2024年 4月 20日 (土)

新聞社説から総スカン 18年度予算案の「甘い」見通し

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   2018年度予算案が年末に閣議決定され、1月22日召集の通常国会で審議される。今回の予算案は、高齢化で社会保障費が膨らみ、6年連続で過去最大規模に膨らんだ一方、バブル期並みの税収を見込んで、新たに発行する国債額を減らした点が特徴だ。

   ただ、それでも予算の3割超を借金に頼る厳しい財政事情は続く。同時に編成した2017年度補正予算案での公共事業の積み増しなど、歳出の「緩み」も見えるだけに、大手紙の論調も厳しいトーンで共通する。

  • 国債費を減らした予算案にも風当たりは強い(画像はイメージ)
    国債費を減らした予算案にも風当たりは強い(画像はイメージ)
  • 国債費を減らした予算案にも風当たりは強い(画像はイメージ)

歳入の国債依存度、わずかに低下

   一般会計の総額は97兆7128億円で、2017年度当初(97兆4547億円)より2581億円(0.3%)増。景気回復が続いていることを受け、税収は17年度当初から1兆3670億円多い59兆790億円と、バブル期の1991年度の59.8兆円に次ぐ27年ぶりの高水準を見込む。税収増を踏まえて新規国債発行額は33兆6922億円と6776億円減らし、歳入の国債依存度は34.5%と2017年度の35.3%からわずかに低下する。

   歳出を押し上げたのは、3分の1を占める社会保障費で、高齢化で医療や介護などの費用がかさみ、2017年度当初より1.5%増の32兆9732億円に達した。ただ、財政再建計画で「目安」とされる5000億円増の範囲内には抑えた。防衛費は、1.3%増の5兆1911億円と、4年連続で過去最大になった。公共事業費は17年度当初とほぼ同じ約5兆9789億円を計上。安倍晋三政権が掲げる「人づくり革命」関連として、待機児童の解消に向けた11万人分の保育施設の運営費として1152億円(事業主拠出金など含む)、また、大学生らの給付型奨学金や無利子奨学金の拡充にも計1063億円を計上した。

   この予算案を各紙は閣議決定翌日の2017年12月23日付朝刊の社説(産経は「主張」)で、一斉に取り上げたが、日ごろの安倍政権へのスタンスの違いを超え、一様に厳しい批判の言葉が並んだ。

財政規律への懸念

   各紙の予算への基本的評価の部分を並べると、次の通りだ。

日経「税収増加や国債金利の低下を背景に、財政規律がさらに緩むことが心配だ」
朝日「あまりに危機感が乏しいと言わざるをえない」
毎日「借金まみれの危機的な財政を一段と深刻にしかねない内容だ」
読売「国の財政難や社会保障を巡る国民の将来不安に応える予算になったか。政府の強い意思が表れているとは言い難い」
産経「(財政再建の旗は降ろさないという)約束を裏付ける歳出改革は不十分である。むしろ、消費税の使途変更などを機に財政規律が緩んだ印象が濃い」
東京「先進国で最悪の財政状況という現実から目をそらし、小手先の帳尻合わせに終始した。財政規律を喪失し、後世への問題先送りを続ける政権の無責任さは目に余る」

   さらに具体的には、歳入面では、「景気拡大の継続を前提とする税収増と、金融緩和による超低金利(...略)の結果、歳出を増やしつつも新たな借金は減らす絵を描いてみせた」(朝日)わけだが、「税収は景気に左右される。景気頼みの借金減らしは都合が良すぎる」(毎日)。特に読売は詳細に論じ、「見積もりの前提となる経済見通しには甘さが目立つ。政府は、来年度の経済成長率を名目2.5%と予想した。大方の民間予想が1%台後半にとどまるのとは対照的だ。実際の成長率が見込みを下回れば税収が想定に達せず、歳入に穴が開く。実際、2016年度は税収が見込みから2兆円規模で下振れした結果、補正予算で赤字国債の発行を余儀なくされた」と、くぎを刺す。

   歳出面では、社会保障への切り込み不足の指摘が並び、とりわけ団塊の世代が75歳以上になり、社会保障費が急増する「2025年問題」への危機感も目立った。「巨額の借金を抱えたまま歳出がどんどん膨らめば、財政は持続できなくなる。裕福な高齢者には医療費の負担増を求めるなど踏み込んだ対応が必要だ」(毎日)、「25年には(...略)医療・介護費の急増が予想される。改革を先送りする時間的余裕はない」(読売)といった具合だ。

新たな「社会保障と税の一体改革」、実現の見通しは...

   「補正予算という『抜け穴』」(朝日)も多くが指摘する。例えば今回の予算案で、農地や水路を整備する土地改良予算は328億円増の4348億円だが、2017年度補正予算案とあわせると5800億円と、自民党が下野する前の水準に戻っている。「補正予算の財源を手当てするため、国債を追加発行する。これでは当初予算で新規国債の発行減を誇っても、意味が無いばかりか、かえって危うい」(朝日)、「当初予算で国債発行額を抑え込んでも、補正予算で再び増発するならば、財政健全化は進まない」(日経)、「当初予算の編成時から補正予算を前提とするような財政運営は、再検討すべきではないか」(読売)など、当然の主張だろう。

   安倍政権は財政の基礎的収支(プライマリーバランス=PB)の2020年度黒字化の公約を撤回し、新たな財政再建目標を、18年6月をめどに策定する方針で、これについても各紙言及しているが、「今のような姿勢で立て直しへの道筋を示せるのか。不安がぬぐえない」(朝日)という不安感、「社会保障の制度改革も含め財政赤字の構造に切り込んだしっかりした案をつくり、PBの黒字化を確実に実現してほしい」(日経)、「税収増ばかりに頼るのではなく、腰を据えた歳出入改革を打ち出してもらいたい」(産経)という方向性は各紙にほぼ共通している。具体的に、「社会保障制度と、それを支える税の将来像を一体として考え、そのための具体的な工程表を示すことが重要な課題となる」(読売)、「財政を持続可能とするためには社会保障と税の新たな一体改革に早急に着手することだ」(東京)というように、新たな「社会保障と税の一体改革」が必要というのが、新聞論調的にはほぼ共通認識だ。ただ、経済成長重視で財政拡大論も根強い安倍政権だけに、自身の政策の選択肢が狭められる「一体改革」に取り組む可能性は低いという悲観論が大勢だ。

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