2019年 12月 15日 (日)

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
米のファーウェイ禁輸で思い出す、30年前の「東芝機械ココム違反事件」

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   アメリカのトランプ政権がファーウェイ(華為技術)に事実上の輸出禁止措置を発動した。このため、グーグルは今後ソフト提供を停止する。その結果、ファーウェイとの取引を停止する動きが世界中に広がっている。アメリカは通信ネットワークの保守などに限って90日間の猶予措置を発表したが、その影響は今後も広がるだろう。

   ファーウェイのCEOがメディアのインタビューに、これは想定内で問題はない、といった趣旨の発言をしているが額面通りに受け取れない。

  • トランプ政権が強硬な措置を発動した
    トランプ政権が強硬な措置を発動した

両者の違いは...

   スマートフォンやタブレットは、機械とハードとソフトウェアで成り立っている。ソフトウェアは2種類あって、OSという機械全体を動かすものと、その上にアプリケーションを乗せる。OSが無いとアプリケーションが乗らない。そのOSとしてファーウェイが採用しているのがAndroidだが、それが機能しないと、スマートフォンやタブレットは単なるゴミのような機械になってしまう。Androidは、グーグルが開発したOSであるが、OSというスマートフォンやタブレットの根幹機能を止めてしまうとは、アメリカの本気度は凄く、ファーウェイの息の根を止めかねず、潰しにかかっている。

   良い悪いは別にしても、アメリカは安全保障の関係になると、本当に恐ろしい。かつて日本でも大変な目に遭っている。

   1987年の東芝機械ココム違反事件である。同社による共産圏へ輸出された工作機械により、旧ソ連の潜水艦が静粛化が進んだとして、東芝がアメリカで標的にされた。筆者は、ホワイトハウスの前では連邦議会議員が東芝製のラジカセやTVをハンマーで壊すパフォーマンスを覚えている。

   幸いだったのは、当時、冷戦でアメリカと敵対していたのは旧ソ連であり、日本は当事者でなかった。しかも、アメリカはレーガン大統領、日本は中曽根首相で、ロン・ヤスといわれる良好な関係が政府間であった。このため、東芝が叩かれたといっても、米政府というより米議会が中心だった。

   さらに、レーガン大統領は、当時旧ソ連を追い詰めていた。冷戦終結の転機になったレーガン米大統領とゴルバチョフ・ソ連書記長とのレイキャビク会談は1986年秋に開かれており、これをきっかけとして、ソ連は崩壊した(91年)。このため、87年の東芝事件はほどなく忘れ去られている。

日本企業に「漁夫の利」のチャンス?

   今回のファーウェイの件は、日本の東芝事件とはまったく比較にならない。なにしろ、アメリカのトランプ大統領は、おそらくレーガン大統領が旧ソ連を痛めつけたこととまったく同じことを中国に仕掛けている。

   その影響は大きく、世界中に広がっている。すでに、日本でも携帯各社は今後のファーウェイ製品の取扱を一時中断しているところもある。

   ファーウェイに部品を供給する日本企業もその影響は避けられない。一方、ファーウェイが潰されれば、同社の持っている世界市場は別会社の収益機会にもなる。

   幸いにも日米関係はいい。これからトランプ大統領が来日するが、厳しい貿易問題は後回しで、天皇謁見、ゴルフ、相撲観戦、護衛艦視察などと日米関係が強固なことを国際的にアピールするばかりだ。

   日本企業の中でこの機会に漁夫の利を得ようとするところが出てほしいものだ。筆者には、そのチャンスは十分あるように思える。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「日本の『老後』の正体」(幻冬舎新書)、「ド文系ではわからない日本復活へのシナリオ」(三交社)など。


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