2024年 4月 26日 (金)

日本相撲協会は貴ノ岩にどんな処分を下すのか 「暴力決別宣言」から1か月あまり、責任問題に発展も

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   大相撲の幕内・貴ノ岩(28)=千賀ノ浦=が、冬巡業中に付け人の貴大将(23)=同=に暴行を加えていたことが2018年12月5日、分かった。日本相撲協会が5日午後、発表した。協会による事情聴取によると、貴ノ岩は忘れ物をした貴大将が言い訳をしたとして平手と拳で4、5回殴ったという。協会は今年10月に「暴力決別宣言」を出したばかりで、今後、理事会で懲戒処分が検討されるが、厳罰処分が下る可能性は高い。

   昨年10月、貴ノ岩は巡業先の鳥取市内の宴席で元横綱・日馬富士関から暴行を受け、頭部を負傷した。貴ノ岩はこの負傷の影響で昨年の九州場所と今年初場所を休場した。この事件の責任を取る形で元日馬富士は現役を引退。一連の騒動は社会問題にまで発展し、貴ノ岩の師匠だった元貴乃花親方(元横綱貴乃花)が協会を退職する引き金ともなった。

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今年10月には「暴力決別宣言」

   元日馬富士の暴行事件に続く形で、今年3月の春場所中に当時貴乃花部屋に所属していた十両・貴公俊(たかよしとし、21)が支度部屋で付け人に暴行。関取の相次ぐ暴行事件を協会は重く受け止め、今年10月にプロスポーツの団体としては異例の「暴力決別宣言」を出した。協会が表明した「暴力決別宣言」は以下の通り。

一、 大相撲においては、指導名目その他、いかなる目的の、いかなる暴力も許さない。
二、 暴力と決別する意識改革は、師匠・年寄が率先して行い、相撲部屋における暴力を 根絶する。
三、 協会は、全協会員の意識改革のため、内容の濃い研修を継続して行う。
四、 協会は、暴力禁止規定を定め、暴力の定義、暴力が起きた時の報告義務、これを怠った場合の制裁、行為者を処分する手続きを明確にする。
五、 暴力が起きた際には、広報を重んじ、必要な情報は迅速に開示する。
六、 異なる部屋に所属する力士の間で、先輩・後輩を越えた上下関係や、指導・被指導の関係が形成されることを許容しない。
七、 研修、手続きの運用、その他、再発防止策の実行とその後の検証については、外部有識者を交え、開かれた形で暴力との決別を遂行する。

   この「暴力決別宣言」は親方衆をはじめ、関取や外国出身力士への「意識改革」を目的としてもので、特別研修の実施、外部有識者を入れたコンプライアンス委員会の設置なども決定していた。その矢先の関取による暴行事件に、角界が受けた衝撃は大きく、また、社会に与えた衝撃も小さくはない。

30キロ以上の体重差 一撃はLヘビー級とミニマム級ほどの違い

   暴行事件の被害者から一転、加害者となった貴ノ岩。昨年10月に自身が被った暴行事件と今回の事件は、その性質が大きく異なる。貴ノ岩と元日馬富士は番付こそ大きく異なるが、同じ関取で同郷の先輩後輩という関係の中で起こったもの。だが、今回は関取と付け人との間による、いわば絶対服従の関係にある中で起こった暴力事件で、より悪質である。

   三段目の貴大将は身長174センチ、体重118.5キロと、力士としては小柄である。一方の貴ノ岩は身長182センチ、150キロの堂々たる体格の持ち主。貴ノ岩の供述によれば、平手と拳で4回から5回ほど殴ったとのことだが、体重が30キロ以上も重い力士が本気で殴れば、暴行事件ではなく傷害事件に等しいだろう。

   ボクシングでいえば、最軽量のミニマム級(47.6キロ)の選手が、14階級上のライトヘビー級(79.3キロ)の選手にノーガードで殴られるようなもの。関取と三段目では、体力的な違いは明らかで、日本ランキングにも入っていない選手と、世界王座をうかがう世界トップクラスの選手ほどの差がある。

   実際、幕内力士の張り手は強烈で、張り手一発で体重150キロ以上もの力士を土俵に沈めるだけの威力を秘める。暴行を受けた貴大将は、大きな外傷は見られなかったが、頬が腫れあがるほどの傷を負った。数発殴られただけでもそれほどの傷跡を残すほど、幕内力士の力はケタ違いなのである。

   プロボクサーの拳は時に「凶器」とみなされ、素手で一般人に危害を加えた場合、傷害罪に問われる。今回は同じ力士同士による暴行事件だが、幕内力士の一発は、重量級のプロボクサーのパンチに匹敵するほどの破壊力を持つ。幕内力士の拳もまた、「凶器」であると言っても過言ではないだろう。

   2007年には時津風部屋の新弟子が、親方と兄弟子から暴行を受けて死亡した。その後も角界での暴力事件は後を絶たない。公益財団法人でもある日本相撲協会の自浄能力が問われかねない今回の暴行事件。貴ノ岩の厳罰に止まらず、角界トップの八角理事長(元横綱北勝海)の責任問題に発展する可能性も出てきた。

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