2019年 9月 20日 (金)

眉ひそめ「危機」嘆くも「処方箋」はなし G7論じた新聞社説を読む

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   フランス南西部ビアリッツで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、貿易や気候変動問題などをめぐり、米国第一主義と欧州諸国の国際協調主義の溝は深かった。

   民主主義や自由貿易といった共通の価値観を掲げて世界の政治・経済秩序をリードしてきた姿はもはやなく、さまよえるG7を改めて印象付けることになった。

  • ホワイトハウス公式FBより。空中分解進むG7の行方は…
    ホワイトハウス公式FBより。空中分解進むG7の行方は…

「首の皮1枚」つながったが...

   2019年8月24、25日(日本時間25、26日)のG7は、世界経済や貿易、外交と安全保障、気候変動、デジタル経済などを討議。閉幕後、議長国のマクロン仏大統領は2020年の議長であるトランプ米大統領と共同記者会見し、今サミットの合意内容を「首脳宣言」と銘打った1枚の文書を発表した。

   1975年のG7サミット開始以来初めて、首脳宣言を見送るとの「前宣伝」が効いていたため、最小限の内容の文書で結束を演出しようとのマクロン大統領の苦労を伺わせ、マスコミは「首の皮『1枚』(つながった)」などと報じた。

   ただ、宣言の内容は対立を際立たせないため概ね原則論にとどまった。貿易問題では「G7は,開かれた公正な世界貿易及び世界経済の安定にコミットしている」と記しただけで、2018年のカナダでのサミットの宣言にあった「反保護主義」の文言は入らなかった。イランについては「有志国連合」に触れずにイランの核保有阻止と地域の平和と安定を謳った程度。他にウクライナ、リビア、香港に言及したが、フランスが重視した地球温暖化は一言もなかった。27日にフランス政府が宣言とは別に発表した「議長総括」で、温暖化を防止するためのパリ協定に沿ってG7が主導する姿勢を示したが、パリ協定から離脱した米国との対立の深さを示した。

元々はベトナム戦争後の国際情勢に対応するため

   サミットは1975年にパリ郊外のランブイエ城で、時のジスカールデスタン仏大統領の提唱で初めて開催された。ドルショックと石油ショックで国際経済が危機に陥り、ベトナム戦争敗北で米国の覇権が揺らぐ中、冷戦における「西側」の結束を示すとともに、米国だけでは支えきれなくなった国際経済を多国間の協調で安定させるのが大きな目的だった。

   首脳だけが膝詰めで論じ合うのが当初のスタイルだったが、経済中心の議論は政治、安全保障、さらに地球環境などに広がっていく共に、総花的になっていった。これに歩調を合わせ、事前の事務当局による積み上げ方式に変質し、各国は大規模な随行団を送り込み、首脳はもっぱら用意されたペーパーを読み上げ、官僚は夜を徹して成果文書の文案調整に励み、数十ページの文書をまとめ上げるのが慣例化した。

   今回、1枚の簡潔な文書になったことは、形として原点回帰にも見えるが、実態はそんな前向きのものではなく、対立を覆い隠すのが精いっぱいだった。

右から左まで嘆き節

   主要紙は一斉に社説(産経は「主張」)で論じた。

   「先進七カ国首脳が結束し強いメッセージを国際社会に発信する――。......G7サミットはその役割を果たせなかった」と東京(8月29日)が書くように、G7の危機的状況への嘆きは各紙共通。「決裂は回避できたが、溝の深さを印象づけた結果となった」(産経28日)というのが、大方の評価だ。

   原因は、もちろんトランプ大統領だ。毎日(28日)は「今回トランプ氏はあえてG7直前に対中制裁強化を打ち出し、協調軽視の姿勢を一段と際立たせた。G7では、欧州連合(EU)からの強硬離脱を唱えるジョンソン英首相とさっそく会談し、支持を表明した」と、米国を批判するとともに、「米国の独善を阻めぬ背景には、ドイツなど協調重視派の政権の求心力が低下したこともある」と分析し、「先進国が40年以上かけて築いた協調が空洞化の危機に直面している」と指摘する。

   その中で、今回のサミットの成果として、イラン問題をいくつかの社説が指摘している。マクロン大統領がイランのザリフ外相をビアリッツに招き、トランプ大統領がロウハニ・イラン大統領と会談する用意があると表明したことだ。こうしたフランスの努力に、「マクロン氏がザリフ外相をビアリッツに招くなど、緊張の緩和につなげたことが功を奏した」(産経28日)、「両国の緊張緩和の糸口を探る外交努力は歓迎できる」(読売28日)、「米国発の問題の調整に、G7が取り組む実例になるかもしれない」(朝日28日)と、評価の論評が多かった。

来年は「さらなる試練に直面する」

   トランプ大統領が、2014年のクリミア併合でメンバーから外したロシアを復帰させG8に戻す意向を示していることには警戒一色。「認めるべきではあるまい。......ロシアは、法の支配という国際社会の重い原則を共有していないからだ」(朝日)、「このまま復帰すれば、G7がロシアの『力による現状変更』を認めたことにならないか」(読売)、「力による現状変更をいとわぬロシアを復帰させてはG7の存在意義を否定することになる」(産経)といった具合だ。ただ、今回のG7で安倍晋三首相がロシアの復帰の検討を促した(読売28日朝刊3面)ことに言及した社はなかった。

   では、G7をいかに立て直すか。この点に各紙、処方箋は示せない。「G7は来年、さらなる試練に直面する。大統領選挙さなかの米国が議長国になるからだ」(朝日)と、むしろ不安の方が大きいのが実態だ。

   対立する米欧の間で安倍晋三首相の役割も重要だ。読売は「米欧首脳との信頼関係を築いてきた安倍首相は、難しい課題に取り組んでもらいたい」、産経も「安倍首相には米国の指導者をG7の枠組みにつなぎとめ、結束を取り戻す努力が求められる」と、安倍政権支持の2紙は「外交の安倍」にエールを送るが、では、具体的にどうするか。毎日は「トランプ氏との絆を強調し、米欧の橋渡し役を自任する。ならばトランプ氏を説得し協調立て直しに力を注ぐべきだ」と注文する。

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