2024年 4月 25日 (木)

台風被災地が「専門技術あるボランティア」を募集せざるを得ない理由 「タダでやらすな」で済まない事情がある

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   台風15号で被災した千葉県市原市で「専門技術を持つ無償ボランティア」を募集したところ、インターネット上で議論を呼んでいる。「素人NGのプロ仕様をタダでやれと?」などとして、行政が正当な対価を支払って専門業者に頼むべきだという声が相次いでいるのだ。

   市のボランティアセンターは「対価を払って行政が行うべきという指摘はその通りだと思います」とするも、そのためには手続きなどの関係上「時間」がかかるという点をあげる。「屋根がなくて雨ざらしの方々はその間どうすれば...」。被災地が直面する現実に照らし、ボランティアの必要性を話した。

  • 市原市公式ツイッターが投稿した「専門ボランティア」募集の告知
    市原市公式ツイッターが投稿した「専門ボランティア」募集の告知
  • 市原市公式ツイッターが投稿した「専門ボランティア」募集の告知

批判意見などリプライが460件以上

   市原市の公式ツイッターは2019年9月15日、「【専門ボランティアを募集】屋根に上ってブルーシートを張る専門技術を持っているボランティアの方を募集しています」と呼びかけた。持ち物は昼食や飲み物に加え、「脚立などの高所作業に必要な工具等」さらに「可能であればブルーシートやひもなど」とあげている。

   応募条件は「自家用車で移動ができる」こと。「継続的な活動がありがたいですが、1日からでも可能です」とし、16日から参加できるとしている。活動は雨天中止で、ボランティア活動保険が適用される旨も記載している。

   だが、専門性があって危険も伴う作業にボランティアを募るこの呼びかけには、疑問の声もあがることになった。投稿に対しては、

「これは、きちんと対価を支払ってやるべき」
「国民市民が被災してるのに善意ある人達に丸投げしてボランティアだって。車で動けて、ブルーシート持ってこい、素人NGのプロ仕様をただでやれと。これは、復興事業としてしっかりと契約して進めるべき」
「危険が伴う作業です。さすがにボランティアでやらせる仕事ではないですよ」

などといったリプライが460件以上(20日夜時点)届いている。

「何日もかかっている間に被災した方々は放置されてしまう」

   市原市社会福祉協議会の市ボランティアセンター長をつとめる斉藤大輔さん(44)は20日、J-CASTニュースの取材に「対価を払って行政がやるべきという指摘はその通りだと思います」とする一方、「ただ、そのために行政が踏む手続きは煩雑です」として、今まさに起きている現実を話す。

「手続きを経て専門業者が来るのを待っている間、被災して困っている方々、屋根が吹き飛んで雨ざらしの方々はその間どうすれば...という話なんです。市トップダウンでやってくれるなら構わないですが、何日もかかっている間に被災した方々は放置されてしまいます。

ブルーシートを張りたいという要請は、当センターにも次々に届いています。15日の呼びかけの前にも、『できるから行こうか』と言ってくれる専門技術を持った方が複数いました。ですから、まず『先発隊』としてボランティアの力を借り、いずれ行政が企業と契約して全面的にシート張り出し作業ができる体制になれば、その時点でボランティアを打ち切ればいいと思っています」

   ボランティアであれば、「保険にさえ加入していただければ作業に取り掛かれます」と手続きは早い。ボランティア登録で加入する全国社会福祉協議会の災害補償の保険で、今回の台風15号被災にともなう高所作業・ブルーシート張り作業中のケガなども適用対象になる。

   自治体では発災時に備えて支援活動を受けられるよう、企業や他の自治体と各種「災害協定」を結んでいる。台風15号の被災では市原市と災害協定を結んでいる企業からも、まずボランティアセンターに「すぐにボランティアで復旧活動にあたりたい」と協力を申し出た組織があったという。

   特にブルーシート張りは専門性と危険が伴う。斉藤さんによると、4~5人のグループで1日活動してブルーシート張りができるのは4軒ほど。これまで専門ボランティアで40軒の家屋などにシートを張り出したが、要請はトータルで385軒届いている(19日の作業終了時点)。

   当初、千葉土建一般労働組合から20人が同センターにボランティア登録し、14日からシート張り作業にあたった。だが「とても人手が足りない」として15日に専門ボランティアを募った。瓦業者や塗装業者など、23人が新たに登録してくれている(19日時点)。瓦礫(がれき)の撤去作業などにあたる一般ボランティアとは名簿を分け、できる作業・できない作業を区別しているという。

業者派遣の体制も整いつつあるが

   専門ボランティアとはいえ、すべて無償で作業にあたっている。斉藤さんは言う。

「足りない資機材はこちらで用意しますが、災害ボランティアセンターではどこも対価の支払いはしていないと思います。もしお金を出すとなると、ブルーシート張り作業には払う一方、たとえば瓦礫の撤去作業も危険だけど払わなくていいのか、倒木処理はどうか、チェーンソーを使う必要がある作業はどうか。ボランティア活動は多岐にわたりますので、どこで線引きをするのかという議論になります。『屋根に上る人はお金を払えばいい』と安易に割り切れる話ではありません」

   取材した20日時点では、徐々に行政を通じて業者が派遣されてきているが、まだ人手不足であることは変わらない。しばらくは専門ボランティアも活動を続けるという。

   市原市シティプロモーション推進課の担当者は取材に、ブルーシート張りの業者を行政から派遣することについて「時間的にはかかる」としたうえで、「現状はボランティアセンターのほうで専門技術をもった人々にやってもらっている部分もあります。ただ、危険を伴う作業です。市のほうから有償で業者を派遣できる体制もできてきたので、こちらで対応していきたいと思っています」と話している。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)

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