2024年 4月 17日 (水)

「妊娠はしておらず」 結婚報道の「奇妙な常套句」なぜ生まれたのか

「自ら公表」以外は消えていく?

   一方、最近ではこの表現に違和感を覚える人が少なくないのは、上に述べたとおりだ。

   2015年、自身のブログで「妊娠はしておらず」への疑問を表明したのが、千葉商科大学国際教養学部専任講師で労働社会学者の常見陽平氏である。J-CASTニュースは改めて、この言葉についての見解を聞いた。

「カップルのあり方が多様化し、たとえば同棲はするけど入籍はしない、という人も増えています。そうした中で『妊娠の有無』だけをことさらに取り上げるのは、自ら公表した場合は別として、やはり好ましくないのでは」

   たとえば、日常生活の中で相手に「妊娠しています?」と気軽に聞けるだろうか。常見氏はそう問いかける。確かに昔ならいざ知らず、「不妊」やあえて子供を持たないという選択、はたまたLGBTへの理解が広まりつつある今日では、デリカシーを欠く質問だとみなされるだろう。

「妊娠しているかどうか、ということに興味・関心が持たれるのはわかります。とはいえ、公人であっても妊娠の有無はプライバシーですし、デリケートな問題です。私自身、妊活に取り組んだ経験がありますが......。『妊娠はしていない』という表現自体に傷つく人だっているんです」

   今後は有名人であっても、「そっとしておいてほしい」という権利が認められる方向に進み、交際・結婚報道そのものが慎重さを求められるようになるだろう、と常見氏は予測する。となれば、「妊娠はしておらず」という言葉が消える日も、そう遠くはなさそうだ。

   「妊娠はしておらず」――使われ始めて20年、一般に広まって10年。何気ない言葉の中に図らずも、世の中の移り変わりが垣間見える。

(J-CASTニュース編集部 竹内 翔)

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