2019年 12月 14日 (土)

取材「合戦」ではなく「協働」へ ジャーナリズムに広がる新たな試み

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   日産のゴーン事件でマスコミ各社の取材合戦がいちだんと激しくなっているが、2018年の出版界を振り返ると、ジャーナリズムの内部で、きわめて注目すべき動きがあった。

   本来は競争し合っているマスコミの記者たちが、ときには勝手に、ある場合は上司の承認のもとに連携を始めているのだ。

  • 注目の書籍刊行が相次いだ
    注目の書籍刊行が相次いだ

「周囲の雑音」は気にしない

   その端緒となったのは、2月に刊行された『日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか』(集英社)だ。自衛隊の日報隠しを情報公開で明らかにしたフリージャーナリストの布施祐仁さんと、アフリカの特派員をしていた朝日新聞記者の三浦英之さん(現在は福島支局員)の共著だ。フリーと共著を出すことについて、三浦さんは「周囲の雑音」は気にしないようにしたと、J-CASTのインタビューで振り返っている。

   本書は10月に「第18回(2018年度)石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞 草の根民主主義部門大賞」を受賞した。

   同賞のウェブサイトで2人は、「新しい試みだったと思う。共著者はそれぞれ在野のジャーナリストと全国紙記者。隠された事実を伝えたい一心で組織の垣根を越えて連帯し、取り組んだ。その点を評価していただいたのであれば、とても嬉しい」とコメントしている。

   審査員・秋山耿太郎氏による受賞理由の説明も掲載されている。

「在野のジャーナリストの孤独な作業を、マスコミの記者が補強する。『事実を伝える』という一点で、『共闘』が成り立った。政府が、防衛省が、いかにウソを重ねてきたか。その軌跡を追って、広がりと深みのある本が出来上がった。筆者2人の異色の組み合わせは、ジャーナリズムの新しい可能性を示している」

   秋山氏は2005年から12年まで朝日新聞社の社長をつとめ、日本新聞協会の会長もしていた。異例の連携を新聞界の重鎮「新しい可能性」として評価しているところがきわめて興味深い。

いきなり自分からツイッターで連絡

   4月刊行の『ルポ タックスヘイブン――秘密文書が暴く、税逃れのリアル』 (朝日新書)も、大手マスコミの「協働」を象徴している。「パナマ文書」に続く「パラダイス文書」の報道にあたっては、67か国の96報道機関で構成する国際調査報道ジャーナリスト協会(ICIJ)が仕切っていた。日本では朝日新聞、共同通信、NHKが加わっている。

   本書の著者は朝日新聞ICIJ取材班となっているが、NHK、共同通信との共同取材だったので、本書の中でも、3社の鼎談で分担や協力の様子が紹介されている。

   12月14日発売の『安倍政治 100のファクトチェック』(集英社)はさらに進んでいる。著者の一人、望月衣塑子さんは東京新聞記者。もう一人の南彰さんは朝日新聞記者で現在は新聞労連委員長。本来はライバル関係にある二人が協力し、この数年の政治家や官僚たちの国会などでの発言が「ファクト」かどうか再確認している。会社公認の作業なのかは明言していない。

   8月刊行の『スノーデン 監視大国 日本を語る』(集英社)の中で米国国家安全保障局(NSA)および中央情報局(CIA)の元局員だったエドワード・スノーデン氏は、強まる一方の国家による情報統制に対抗するため、「メディア全体が協力する」ことを求めていた。

   『日報隠蔽』の三浦さんは、以前から布施さんのツイッターを読んでおり、いっしょに本を作れたら面白いんじゃないかと、いきなり自分からツイッターで面識のない布施さんに連絡したことを明かしている。ネットの進展が、今後も立場を超えた「協働」を広げる可能性がある。

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