2024年 4月 19日 (金)

共同「拉致」特ダネの謎 政府なぜダンマリ?北朝鮮の思惑は?

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   2018年3月に北朝鮮への「入国」が報道されていた日本人拉致被害者らの動向について共同通信が19年2月15日に改めて報じ、その背景をめぐり様々な憶測が広がっている。

   共同によると、北朝鮮側がこの被害者の動向を伝えてきたのは14年。仮にこれが正しいとすれば、政府は約4年間にわたって事実を伏せていたことになる。この1年間、国会質疑でも政府は2人の動向についてコメントを避けてきた。そんな中での「新情報」の背景には何があるのか。

  • 拉致被害者の田中実さん(写真は政府拉致問題対策本部ウェブサイトから)
    拉致被害者の田中実さん(写真は政府拉致問題対策本部ウェブサイトから)
  • 拉致被害者の田中実さん(写真は政府拉致問題対策本部ウェブサイトから)

2014年の「伝達」が18年と19年にニュース化

   動向が伝えられているのは、政府が北朝鮮からの拉致被害者として認定している神戸市の元ラーメン店員、田中実さん=失踪当時(28)=と、政府が「拉致の可能性が否定できない」としている金田龍光さん=同(26)=の2人。田中さんと金田さんは同じ児童養護施設で育ち、同じラーメン屋で勤務していた。

   共同は18年3月、北朝鮮が拉致被害者や行方不明者を含む「すべての日本人」の再調査を約束した「ストックホルム合意」が結ばれた14年5月よりも前の段階で、2人について「入国していた」と日本側に伝えていた、と「日本政府関係者」の話として報じていた。2人の状況については、

「本人は平壌で家族と共に生活、現地に残る意向があると日本政府に説明した」(田中さん)
「本人の帰国の意思は不明で、平壌に住んでいると伝えられたという」(金田さん)

とした上で、日本側とは面会できていないとも報じていた。

   ただ、この報道を受けた国会での質問に対して、政府は一貫してコメントを避けてきた。例えば18年3月28の参院予算委員会では、立憲民主党の有田芳生氏の

「北朝鮮側は田中実さんについてどのように通達してきましたか」

という質問に対して、河野太郎外相は

「拉致被害者については平素から情報収集に努めているところでございますが、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、その内容については差し控えます」

と答弁。安倍晋三首相に対しても共同通信の報道に関する事実確認を求めたが、

「コメントすることによって明らかにその(拉致被害者の)奪還につながらない場合があるということは御理解をいただきたい」

と述べるにとどめていた。

   今回の報道も共同通信の「特ダネ」として報じられ、配信先のニュースアプリが速報を打つなど大きな話題になったが、現時点で政府側からの明確なリアクションは確認できない。

「それでも政府は田中さんに接触をしなければなりません」

   今回の報道で新たに明らかになったのは、大きく(1)北朝鮮が2人の情報を伝えてきたのが「2014年以降の両国の接触で複数回」だったこと(2)田中さんが「結婚し平壌で妻子と共に生活」し、金田さんにも「妻子がいる」と伝えてきたこと(3)田中さんと金田さんの帰国意思は「ない」と説明したこと、の3点。

   有田氏は19年2月16日夜のツイートで、田中さんに帰国の意思がないことを念頭に、

「しかも『拉致されたのではない』と語る可能性が高いのだ。政府が田中さんたちに接触を拒む理由である」

と事情を解説し、これに先立つツイートで、

「それでも政府は田中さんに接触をしなければなりません。経過とともにほかの被害者情報も聞くことです」

とも主張した。

   一方で、

「共同通信はどこから情報を入手?北朝鮮は『拉致被害者は生きているが帰国の意思はない』と発信させ世論を誘導しようとしているのでは」(自民・和田政宗参院議員)

と、このタイミングで新情報がもたらされたことを警戒する声もある。

北の思惑は「この2人で解決」?

   共同通信社の元平壌支局長の磐村和哉編集委員は、「AbemaTV(アベマTV)」で2月15日夜に放送された「AbemaPrime(アベマ・プライム)」で、「このニュース自体はタッチしていないので...」と断った上で、日本政府が反応しない2つの理由を挙げた。ひとつが、北朝鮮がもたらす情報に前のめりになることで、拉致問題の幕引きにつながる懸念だ。

「駆け引きの中で、北朝鮮側がそういう(2人が入国したという)情報を出した。日本は情報にそれにパクっと食いつく。そうすることによって、北朝鮮ペースで話が進んで、『もう拉致はこの2人を出したことで解決ですよ』と幕を下ろされることを日本は警戒して、なかなか積極的に反応しなかった」

   もうひとつが、2人が児童養護施設の出身で親族との関係が薄い、という事情だ。

「日本政府、特に安倍政権にとって、待っている親族がいない被害者。こうは言いたくないが、優先順位をつけてしまった可能性がある」

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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