日本体操協会の塚原千恵子・強化本部長(71)が、体操女子・宮川紗江選手との会話のやり取りをおさめた「音声データ」を一部メディアに提供したことが、思わぬ波紋を広げている。「メディアでお伝えされている高圧的ではないということを知って頂きたい」。塚原本部長側はそんな期待を込めていたようだが、結果的に「高圧的」なイメージの払拭につながったかどうかは微妙なところだ。「高圧的な態度ではないとお分かりいただける」宮川選手が塚原強化本部長らからパワハラを受けたと訴えている問題で、塚原夫妻は2018年8月31日、文書で見解を発表。塚原強化本部長は「私の態度に問題があったかと考えており、大変申し訳なく思っております」と詫びた上で、第三者委員会に宮川選手との会話を録音した音声を提出する予定だと明かした。「録音内容をお聴きいただければ、私が決して高圧的な態度ではないということはお分かりいただけると思っております」と、自信をのぞかせた。実際、この音声は31日放送の「報道ステーション」(テレビ朝日系)と「ニュースウオッチ9」(NHK)、「プライムニュースイブニング」(フジテレビ系)で流れた。宮川選手がパワハラを受けたとしている7月15日の翌日に収録されたもので、塚原本部長の代理人弁護士が番組側に提供したという。「人がやったことじゃないんだよ。あんたが契約して、あんたのグループが親か速見さんか知らないけど、それが契約して巻き起こしたことなんだよ。そうでしょ? 周りの人とか私たち関係ないでしょ」報ステによると、音声は塚原本部長のこんな一言で始まった。「帰ってからどうしようと思っていたの?」と聞くと、宮川選手とみられる人が「帰って今日は休もうかなと思った」と返答した。その後のやり取りは以下のとおりだ。塚:人の試技会やら、人が練習しているところを見たって勉強になるでしょ。宮:今はそういう気持ちになれない。塚:それはあなたね。自分のわがままよ。コーチや親が帰ってこいって言ったわけ?宮:帰りたいっていうのは伝えました。塚:親を呼び出しましょうか? 私が。宮:それは別に構いません。塚:でもそれはあなたね、あなた自身の責任でやらないといけないことなんじゃないの? 自分が巻き起こしたことで、自分が逃げるというのはダメ。高須氏「隠し撮りするのは犯罪じゃないのかな?」報ステによると、塚原本部長の代理人弁護士は「宮川選手に対する全面対決ではなく反撃でもなく、あくまでも会話の状況を聞いていただき、メディアで伝えられている高圧的ではないということを知っていただきたい」と意図を説明した。宮川選手が所属契約をめぐり「弁護士を立てて争っているような状況だった」ので「念のため録音した」としている。ただ、この音声データが「高圧的ではない」と知ってもらう契機になったかといえば、そうとも言い切れない。ツイッターなどインターネット上では番組の放送中、「音声どう考えても高圧的なんだけど」「これが高圧的でなくてなんだと言うのかと思う」との声が少なくなかった。音声データがすべてなのか、ほんの一部なのかも分からないため、総じて慎重な意見が多かったようだ。もちろん「喋り方は穏和に聞こえる」との声も上がっていた。こうして注目を集めることになった音声の公開だが、一部では疑問の声も。9月1日放送の「ウェークアップ!ぷらす」(日本テレビ系)では、辛坊治郎さんが「権力者側が相手に知らせずに録音する手法は、当然、録音している側は録音していることを前提にしゃべります、相手はそれを知らずにしゃべってくるわけですから、いかがなものかと正直思うんですが」とチクリ。宮川選手に支援を申し出ている高須クリニックの高須克弥院長も1日、ツイッターで「宮川選手の許可を取らずに録音して公開していいのか? 隠し撮りするのは犯罪じゃないのかな?」と投稿した。「音声」記事を削除した理由とはこうした反響を受けたものかどうか分からないが、テレビ朝日の奇妙な対応もネット掲示板などで注目を集めている。テレ朝は当初、8月31日放送の報ステで音声データを公開した後、31日深夜にネット版のサイト「テレ朝news」で「【報ステ】塚原夫妻"パワハラ"反論 音声データも」と題する記事を公開。音声も含めたニュース動画を掲載していた。この記事は大手ポータルサイトにも配信されるなど拡散。だが9月2日朝までに、どういうわけか削除されていた。一体、どういうことなのか。J-CASTニュースが3日、テレ朝の広報部に取材すると、「インターネット『テレ朝news』の掲載期間は個別に判断しております」との回答が返ってくるのみだった。
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