出光経営陣の「不意打ち」 創業家側は「増資」に猛反発

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   昭和シェル石油との合併をめぐる出光興産経営陣と創業家との対立が、新たな局面に入った。合併実現を目指す経営側は2017年7月3日、「成長投資に充てるため」として公募増資を決定。これに対し、創業家側は「持ち株比率を低下させることが目的」として、差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。地裁の判断がどうなろうとも、両者にこれまで以上のしこりが残るのは確実で、その後の対応が注目される。

   出光の計画によると、発効済み株式の3割にあたる4800万株の新株を発行し、最大約1385億円の資金を調達する。インドネシアなどでの海外事業や有機EL材料関連の成長投資、2016年12月に昭和シェル株を取得した際の資金の返済などに充てる――としている。

  • 出光の創業者側と経営側の対立は深まるばかりだ(画像はイメージです)
    出光の創業者側と経営側の対立は深まるばかりだ(画像はイメージです)

「拒否権」確保ラインめぐる攻防

   しかし、創業家側はこの説明を素直に受け入れるはずがない。創業家側が握る出光株の保有割合は現在33.92%。合併など重要な議案を株主総会で拒否できる「3分の1超」をギリギリ占めている。今回の増資が実施されれば比率は26%台に低下し、合併計画への「拒否権」を失うことになる。

   増資計画発表が、6月29日の株主総会から間もなかったことも、創業家の怒りを増幅させた。なにしろ木曜日に総会を終え、週末を挟んで翌週月曜日の発表だ。株主総会は株式会社の最高意思決定機関。総会前から計画を練っていたのに、終了後、「不意打ち」したと映ったに違いない。

   創業家側は猛反発し、計画発表翌日の7月4日、東京地裁に仮処分を申し立てた。その翌日には今度は経営側が「創業家側の主張は明らかに誤り」とのコメントを発表し、全面対決の姿勢をみせた。払込期日は20日~26日までのいずれかだとしている。

   経営側が一気に強硬手段に出たのは、石油元売り業界の生き残り競争が厳しいためだ。4月、業界首位のJXホールディングスと3位の東燃ゼネラル石油が経営統合し、JXTGホールディングスが誕生し、着々と圧倒的な「首位固め」を進めている。2位の出光は、一刻も早く昭和シェルと統合しなければ、ますます引き離されてしまうと危機感を強めた。

現経営陣の取締役選任は可決

   出光と昭和シェルが急速に接近したのは2015年7月だった。出光がロイヤル・ダッチ・シェルから昭和シェルの株式を取得すると発表。11月には合併で基本合意した。だが創業家は「企業文化が違いすぎる」などとこれに反対し、2016年6月の株主総会でも反対の意思を示した。

   水面下で交渉を続けたものの折り合わず、10月には合併の延期を発表。すぐに合併にはいかないものの、12月には出光が昭和シェル株の31.3%を取得し、持ち分法適用会社にしていた。

   2017年の株主総会で創業家は前年に続き、月岡隆社長ら現経営陣の取締役選任に反対した。しかし議案は61%台で可決。創業家以外の反対票はそれほど集まらなかった。「創業家以外は経営陣に理解がある」とみえる結果が、今回の増資判断につながったとみられる。

   こうした対立により、経営側も創業家側も膨大なエネルギーを費やしていることは間違いない。厳しい経営環境の中での不毛な対立が長引けば、一般投資家もそっぽを向きかねない。

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