名古屋城の復元めぐり論争 「史実に忠実」か「エレベーターは必要」か

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   名古屋市は名古屋城の天守閣を江戸期の姿に木造復元することを決定したが、エレベーターが設置されないのはおかしいとし、地元の障害者団体が2017年11月21日に河村たかし市長宛てに設置を求める公開質問状を提出した。

   現在の天守閣は1959年に鉄筋コンクリートで再建されたもので、屋内には23人乗りエレベーター2基があり、誰もが乗り降りできるようになっている。それだけに新しい天守閣に登れない人が出て来るのは障害者やお年寄りなどの「排除」になる、と訴えているのだ。

  • エレベーターは必要?(写真は木造復元が決まった名古屋城天守閣)
    エレベーターは必要?(写真は木造復元が決まった名古屋城天守閣)

現状は屋内に23人乗りエレベーターが2基ある

   名古屋城は慶長14年(1609年)に徳川家康の命によって築城された城で、5層5階の天守閣が完成したのは1612年。1930年には城郭として初めての国宝に指定された。しかし、1945年5月の名古屋大空襲で天守閣や北東隅櫓・本丸御殿が焼失。59年には市民の願いで二度と焼けることが無いようにと鉄筋コンクリートの天守閣が再建。エレベーターは屋内、屋外に計3基設置され1階から5階まで乗り降りが可能になった。そして河村市長の肝煎りにより、年間入場者が従来の倍の360万人に増えると想定し、消失前のそのままの姿に約500億円をかけた復元が決定する。工事を行う竹中工務店の案では5階建て大天守の1~4階に4人乗り(車いすの場合は1台)の小型エレベーターを整備する予定だったが、「史実に忠実」にするため、エレベーターはやめて、いすが昇り降りする階段昇降機を1階から5階に整備する案が出た。市は有識者会議を経て11月16日にこうした方針を発表したところ反発が起きたのだ。

   障害者団体「愛知障害フォーラム」は11月21日に記者会見を開き、市長あてに公開質問状を提出し、

「エレベーターを設置し、誰も排除しない城にしてほしい」

と訴えたと説明した。24日に同事務局にJ-CASTニュース編集部が取材したところ、いすが昇り降りする階段昇降機では腹筋が弱いなど現実的に乗れない人もいて、時間がかかるし安全にも疑問が残る、とした。「障害者差別」という言葉を使えば「権利だけを主張する」という反発を受けるため、そういった論争には持って行きたくはないが、

「そもそもこれまではエレベーターで移動ができたのに、車いすや体の衰えた老人、ベビーカーなどが『排除』される形になるため、それはおかしいということです。しかも、これから作ろうとする建築物であり、全ての人が安心して楽しめるようになってほしいという願いからです」

と説明した。

   こうした要望を市はどう受け止めているのか。

姫路城がエレベーターを設置しない理由とは

   J-CASTニュースが観光文化交流局に話を聞くと、担当者は、

「市長から障害者団体の方々の意見をよく聞くように、と指示されています」

と話した。市としては有識者会議などで、忠実に再現することが命題となっている。そのためエレベーターは設置しない方針だが、あくまで方針であり、竹中工務店が提案していたようなエレベーターが完全に無くなったわけではない、とした。完成までには5年あり、市長はそれまでに車いすでも移動できる最新の技術が生まれるのではないか、とも考えているという。エレベーターをどうするかの結論は17年度中にはっきりさせたいと考えているという。

   ネット上ではこの件について、

「目立たない所に設置したエレベーター以外は、忠実に作ればいいだろう。今時バリアフリーに逆行って何考えてんだ」
「忠実に復元したと謳って、エレベーターがあったら観光客の笑いものになるだけ」

などと賛否両論が語られている。

   では、お城にエレベーターは必要なのだろうか。大阪城などコンクリートで建てなおされた城はエレベーターが付いているが、姫路城など江戸時代からそのまま残っている城は付いていない。J-CASTニュースが姫路城に取材したところ、「エレベーターはありますか?」という問い合わせがたまにあるのだという。エレベーターがあれば便利なのは間違いなく、15年に5年をかけた天守閣の保存修理工事を完成させたけれども、工事の間は特別に仮設エレベーターを設置し車いすでも移動できるようにしたところ大好評だった、という。ただし、これはあくまで仮設として期間限定で設置したもの。もしエレベーターを本格的に設置するとすれば、それは「文化財破壊」になりかねない。

「エレベーターを設置するなどもってのほかなんです。江戸時代から続くありのままの姫路城を見てくださいと話しております」

と担当者は説明した。

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