書道博物館に突如、大注目 ユーモラスな「はり紙」誕生秘話

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   東京・台東区立書道博物館に掲示されている貼り紙が「味わいがある」として話題を呼んでいる。貼り紙には「大してインスタ映えもしないので 写真撮影は御遠慮下さい」といった、注意書きにしては一風変わった文言が並ぶ。

   加えて異彩を放つのは、直筆で書かれたことによる独特の「書体」。貼(は)り紙をつくった中村信宏さん(39)はJ-CASTニュースの取材に、同館創設者である「中村不折(ふせつ)の書体をマネて書きました」と話す。

  • 階段前に貼られた「急な段差となっております お気をつけてお上り下さい」(特別に台東区立書道博物館の許可を頂いて撮影しています)
    階段前に貼られた「急な段差となっております お気をつけてお上り下さい」(特別に台東区立書道博物館の許可を頂いて撮影しています)
  • 看板「書道博物館」の題字は、創設者・中村不折(ふせつ)の書
    看板「書道博物館」の題字は、創設者・中村不折(ふせつ)の書
  • 館内の貼り紙「大してインスタ映えもしないので 写真撮影は御遠慮下さい」(特別に台東区立書道博物館の許可を頂いて撮影しています)
    館内の貼り紙「大してインスタ映えもしないので 写真撮影は御遠慮下さい」(特別に台東区立書道博物館の許可を頂いて撮影しています)
  • 館内の貼り紙「作品保護のため照明を若干暗くしております」(特別に台東区立書道博物館の許可を頂いて撮影しています)
    館内の貼り紙「作品保護のため照明を若干暗くしております」(特別に台東区立書道博物館の許可を頂いて撮影しています)
  • 館内の貼り紙「触れてもご利益はありません」(特別に台東区立書道博物館の許可を頂いて撮影しています)
    館内の貼り紙「触れてもご利益はありません」(特別に台東区立書道博物館の許可を頂いて撮影しています)
  • 館内の貼り紙「御観覧お疲れ様でした。お忘れ物はありませんか?」(特別に台東区立書道博物館の許可を頂いて撮影しています)
    館内の貼り紙「御観覧お疲れ様でした。お忘れ物はありませんか?」(特別に台東区立書道博物館の許可を頂いて撮影しています)
  • 館内の貼り紙「当館では、お客様お持ち込みの作品の鑑定・釈読は一切行っておりません。御了承下さい。」(特別に台東区立書道博物館の許可を頂いて撮影しています)
    館内の貼り紙「当館では、お客様お持ち込みの作品の鑑定・釈読は一切行っておりません。御了承下さい。」(特別に台東区立書道博物館の許可を頂いて撮影しています)

「本物はこの百倍味わいがあります」

   注目のきっかけは国語辞典編纂者の飯間浩明氏が2017年11月6日、ツイッターに「台東区・書道博物館で、『撮影禁止』などの注意書きが、どれもニヤッとさせる文言で面白い」と投稿したことだ。深く心に残ったようで、撮影禁止エリアながら「メモ用紙に模写し、帰宅後清書しました」と自身の書をアップ。そこには「大してインスタ映えもしないので 写真撮影は御遠慮ください」とユニークな表現で「注意」がされている。

   飯間氏は文言だけでなく、「これ自体まことにインスタ映えする書体でした」「本物はこの百倍味わいがあります」と独特の書体も絶賛。「原物はよっぽどユーモアのある書家の方が書いたと思われます」と推測した。

   ツイートは8日夕までに1万1000超の「いいね」を集め、リプライには「台東区書道博物館は、手書きの注意書きや案内も見所ですよね(笑)」と飯間氏と同様の思いの投稿もある。

   実物は一体どんな「書」なのか、そして書いたのはどんな「書家」なのか。J-CASTニュース記者が11月8日、書道博物館を訪問した。

   案内された特別展示室の中に、「大してインスタ映えもしないので」の注意書きはあった。書体を見てまず思ったのは、「しばらく眺めていたい」。「上手い」「達筆」「豪快」といったものではないが、肩の力が適度に抜けたような書体は不思議な魅力がある。

   貼り紙は他にも館内各所に掲出されている。展示の仏像の前には「触れてもご利益はありません」とこれまたユニークな言葉が。階段の前には「急な段差になっております お気をつけてお上り下さい」。順路の最後には「御観覧お疲れ様でした。お忘れ物はありませんか?」。いずれも共通の書体で、ヨコ5×タテ50センチメートルほどの細長い紙に書かれている。

「試しに書いてみたら楽しかったんです」

   一連の貼り紙を書いたのは、同館につとめる学芸員の中村信宏さん(39)だ。大学時代は書を学ぶコースを履修し、「どちらかというと研究より文字を書くのが好きでした」とJ-CASTニュースの取材に語る。

   直筆の貼り紙を掲出しはじめたのは「10年前くらい」といい、一風変わった文言は来館者への心遣いから生まれた。

「『お手を触れないでください』の一言ばかりだと心証がよろしくないかと思い、少しひねりを入れたくなったのがきっかけです。ただでさえ、書の世界は『カタい』イメージがあります。展示作品・資料の脇に『ユルい』言葉があれば、気を楽にしていただけるのではと考えました」

   独特の書体は「当館の創設者である中村不折の書体をマネて書いています」と明かす。

「不折に少しでも近いものなら、来館の方々にも親しみをもってもらえるかと思いまして、試しに書いてみたら楽しかったんです。特に練習などはしておらず、作品をいくつも観賞してきたなかで自然と身についたものです」

   一方で、「しかし、改めて不折の書と自分のものを見比べると、全然及ばないなあ...と思いますね」ともこぼしていた。

   洋画家として活躍していた中村不折(1866~1943)は、20代の時に正岡子規に才能を見出され、新聞の挿絵を描くようになった。1895年の日清戦争で、挿絵担当の記者として子規と訪れた中国で書道と出会い、書家としての研究・作品制作もスタート。書に関するありとあらゆる史料を収集し、その数は約2万点という。書道博物館は1936年に創設し、こうした史料などを収蔵した。不折の書は、酒造メーカー「日本盛」や食品メーカー「中村屋」などの有名なロゴとしても現在まで息吹いている。

   同姓の中村さんだが「不折と血縁関係はありません」とのこと。貼り紙を見た来館者からは「誰が書いたのかと時々問い合わせを頂戴します。お怒りの言葉は今のところなく、受け入れていただいているのかなと思います」と話していた。

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