2018年 9月 25日 (火)

山里亮太が潜入「Fate/Grand Order」の世界 人気スマホゲームの制作舞台裏

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「Fate/Grand Order」の制作会社、ディライトワークスで取材するJ-CASTニュース名誉編集長、山里亮太(南海キャンディーズ)(左)
「Fate/Grand Order」の制作会社、ディライトワークスで取材するJ-CASTニュース名誉編集長、山里亮太(南海キャンディーズ)(左)

   こんにちは、J-CASTニュース編集部です。モンスターストライク、ツムツム、パズル&ドラゴンズ......。人気スマホゲームは数多くありますが、今回J-CASTニュース名誉編集長の山里亮太さんが取材に向かったのは、ディライトワークスという会社。「Fate/Grand Order(フェイト/グランドオーダー)」というスマホゲームを作っています。

   なぜここを取材しようと思ったのか。きっかけは、スマホゲームを取材中に、スマホゲーム情報サイト『ファミ通App』の目黒輔編集長にお話を聞けたことでした。

   目黒編集長によれば、2017年の国内ゲームアプリ市場は1兆580億円(『ファミ通ゲーム白書2018』)。右肩上がりで、競争も激化しており、市場は常にレッドオーシャン状態。その中にあって、異彩を放っているのが、「Fate/Grand Order」(FGO)だそうです。

   FGOとは、国内で約1300万ダウンロード、世界では3000万ダウンロードされたスマートフォン向けゲームで、スマホゲームとしては珍しい、とても練り込まれた非常に長いストーリーが特徴です。

   現在物語は第2部が進行していますが、2015年7月から配信された物語の第1部を簡単に説明すると、2015年、人類は2017年で消滅することが判明。主人公は、その原因となるいくつかの過去の地点にさかのぼって歴史を修復し、無事2017年を取り戻す――。というお話です。主人公と一緒に戦う「サーヴァント」というキャラクターは、歴史や神話上の人物や英雄をモチーフにしており、こちらも人気があります。

「Fate/Grand Order」
「Fate/Grand Order」
サーヴァント「アルトリア・ペンドラゴン」。ブリテンの伝説の王。騎士王とも。アルトリアは幼名であり、王として起ってからはアーサー王と呼ばれることになった。
サーヴァント「アルトリア・ペンドラゴン」。ブリテンの伝説の王。騎士王とも。アルトリアは幼名であり、王として起ってからはアーサー王と呼ばれることになった。
バトル画面
バトル画面

   目黒編集長はFGOを、

「登場キャラクターはどれも見た目、バックグラウンドともに魅力的で、新キャラクターが追加されると、必ずその名前がTwitterのトレンド入りするくらい話題になります。いまやスマホの枠を超え、アーケードゲーム、ボードゲーム、リアル脱出ゲームなど、多角的にファンを魅了し続けている唯一無二の作品と言っていいと思います」

と、分析しています。

   FGOのストーリーとキャラクターデザインは、TYPE-MOON(タイプムーン)の奈須きのこさん、武内崇さんという2人の"天才"が担当しています。この2人の天才が描く世界観を、ゲームとしてもっと面白いエンターテイメントにしているのが、ディライトワークスという会社です。

   最高のストーリーやキャラクターをどうゲームに活かすのか。そしてヒットゲームが生まれる「舞台裏」はどうなっているのか。

   我々編集部の話を聞いて興味を持った山里編集長は、ディライトワークスへ向かいました。

   まずお会いしたのは、「Fate/Grand Order」第2部開発ディレクター カノウヨシキさんです。

リアルな時間と同時進行

第2部開発ディレクター カノウヨシキさん(右)と、山里亮太
第2部開発ディレクター カノウヨシキさん(右)と、山里亮太

山里: 先日(2018年7月28、29日)に幕張メッセ(千葉県)で行われた3周年のイベント「Fate/Grand Order Fes. 2018 ~3rd Anniversary~」も大盛況でしたね。コラボドリンク買うのに60分待ちってなかなかです。単刀直入に、ここまで人を夢中にさせるFGOの魅力ってなんなのでしょうか。

カノウ: FGOの全シナリオを監修してくださっているのが、TYPE-MOONの奈須きのこさんですが、奈須さんをはじめFGOのライターの方々が生み出すストーリーがとても魅力的で引きこまれるんですよ。とても重厚な物語です。

山里: キャラクターの愛で方も尋常じゃないですよね。

カノウ: そうですね。このゲームでは、サーヴァントそれぞれに活躍の場があるため仲間にしたいということももちろんあるのですが、みなさん思い入れのある"推しサーヴァント"がいて、一緒に物語を進んでいきたいと思われる方が多いようです。

山里: 今回、FGOを取材させていただきたいなと思った理由のひとつに、ゲームの特異性がありました。
いまのスマホゲームって、単純作業と何かしらのキャラクターを掛け合わせたものが多いじゃないですか。その中にあって「この先どうなるんだろう」ってワクワクするのって珍しいんですよね。

カノウ: そうですね。ただ、そのような期待とは反して、FGOは2016年の年末に一度、完結しているんです。第一部は「2017年のその先を取り戻そう」というストーリーでしたので、開発も年末までに間に合わせることがマストな中、なんとか無事、2016年の終わりに完結させられたという感じです。

山里: つまり、本当の2016年とリンクさせたってことですか。

カノウ: そうです。FGOは、同時代性、リアルタイム性を大事にしています。ユーザーと「今こうなっているんだね」と分かち合いながら、開発メンバーも、年が明けて「『2017年』を取り戻した! 終わったー!」という達成感みたいなものもあったくらいです。

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山里: でもいまは第2部が続いていますよね。もともと決まっていたことなんですか? それとも、これはここで終わらせる熱量じゃないから続けようと?

カノウ: 僕は第1部のときまだ開発にいなかったのですが、当初まずは第1部をやりきることだけを考えていたと聞いています。2017年は第1.5部という形でメインストーリーを4つ配信して、第2部は2018年からスタートしています。
2017年の年末、「序/2017年 12月26日」「序/2017年 12月31日」というタイトルでメインクエストをリリースしたんですが、これはタイトルが表すように、その当日に配信したばかりではなく、2018年に始まる第2部への序章となっていました。

山里: そういうリアルタイムで進行する仕掛けも、FGOならではの「没入感」ですよね。自分の生きている時間とリンクさせているっていうのはすごい。「ゲームの中に入る」っていう、子供の頃の夢そのものじゃないですか。
何がいいって、歴史上の人物と一緒に戦ったりできるでしょ。あれ、最高ですよね。

カノウ: そうですね。歴史上の人物がTYPE-MOONさんの手によってFateのキャラクターとしてさらに魅力的な英霊として生み出されます。自分たちが知っている史実上の人物であることで、より身近に感じることができるということが、サーヴァント(キャラクター)の魅力とかストーリーの魅力につながっていると思います。

長いシナリオはリスク?

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山里: いろんな人が言うように、FGOの大きな魅力は、やっぱりシナリオ。それは間違いないと思うんです。
でもスマホゲームって、複雑なストーリーとか、設定とか、長いストーリーって敬遠されるんじゃないかなと思っていたんですけど、どうですか?

カノウ: よくご存知ですね。まったくその通りです。
通常は継続率とか、ユーザーさんの動向をみてゲームとしてどのくらいの文字数が適切かなどを考えるのですが、弊社はライターさんの表現を最優先にしています。奈須さんが書く、もしくは奈須さん含めTYPE-MOONのライターさんが書くストーリーがすべてなんです。実は第1部から今までで500万字あるんですよね。第1部では、200万字です。

山里: 500万字!?
ストーリーボリュームとゲームの関係って難しくないですか? 据え置きゲーム機の人気ゲームシリーズもストーリーの文字数が増えたことがありましたが、評判はイマイチだったかと。だから、ストーリーボリュームって、かなりリスキーですよね。

カノウ: そうですね、リスキーだとは思います。

山里: それができるのは、やっぱりストーリーへの絶対的な信頼感ですか。

カノウ: そうです。弊社は、KPI(=Key Performance Indicator=重要業績評価指標)ではなく、TPI(タイプムーンインジケーター)を重視します、と公言しているんです。すべてはTYPE-MOONさんの中での「これが楽しいだろう」という状態を、絶対的な正解としています。
まず『Fate』シリーズという作品のファンがいるということ、その『Fate』シリーズの過去、現在、未来を作っているTYPE-MOONさんの方向性は、間違いない。
そして、TYPE-MOONの皆さまも熱心にFGOをプレイしてくださっています。その方々に「いい」「面白い」と思っていたただけるゲームなら、それこそ間違いないと思っています。

山里: 開発するにあたり心がけていることは?

カノウ: こちらは開発内でいつも私が指摘していることとなりますが、「以前やっていたことを当たり前だと思わない」ということです。いかに新しいことをやっていくかを重視しています。以前こうやっていたから、という考えばかりではNGですね。常に、今どうあるべきかを考えないといいものは生まれないと思っていて、「前こうだったから」なんて発言しようものなら......。

山里: なるほど(笑)。でも正解が出ていたら、そのやり方を踏襲するのがいいんじゃないですか。

カノウ: もちろんルーチンとしてはいいんですけど、それに「+α」は必要なんじゃないか、というところです。ユーザーさんの期待を越えていかなきゃいけませんから。
同じことをやるっていうのは、長く運営を続けていくゲームでは衰退していくのと同じなんです。前と同じことをやって、同じ方が満足して続けてくださるかというとそうじゃない。常に新しいことを増やしていくという意識じゃないと、最低限の維持すらできないんです。

サーヴァント1騎に半年以上

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山里: そうか。それって、スマホゲームだからですよね。家庭用ゲーム機のソフトだと出して「おしまい」だけど、スマホゲームだと、常に何かしらの打ち手が必要なんですね。

カノウ: そうです。家庭用ゲーム機向けのゲームと違って、運営する期間が長いので、同じことをやっていると先細りしていきます。

山里: ということは、次の作戦はすでに頭の中にあるんですか。

カノウ: 長いスパンではありますね。弊社の場合、サーヴァント1騎作るのに半年以上かかるんです。たとえば業界内の他のゲームの運営ではよくあるんですが、「ここの売り上げが落ちたから、キャラクターを入れてテコ入れしよう」とか。これはそもそも運営方針としては合わないですが、制作期間としても不可能なんです。
もうずっと前に計画は立てていて、ストーリーも必要なサーヴァントも作っているんです。逆算していくと半年くらい前には動いていないとダメなので、将来像を自分たちで描いてそれに向かって作っていく、という感じですね。

山里: 思った何倍もの時間がかかっているんですね。

カノウ: そうですね。しかも基本的には月に数騎のは新規サーヴァントを出しているので、ご想像のとおりです(苦笑)。

山里: 大変だ(笑)。だからね、僕、今日「カノウさんの大事な時間とってんじゃねーよ」ってFGOのユーザーさんから怒られるんじゃないかと思ってドキドキしているんですよ。
僕の友達は、1分1秒でも惜しい、FGOに費やしたい、と。それでトイレに行く時間がムダだって言って、いかに短時間でいけるか、廊下の最短距離を調べているって言うんです。

カノウ: いやー、ありがたいですね。頑張らないと。

山里やるな、と思われたい。ここだけの情報お願いします

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山里: そこで、ですね。ちょっと、ここだけの話ってことでご相談なんですけど。何か新しい「情報」教えてもらえませんか?
これを読んでいるFGOファンに、「この情報を引き出したから山里許してやるよ」って言われたいのでなんとかお願いします!

カノウ: (爆笑)。これがですねー、1番難しい質問ですよね。なかなか答えられない(困)。

山里: 言えないですよね。分かります。そこをなんとか...お願いします!

カノウ: (長い間考えて)近々、ワクワクさせるよってことはあると思います。あっと驚くようなサーヴァントもお届けできるのではないでしょうか!?

山里: ありがとうございます!

   次回は、FGOの制作現場に潜入します。社員の皆さんでも気軽に入ることのできない"聖域"です。はたしてどんな光景が見られるやら......。

   次は8月29日(水)公開予定です。お楽しみに!

エントランスにはファン垂涎のグッズがたくさん
エントランスにはファン垂涎のグッズがたくさん

プロフィール

Fate/Grand Order
ゲームブランドTYPE-MOON(タイプムーン)によるゲーム作品『Fate/stay night』を原点として展開する『Fate』シリーズ。そのひとつとして製作されるスマートフォン向けFateRPG。歴史上の偉人などを「サーヴァント」として召喚し、パーティを組んで戦う。監修&シナリオ執筆は奈須きのこ(TYPE-MOON)、キャラクターデザイン&アート・ディレクションは武内崇(TYPE-MOON)が担当。

ディライトワークス
ゲームの企画・開発・運営を行う。主なタイトルは、企画・開発・運営を手がける『Fate/Grand Order』や、企画・開発に加わっている『Fate/Grand Order Arcade』など。開発理念は、「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。」

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