2019年 12月 12日 (木)

上海AI大会で感じた「陰の薄さ」 中国に日本企業はどう向き合うべきなのか

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   上海市で2019年8月29日から2日間開かれた「世界人工知能(AI)大会」は、極めて興味深い催しだった。

   「2030年までにAI分野世界一を目指す」という国家目標を掲げる中国政府の国家発展改革委員会が中心となった大会には、アマゾン、マイクロソフトなど巨大IT企業のトップが集結し、「貿易戦争」とまで呼ばれる激しい中米間の経済摩擦など、どこ吹く風と言わんばかりの様子だった。そして、日本企業の存在感の乏しさが、今さらながらに気になった。

  • 上海AI大会で、若者が熱心に見ていたマイクロソフトのブース
    上海AI大会で、若者が熱心に見ていたマイクロソフトのブース
  • 日本企業の中では目立ったファナックのブース
    日本企業の中では目立ったファナックのブース

マーとマスクのトップ対談も

   中国からは「アリババグループ」の創業者、馬雲(ジャック・マー)氏らネット業界トップが多数参加。マー氏は米電気自動車(EV)大手、テスラの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏と、AI技術の今後の発展や人類に及ぼす影響について公開対談で語り合い、息の合った様子を聴衆に印象づけた。上海郊外に新工場を建設しているマスク氏は「こんなに速く進んだ事業はない」と、「中国での仕事のスピード感」をたたえた。

   マイクロソフトは大会で、自社の麻雀AI「スーパーフェニックス」が麻雀プロにも負けない成績になるまで性能を上げていると発表。各ブースを見て回っても、人気の中心はやはりアメリカ企業で、どこも人だかりがしていた。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はAIを使ったクラウドサービスを展示。AIを使ってビッグデータを高速処理していくイメージをはっきり具体化していた。

   一方、日本企業はといえば、ファナックのブースが目立ったくらい。それも、どこかこざっぱりしていて、展示内容も豊かとは言えない。それもあってか、アメリカ企業のブースにあったあの熱気がどうも足りないように見えた。先日「日本はAI後進国になってしまった」と公開の場で憂えたのは孫正義氏だが、私には、この「影が薄い日本」という現象が何もAI分野に限った話ではなく、日本の対中国ビジネス全般に及ぶ気がした。一体その背景に何があるのか。たまたま今回、大会会場を一緒に訪れた日本企業の複数の幹部(いずれも中国ビジネスに携わる人たちだ)と訪問後、アルコールも交えながら語り合う機会があった。その一端をご紹介しよう。

次の連携の形をどう実現するか

   「結局のところ、最近の中国の変化のあまりの速さに、日本の大企業組織の縦割り構造がまったく付いていけていないんです」と指摘したのは、10数年前に初めて中国駐在を始めた人だ。日本側からすれば、特にITに絡む分野での最近の中国側の事業提案は規模や投資金額も大きく、往々にして突拍子もなく感じられる。その採否にあたって大きな組織内のあちこちの合意に手間取っている間に、中国側は日本側の誠意を疑い、話はご破算になってしまう――。こういうケースが少なくないのだという。

   別の人は、まさに現在進行形で疾走しているIT分野の技術革新について、未完成な部分はモデルチェンジの際にどんどん修正していく、とにかくスピード最優先の中国に、「完璧主義の日本はとてもかなわない」と指摘した。変貌著しい中国市場にどう向き合えばよいか、「多くの企業は新たな戦略を描けないままでいる」と語る人もいた。

「中国は自分たちの製品を売るところ、という意識から日本側がなかなか抜け出ることができないわけです。中国経済はそのうち『崩壊する』と、メディアでも流れるしね。腰を据えた長期戦略を打ち出しにくい空気は、どこの会社にも共通するんじゃないですかねえ」

   対中ビジネスの第一線に立つ彼らの話から、中日経済関係は過渡期、移行期にあるのだという思いを、私は新たにした。この過渡期をうまく乗り越え、「中国のイノベーション能力と日本の優れた生産技術を組み合わせる」といった、次の連携の形を実現させるためには、どうすればよいだろうか。

   一行と私に共通したのは、少しでも多くの日本人が中国の現実をじかに知ることの大切さだった。「中国に来たのはこれが初めて」という人は、次のように語った。

「こんど上海や(アリババ本社のある)浙江省杭州を回って、驚いたんです。中国では環境問題が厳しく、腐敗がひどく、公衆トイレは猛烈に臭いみたいな話を日本ではとかく聞かされていたもので。中国に来て初めて、自分の目で、リアルな中国を見た気がしました」

   中国との「戦争」のさなかのはずのアメリカ巨大企業がどれだけ中国市場を重視しているか。多くの中国人にアメリカの技術、サービスへの関心がいかに高いか。上海で目にしたそれらも、彼にとっては「リアル」だったに違いない。メディアや風説が作ったレッテルなどから離れたナマの現実に、ビジネスチャンスや次の発展のきっかけは潜んでいるはずだ。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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