプリメントを購入した。しかし検索してみると、ネガティブな評判が多く、キャンセルすることに。ところが業者からは、「定期購入の契約だから、3カ月間は買ってもらう。どうしてもというなら、手数料は2000円だ」との回答があったという(国民生活センターに寄せられた相談事例より)。

   国民生活センターによれば、ネット通販に関する相談件数は2016年度だけで6万8500件に及び、また通販以外も含めたSNS関連の相談は右肩上がりに増えている。

   インスタグラムの運営にこうしたスパムへの対応について尋ねると、6月12日、メールを通じ回答があった。

「美容・健康製品に関する投稿に限らず、スパム投稿やコメントを行うアカウントを見つけた場合、アカウントをブロックしたり、コミュニティガイドラインに反するコンテンツを削除するなど迅速な対応を取っています」

   インスタグラムでは2016年、利用者が指定したキーワードを含むコメントを自動的に非表示にする、あるいは投稿ごとにコメントの受け付けをストップするなどの機能を、相次いでリリースしている。必ずしも上記の美容スパムだけが対象ではないが、インスタグラム側もこれらの投稿に頭を悩ませていることがうかがえる。

   J-CASTニュースの取材に対し、インスタグラムの担当者は、「今後もスパム投稿を含むあらゆる問題を解決するため、開発と改善を続けていきます」とコメントしている。

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