2024年 4月 27日 (土)

【震災7年 明日への一歩】東電福島第一原発のいま(2) 防護服なしで1号機のそばに近づく

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線量の低減に貢献した「フェーシング」

   敷地内の線量低減に貢献したのが、草木や土を除去したのちに地表面をモルタルで舗装する「フェーシング」と呼ばれる作業だ。取材中、記者の目には敷地内の広範囲が灰色となっている光景が飛び込んできた。むき出しの土を覆うことで、ちり、粉じん等の飛散を抑制する。また、舗装により雨水が土壌にしみこんで地下水になることを防ぐことで、地下水の量を低減させる効果もある。

   2016年3月31日付の東電資料によると、2014年5月に始まった工事は16年3月までに、原子炉建屋1~4号機周辺と、一部ほかの工事の干渉箇所を除く全エリアで完了。対象面積145万平方メートルの約90%に相当する。東電によると、以後も順次フェーシングを進めているという。

   放射性物質を扱う仕事での被ばく、いわゆる「職業被ばく」について、法令で定められている被ばく線量の限度は、年間最大50ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルトだ。東電発表では、2017年度における作業員の累積被ばく線量の平均は2.69ミリシーベルトになっている。

   実際に福島第一原発でフェーシング作業に従事した人に話を聞いた。三井住友建設に勤務する曽谷哲次さんは、「三井住友・NIPPO1Fフェーシング工事(西側エリア)共同企業体 福島第一原子力発電所作業所長」として2014年8月に来た。

   工事全体は5社で分担し、曽谷さんの会社は敷地内の西側エリアを受け持った。所長という立場で、平均70人の作業員を率いた。初めは全身白い防護服に全面マスクで、しかも真夏だった。作業中、目の下に汗がたまった。曽谷さんは作業員の体調をこまめにチェックし、配慮を続けたおかげで、チームの中で熱中症で倒れる人は出なかった。また工事現場は安全第一だ。だが全面マスクは声が聞き取りにくい。そこで曽谷さんのチームは、「スポーツの審判などが使うホイッスルを全員が持ちました」。音が響くおかげでお互いが合図を送りやすく、けがにつながるリスクを回避した。工事を完了させた曽谷さんは、こう話す。

「人が入れない場所を入れるようにする、重装備のところを軽装備にするのは、土木技術者である我々の使命だと思っています。敷地内を(作業員らが)軽装で歩いている姿を見ると『貢献しているかな』と感じます」
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