2018年 12月 10日 (月)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
大統領就任1年でも変わらない支持の中身

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   2017年1月20日、私はトランプ氏を支持する知り合いのロブ(60代)の家で、大統領就任式をテレビで一緒に見た。

   2018年に入って、ロブの家に夕食に招かれた。食事が終わり、雑談をしていた時、「あれから一年が経ったけれど」と私が切り出した。

   トランプ氏のことになると、熱が入り、話が長くなると思ったのだろう。

   「あらら。じゃあ、私は洗い物をしてくるわ」と妻のベッツィ(60代)は笑いながら、テーブルの皿を片付け、キッチンに移動した。

  • ニューヨークの自宅でトランプ大統領について語るロブ。左は妻のベッツィ
    ニューヨークの自宅でトランプ大統領について語るロブ。左は妻のベッツィ

「トランプが言っていることは、本当のことだ」

   大統領選の山場といわれるスーパー・チューズデーの日(2016年3月1日)も、ロブと妻のベッツィと一緒にテレビを見たが、トランプ氏は品がなく挑発的な発言を繰り返してきたと、二人は快く思っていなかった。「メキシコとの国境に壁を作り、費用はメキシコに持たせる」という発言にも、反発を感じていた。彼らの息子はメキシコ移民の女性と結婚したばかりで、国境からわずか5、6キロの距離に住んでいた。

   「ウォール街と癒着している」などの理由で、ヒラリー・クリントン氏を毛嫌いしているロブは、トランプ氏を支持せざるを得なかった。が、トランプ氏の発言を聞いているうちに、「きれいごとをいうだけで実行しない政治家と違い、彼にはリーダーシップがあり、現状を変える力があるかもしれない」と希望を抱くようになった。

   それでも、就任式の時には、「これからどうなるかは、わからない(It remains to be seen.)」と、私に繰り返していた。トランプ氏にこの国を託すことへの期待と不安が交錯していた。

   一年たって、「ロブは今、トランプ氏をどう見ているの」という私の問いに、彼は迷わず答えた。

「トランプの軽率な言動には、今も戸惑いを感じる。この前、ハイチやアフリカ諸国について『糞の穴』(shithole)という言葉を使ったこともそうだ。僕があんな言葉を聞きたくないのは、君もよく知っているだろう。でも、トランプが言っていることは、本当のことだ。政治腐敗や治安のことを言っているのに、何でもかんでも人種差別と結びつけて批判される。しかも、アメリカ人の半数は、ああいう言葉を平気で使っている。トランプはこの国を代表する大統領じゃないか、と人々は言うが、彼は神でもなければ、ローマ法王でもないんだ」
「オバマはどういう言い方をしたらいいか、いつも慎重に言葉を選んだ。トランプはそういうことは一切しない。直球でモノを言う。ツイッター漬けは少し自粛してほしいが、あれはメディアを介さず、直接、僕ら国民と対話したいという彼の思いだ」
「僕が彼に期待する気持ちに、1年前と変わりはない。これまで大統領たちが、やると言い続けて放置してきたことを、トランプは実現しようと頑張っている。北朝鮮のことだって、いつか核を放棄するだろうと、これまでの大統領はずっと待ち続けた。結局、事態はさらに悪化する一方だ」

移住者でも違う「理想のアメリカ」

   30年ぶりとなるトランプ氏の抜本的な税制改革も、ロブは評価している。

「法人税と所得税の減税で、富裕層が優遇されるだけだと民主党支持者は反対するが、僕らのような中産階級も減税になる。基礎控除額も、例えば夫婦で確定申告している場合、2017年度は12,700ドルだが、2018年度には24,000ドルとほぼ2倍に増える。確定申告は複雑だから、実際に計算してみないとどれだけの減税になるかはわからないが、 仮に月数十ドルの減税だって助かるという人は多い」

   ロブはトランプ大統領の移民規制にも、おおむね賛成している。移民が自分の親や子供、そして兄弟を呼び寄せたり、恩赦や宝クジで永住権を取得したりするのを制限し、「もっと能力に応じて移民を受け入れるようにすべきだ」と力説した。

   そこへ妻のベッツィが、デザートのリンゴを持ってキッチンから戻ってきた。

「(マンハッタンにある)私の職場のすぐそばに、屋台で果物を売っているバングラデシュ人がいるの。とてもいい人で、時々、私がリンゴを買いに行くと、バナナ1本、おまけして袋に入れてくれたりするわ。いつか彼と話していたら、自分の家族や親戚を26人、アメリカで暮らせるように呼び入れたって言っていた。26人もよ」

   ロブとベッツィはキリスト教系の非営利団体で長年、働いてきた。ロブはオーストラリアから何十年も前にアメリカに移住し、ようやく今、米市民権を申請中だ。ベッツィは中東で生まれ育ったアメリカ人で、今はアジアに対する理解を深めるための非営利団体で働いている。ふたりともオープンで気さくな性格で、さまざまな国で暮らした経験があり、世界中に友人がいる。

   「トランプを支持しない人たちと、政治の話をすることはあるの」と私がロブに尋ねると、首を横にふる。

「しないさ。彼らは頑固で、自分たちが正しいと信じ切っているから」

   ロブとベッツィにも、彼らが理想と信じるアメリカ像がある。(敬称略 随時掲載)


++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの 家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。


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