2019年 12月 12日 (木)

加熱する貿易戦争 中国が「抜かずの宝刀」を抜く日はあるのか

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   米中貿易戦争は双方が関税をかけ合うなど解決の見通しは立っていない。関税合戦では輸入額が多い米国に分があるのに対し、中国側は2019年6月1日の報復措置で大半の輸入米国製品に報復関税を課したことになり、手詰まり感も漂う。

   そんな中、追い詰められた中国が「抜かずの宝刀」を抜くのではないかとの観測も出始めた。

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    2017年、訪中したトランプ大統領と習近平国家主席。両首脳の神経戦は続く

実行なら市場大混乱は必至、しかし...

   中国からの米国の輸入は年間約5500億ドル(約60兆円)、対して米国からの中国の輸入は約1500億ドルにとどまる。

   米国は5月13日に約3000億ドル分の同国製品に最大25%の関税を課す対中関税「第4弾」を正式表明。実施時期は明確ではないが、これまでの2500億ドル分に加え、ほぼ全面的に関税を上乗せする構えだ。

   これに対抗して中国は5200品目の米国からの輸入品に2018年9月から上乗せしていた5~10%の追加関税を、6月1日から10~25%に引き上げた。今回の対象輸入額は600億ドル。とはいえ、これでも昨年来の累計で米国からの全輸入額1500億ドルのうち関税対象は1100億ドル止まりで、規模での劣勢は明らかだ。

   このため、関税以外の報復手段として一部でささやかれるのが米国債の売却だ。

   日本や中国など対米貿易などで稼いだ黒字をすべて本国に還流させるわけではなく、中央銀行など金融当局が保有する外貨準備のドルは、米国債に投資されている場合が多い。その米国債の世界一の保有者が中国で、3月末で1兆1205億ドル(約120兆円)にのぼる。ちなみに、日本は1兆ドル余りを保有して2位だ。中国が保有債券を大量売却すれば、市場が大混乱に陥るのは必至だ。

容易に「抜けない」理由

   具体的には、米国債が売られれば値下がりする。債券の値が下がると、金利は上昇する。トランプ大統領は景気拡大を持続するために金利引き下げに躍起で、米連邦準備制度理事会(FRB)に露骨に圧力をかけているくらいだから、中国の米国債売却で市場金利が跳ね上がるような事態は米国経済に打撃を与える可能性が高く、トランプ大統領としてはやってほしくない政策なのは間違いない。

   一方、米国の市場が大混乱に陥れば、それは世界に波及し、中国にも跳ね返ってくる。巨額の保有米国債を一度に売れるわけもなく、売って値下がりすれば、売らずに保有する米国債は巨額の評価損を抱えることになる。中国にとって「宝刀」ではあっても、容易に抜けない、あるいは抜きたくない最終手段と言える。

   実は、3月の1カ月で中国の米国債保有が204億ドル(2兆2000億円)の大幅減になり、市場では「関税への報復か」とささやかれた経緯がある。ただ、最近の動向を見ると、2018年9月以降、中国の売り越しが目立っており、3月末の保有残高は2年ぶりの低水準まで落ちている。米による制裁関税など中国の稼ぐ力を徐々に弱めているため、中国の米国債を買う余力が弱まっているという見方が市場では強まっている。

「武器にする余裕はない」(金融関係者)

   これともからんで、人民元の相場が問題だ。足元で1ドル=6.8~6.9元台と、米中摩擦激化の過程でジリジリと元安・ドル高が進んでいるのは、前記のように、中国の「稼ぐ力の衰え」の反映だろう。

   ただ、米国は中国の輸出が有利になる元安には厳しい視線を向けており、米財務省が5月28日に発表した半期為替報告書で、円安誘導の疑念を向ける日本などとともに「為替操作国」の疑いがある9カ国の一つとして「監視リスト」に指定している。

   一般に、元安の限界と市場が意識するのが1ドル=7元で、現状はこれに近づいている。最近の米国債売却は、元安を抑えるために元を買い支える資金確保が目的との見方もある。

   こう考えると、論理的には米国債売却は中国にとって米国経済に打撃を与える武器になりえるとはいえ、実際に実行するのは難しい。中国は、輸出に有利になる元安を一定の幅で容認するものの、大幅な元安=資本流出という悪夢は避けたいのが本音。2015年に不用意な元切り下げをきっかけに、元安と資金流出に歯止めが利かなくなって株も暴落するという苦い経験をしており、「米国の制裁もあって景気が思わしくない中で、保有米国債の増減を『武器』にする余裕はない」(金融関係者)と見る向きが多い。

   トランプ政権も、元安批判はいいが、元買い支え資金確保のための米国債売却は、米国債相場押し下げ、つまり米国の金利上昇要因になるというジレンマも抱える。

   新冷戦などと言っても、米中の経済関係は多面にわたって絡み合い、相互依存関係にある。両国の駆け引きは神経質な展開がまだまだ続くことになる。

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