2024年 4月 24日 (水)

将棋「YouTube実況」めぐり議論 個人の「棋譜中継」は権利侵害になる?

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棋譜に著作権は発生するの?

   アディーレ法律事務所の吉岡達弥弁護士は、「『中継する権利』の内容が特定されていないので、朝日新聞側が何を主張しているか不明です」と前置きしつつ、「将棋の大会に著作権が発生しているかどうかで法的な扱いが分かれます」との見解を示す。

   この場合、まず問題になるのは、「棋譜」の著作権をめぐる問題だ。将棋のみならず、囲碁やチェスなども含め、棋譜に著作権が発生するか否かは、古くから議論が続いているが、吉岡弁護士は以下のように説明する。

「著作権法上、『棋譜』が著作物に該当するという直接的な条文はありません。あとは、直接的な条文がなくても、『棋譜』が著作権法上、保護される余地があるかどうかを検討しなくてはいけません」

   著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されている。つまり、棋譜が「思想又は感情」を表現したものかどうか、ということがポイントになるという。

「『思想又は感情』を定義することは難しいですが、『人の考えや気持ち』が現れているかどうかが一つの基準となります。そして、『棋譜』は対局の記録のことですので、厳密にいえば『人の考えや気持ち』が現れているとも考えられますが、『思想又は感情』に該当されないと考えるのが一般的だと思います。そのため、反対の考えもありますが、『棋譜』は著作物ではないと考えられます」

   棋譜に著作権が発生しないとすれば、それを元に「放送権」を主張することはできない。ところが、「棋譜」以外の部分で、朝日新聞側には権利が発生するという。

「将棋の大会には、解説、実況、編集等ほかの部分で著作権が生じ、それを前提に放送権が朝日新聞に生じていると考えられます。そのため、棋譜をネット上で『実況』すれば、朝日新聞の著作権法上の放送権の侵害ということになります」

   さらに有名棋士の対局の場合、その知名度による「パブリシティ権」などの問題も生じ、「著名人や著名人が自己の持っているパブリシティ権を譲渡した相手に無断で、『実況』すれば、パブリシティ権の侵害として不法行為責任を負い、損害賠償の対象となります」という。

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