ヘビーメタル―― 広辞苑(第七版)によると「金属的な大音響で強いビートを効かせて激しく演奏する」となっている。70年代のイギリスに端を発し、デスメタルやネオクラシカルメタルなど多様なサブジャンルが誕生している。そのイギリスでは「子ども」に向けてヘビーメタルを楽しんでもらおうと奮起するバンドが登場した。犬の着ぐるみを身にまとう「子どもとその両親のためのヘビーメタル」を標榜しているのは「SLAYDUGGEE(スレイ・ダギー)」というバンドだ。日本でもロックバンド「MANWITHAMISSION(マン・ウィズ・ア・ミッション)」がオオカミの被り物をして演奏しているが、彼らは遊園地にいるような犬の着ぐるみを身にまとっている。バンドフォトを見ると、一番手前のメンバーはダルメシアンの可愛げな着ぐるみの上からロックバンド「KISS(キッス)」のシャツを着用している。ほかのメンバーも着ぐるみの上からメッシュタンクトップを着るなど親しみやすさとロックファッションを同居させる工夫が見られる。ヘビーメタルバンドとは言え「子ども」がメインターゲットであるため、メタルゴッドの異名をとる「JudasPriest(ジューダス・プリースト)」ボーカルのロブ・ハルフォードさんのような威圧感や強烈さはない。彼らは2018年2月、英BBCで放送されている子ども向け番組「CBeebies(シービービーズ)」の中で放送されているアニメ「HEYDUGGEE(ヘイ・ダギー)」の劇中曲「StickSong」のヘビーメタルカバーをリリース。YouTubeでは10月9日現在までに11万回が再生されている。オリジナルはテクノポップ調で「スティック」のフレーズを矢継ぎ早に繰り返す。これがスレイ・ダギーにかかるとゴリゴリのベースギター、高速ドラミング、激しいギター演奏をバッグに「スティック」シャウトが続く。とても同一の楽曲とは思えない変わりぶりだ。ついにはアルバムをリリース先のカバー曲で一定の知名度と人気を得た彼らはクラウドファンディングを開始した。その目的はアルバムのリリース。楽曲は動画サイトやフェイスブックを通じて発表してきたが、車など移動している状態で動画を再生すると止まってしまうこともあり、より快適な再生環境を整えるのが主な目的だという。彼らはアルバムの制作費用として2000ポンド(日本円で約30万円)を募集。144人が賛同し、目標額を上回る2382ポンドが集まり、制作に入った。こうして完成したアルバム「KidsLoveMetal」は10月5日にリリースされた。14曲が収録され、子どもをテーマにした曲やイギリスの子供向け楽曲のカバーが収録されている。CDのほかにSpotify(スポティファイ)とAppleMusicでも聴くことができる。また、一部楽曲はYouTubeでも視聴可能。アルバムのリリースに合わせてTシャツの販売も実施している。バンドも全力でPRに走っており、日本の音楽情報サイトの「amass」が彼らを取り上げた際にはツイッターで素早く反応し、「BiginJapan!A-WANKO!」と好意的な反応を示している。以前、フィンランドでは「ヘビサウルス」という恐竜の着ぐるみをまとったメタルバンドが5歳~7歳児を中心に大流行。AFP通信もそのことを取り上げた。既に「子ども」にうけるヘビーメタルの存在もあり、彼らもそうした成功を収めるられるのか。(J-CASTニュース編集部 大山雄也)
記事に戻る