2019年 10月 21日 (月)

佐々木すみ江、「生身の人間」演じ生涯現役 死の1か月前に渡したバトン

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   生涯現役を貫き、2019年2月に90歳で亡くなった俳優佐々木すみ江さんは、「あなたでなければ」と請われると、小さい作品でも低予算でもいとわずに応じた。こだわり続けたのは、生身の人間を演じること。死の1か月前、そのバトンが一人の演劇人に渡された。半世紀の時を超えた奇跡のような出会いだった。

  • 劇団民藝の舞台「セールスマンの死」での滝沢修さんと佐々木すみ江さん。1966年上演時のパンフレットより
    劇団民藝の舞台「セールスマンの死」での滝沢修さんと佐々木すみ江さん。1966年上演時のパンフレットより
  • 久しぶりに上演された「セールスマンの死」を、佐々木さんは初日に観に行った。2018年11月3日、横浜市で
    久しぶりに上演された「セールスマンの死」を、佐々木さんは初日に観に行った。2018年11月3日、横浜市で
  • 半世紀の時を超えて出会った佐々木さんと野村勇さん(右)。2019年1月19日、東京都墨田区で
    半世紀の時を超えて出会った佐々木さんと野村勇さん(右)。2019年1月19日、東京都墨田区で

「セールスマンの死」をきっかけに

   1月19日、東京・両国のシアターχ(カイ)に佐々木さんの姿があった。最後の仕事となった広島での映画ロケから前日に帰京したばかり。杖がわりのキャリーケースをひいて電車で1時間以上かけてやってきた。

   「降りる人――時代」というオリジナルの芝居を上演していたのは、劇団こむし・こむさ。プロの劇団ではない。中心メンバーは60代、都立墨田川高校の元演劇部員が集まってつくった。

   楽屋で、代表の野村勇さん(69)が佐々木さんを待っていた。この日が初対面。二人を結び付けたのは、「セールスマンの死」の舞台だった。

   佐々木さんは1951年から71年まで劇団民藝に所属し、翻訳劇を中心に多くの舞台に立った。なかでも、故滝沢修さんと共演した「セールスマンの死」はとくに印象に残っていると話していた。アメリカの競争社会の残酷さや親子の断絶を描き出したこの作品で、佐々木さんは主人公であるセールスマンの浮気相手を演じた。

   主人公が出張で泊っているホテルでの情事の最中、高校生の息子が訪ねてくる。慌てる父、ショックを受ける息子。対照的に、取り繕おうとはしない女。父と子の断絶が決定的になる場面だ。佐々木さんの役柄は、主人公と同年配で堅気ふうと設定されているが、「いいのよ、しかけたのはあたし」「一緒に楽しくやりましょうよ」というセリフからは潔さや蠱惑(こわく)的な面もうかがえる。

「それなのに、夫(故青木彰・筑波大名誉教授)は、滝沢修にからむ私を『大仏の周りでヒラヒラ飛んでいる小さな蝶々みたいだ』と笑うし、『下手くそだ』とわざわざ手紙を寄越した知人までいた」(生前の佐々木さん)。

   しかし、1966年に舞台を観た野村さんは、佐々木さんの演技に確かな「生身の人間」を感じた。当時、16歳。早熟で「なまいきな」演劇少年だった。「多面性を持つ人物像を演じることができる、うまい俳優さんだと思ったのです」。一番後ろの席で観たにもかかわらず、舞台の佐々木さんの姿は、野村少年の目に大きく、くっきりと焼き付いた。その評価は、佐々木さんが映画やテレビに活動の場を移しても、ずっと変わることはなかった。

   だが、それを佐々木さんに伝えるすべはなかった。

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