ガキ使「黒塗りメーク」騒動、海外で活躍の芸人はどう見たか ぜんじろうさんに聞いた

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   2017年大みそかのバラエティ番組「ダウンタウンのガキの使いやあらへんでSP 絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時」(日本テレビ系、以下ガキ使)で、「ダウンタウン」の浜田雅功さん(54)が映画「ビバリーヒルズ・コップ」の米俳優エディー・マーフィーさんにふんした「黒塗りメーク」は、ツイッターで「人種差別と捉えられかねない」との批判を招き、米ニューヨーク・タイムズや英BBCもこれを報じて物議を醸した。

   「日本と海外の常識の差がでました」。海外でスタンダップ・コメディアンとして活躍中のぜんじろうさん(49)はツイッターでそう指摘する。上岡龍太郎氏の弟子で「吉本印天然素材」の初期リーダーも務めたプロは、お笑い界のこの状況をどうみるか。J-CASTニュース編集部は詳しい話を聞いた。

  • ぜんじろうさん
    ぜんじろうさん
  • 海外でロボットとの漫才を披露した
    海外でロボットとの漫才を披露した
  • 「第1回世界お笑い大会 in タイ」で優勝した
    「第1回世界お笑い大会 in タイ」で優勝した

「無知」とみなされているのは悲しい

――ぜんじろうさんは90年代前半、関西ローカルの「テレビのツボ」(MBS)や「MBSヤングタウン」(MBSラジオ)でブレークした後、全国ネットの「超天才・たけしの元気が出るテレビ!!」(日本テレビ系)などで活躍していました。

はい。その後、1997年頃から海外にチャレンジしに行くようになりました。主に英語圏が多かったです。2003年くらいに、言葉の壁や自分の能力の限界もあって一旦、保留しましたが、その後は、NECのAI知能のロボットと漫才をすることにチャレンジしました。

僕の芸はスタンダップコメディと言って、マイク1本で言葉を使って「社会」「政治」「人種」「宗教」「セックス」などを、経験と知識によって考察し、ネタにしていく大人のための芸です。これはアメリカ、イギリスで発祥したので、通常はアメリカ、イギリス、オランダなど西洋での公演でしたが、それが今や、アジア、中東、アフリカ圏でも盛んな芸になりました。

僕は2016年からアジア圏に目を向けており、特に2017年は、韓国や中国、香港、インド、スリランカ、マレーシア、ネパール、タイ、シンガポールで公演しました。

――「ガキ使」の「黒塗りメーク」騒動について、うかがいます。ぜんじろうさんはツイッターで「日本と海外の常識の差がでました」「日本には黒人支配や差別とかの歴史がない」と書かれていましたね。

「黒塗りメーク」そのものがアウトかは、日本には黒人支配や黒人に対する差別の歴史がないため、日本社会にとって非常に難しい問題で、黒人に対するリスペクトを表す黒塗りであれば、一概にダメとは言えないと思います。あのネタは、エディ・マーフィーにふんした浜田さんに対する笑いであればセーフですし、黒人としての容姿そのものに対する笑いであればアウトでしょう。

これは日本に限らず、イギリスでも10年くらい前まで、白人が他人種にふんするコメディのテレビ番組がありました。当時から「人種差別だ」との批判はあったそうです。BBC は批判に対し、「番組の中のキャラクターは、イギリスが多文化社会であることを描いたものであり、人々を傷つけようとしているのではありません」と答えました。

ガキ使のネタに差別心はないのですが、日本が国際社会と言うなら、特に番組スタッフがそうした声を想定してなかったようなのが残念です。また、ネットで色んな意見が出た後、プロデューサーや広報なりが、公式にコメントを出しておらず、一部の海外の方から「無知」とみなされているのは悲しいです。

海外のルールは「人種差別をしない」

――ぜんじろうさんは海外でネタをする際、必ず笑いのタブーを確認して批判の「準備」をするそうですね。ツイッターには「ネタにする相手への『愛情』」と書いていますが、どういう意味ですか?

これも非常に難しい問題です。まずは、ネタにする題材(相手)を徹底的に「知る」ようにしています。なので、最低限しっかり下調べをします。調べる上で、題材に対する肯定的・批判的な声をきちんと聞くことも愛のひとつです。

海外での笑いのルールとして、経験してきた中ですと、どの国でも「プライバシーはいじらない」と「人種差別をしない」は共通しています。そこはクリアしているのか? その上で、ネタにするかどうか決めています。

差別には必ず優劣の意識があります。例えば人種差別は、他の人種が自分の人種より容姿や能力で劣っている、という前提で生じます。ですので、例えば僕が黒人やアジア諸国の人を蔑めば差別になりますし、それを逆手に取って日本人より優れている点や、日本人と違う点をフラットな視点で面白く言えれば、良い風刺ネタになります。優劣の意識を取り払うには、相手をよく知り、リスペクトする気持ちが必要です。それが広い意味での「愛情」だと思います。

僕も無自覚にルールを逸脱してしまったことは多々あります。日々、相手の社会や文化を知り、反省する連続です。

――同番組をめぐっては、不倫報道で騒ぎになったタレントのベッキーさんが、禊(みそぎ)の名目で女性キックボクサーに尻を蹴られる場面も、批判を浴びました。

この問題も、色んな角度からの意見があります。「誰かを傷つけて笑いを取るな」「女性ひとりを男性陣が囲み蹴って笑いを誘うのはけしからん」など。僕は芸人としてあの面白さもわかりますし、あのネタにはベッキーさんに対する愛情があることもわかります。ベッキーさんに対してマスコミや日本社会がしてきたことを皮肉っているとも解釈でき、社会風刺的な側面もあります。

僕は「笑いの質」そのものについてより、地上波で、あのネタを放送することによって起きるだろう批判を想定できていたのか?という部分が気になります。お金を払って見に来るファンと、不特定多数の視聴者では、同じネタでも感じ方が全く違うことは多々あります。僕は「危ういネタ」自体が悪いとは思いません。それもコメディの面白さだからです。ただ、制作側に「批判に答える」という姿勢がもっとあって良いと思っています。

■ぜんじろう
1968年1月30日生まれ。兵庫県姫路市出身。大阪芸術大学を2日で中退後、上岡龍太郎氏に入門。漫才コンビ「ぜんじろう&月亭かなめ」結成後、2年で解散。吉本興業の若手芸人で結成した「吉本印天然素材」の初期リーダー。「テレビのツボ」(MBS)など関西のローカル番組で司会者として活躍し、東京へ。1997年から海外に活動の場を広げて国内外で精力的に活動中。「第1回世界お笑い大会 in タイ」(2015年)優勝、「第24回上方漫才大賞」新人奨励賞など。

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