2019年 11月 17日 (日)

大腸は健康の生命線 日本人が直面する「大腸劣化」とは

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   大腸を制すれば健康を制す。近年の研究の成果から、大腸が全身の健康に大きな役目を果たすことが分かってきた。大腸は便を形成するだけの臓器ではなく、大腸の調子が全身の健康を左右することが明かされつつある。

   しかし、そんな重要な臓器である日本人の大腸は劣化し、疾患が増えている。目に見えない大腸の健康を保つためには、いったいどうしたらいいのだろうか。大腸を元気にするメカニズムと疾患から守るための対策を専門家が明らかにする。

医学者も警告する日本人の「大腸劣化」

   大腸といえばお腹にある臓器だが、実はその調子は全身の健康にも関係しているという。近年の研究で脳と腸の調子が密接に関係している「脳腸相関」という現象が解明されてきた。例えば脳がストレスを感じると交感神経が刺激され腸の緊張も高まり、便秘や下痢の一因となることや、逆に腸内フローラ(腸内細菌の群れ)の状態がうつなどの精神疾患と関わっているとも言われている。

   統計をみると、大腸の疾患自体も日本人では男女共に増加傾向だ。大腸がん・潰瘍性大腸炎などが急増しており、がんによる死者に占める大腸がんの比率は男女ともに急増しつつある。

さまざまな原因で日本人の大腸が劣化しているという
さまざまな原因で日本人の大腸が劣化しているという

   消化器医学専門の松井輝明帝京平成大学教授は、このような現状から日本人の大腸が食生活やストレスで危険にさらされていると指摘し、「『大腸劣化』対策委員会」 を立ち上げ、大腸ケアのための啓発活動を行っている。大腸を様々な病気から守り、良好に保つメカニズムにはどんなものがあるのだろうか。

「大腸劣化」対策委員会の松井輝明帝京平成大学教授(2019年9月撮影)
「大腸劣化」対策委員会の松井輝明帝京平成大学教授(2019年9月撮影)
「大腸劣化」対策委員会セミナーの様子
「大腸劣化」対策委員会セミナーの様子

スーパー物質「短鎖脂肪酸」とビフィズス菌がカギ

   松井教授によると、大腸の調子を左右するのは、腸内に生息する無数の腸内細菌だという。腸内細菌には善玉菌もいれば悪玉菌もいて、互いに作用し合って体調に影響する。もともと大腸は食物のかすを便になるまで長時間貯めておくため、老廃物などがたまりやすい。腸内フローラに悪玉菌が増えたりすると病気になりやすいが、鍵となるのが善玉菌の代表格といえる「ビフィズス菌」と「短鎖脂肪酸」だ。

   ビフィズス菌といえば乳酸菌の一種と思っている人もいるかもしれないが、実は性質も形態も機能も大きく異なるという。酸素に比較的耐性があり小腸に多く生息する乳酸菌に対し、酸素を好まないビフィズス菌は圧倒的多数が大腸に生息する。そのビフィズス菌が大腸で作り出す物質が短鎖脂肪酸だ。この物質は整腸作用があり、悪玉菌を抑制し、血中のコレステロール値を下げ、脂肪を燃焼させ、また糖尿病予防にも効果があるという、いいことずくめのスーパー物質だ。

   というわけで、大腸、そして全身をケアするためにはビフィズス菌や短鎖脂肪酸を増やすことが極めて重要。しかし、そのためには一体どのような対策を取るべきなのか。松井教授はズバリ、ビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌とそのエサとなる食物繊維の摂取がポイントだと解説する。

 短鎖脂肪酸を大腸内で生産するメカニズム
短鎖脂肪酸を大腸内で生産するメカニズム

   実は食物繊維を多量に含んでいるのは野菜よりも穀物とのことで、米・麦などに含まれる食物繊維を摂取してほしいと呼びかける。また食物繊維は「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類に分けられるが、善玉菌のエサとなるのは後者だそうで、大麦・海藻類・リンゴ・ミカン・ジャガイモなどでたくさん摂取できるという。

   また、善玉菌を摂取するためには市販されているビフィズス菌入りヨーグルトも有効だ。ビフィズス菌=ヨーグルトというイメージもあるかもしれないが、実はビフィズス菌が入っていないヨーグルトも意外と多い。大腸ケアを目的とするなら、ぜひビフィズス菌が入っているかどうかという点に注目してほしい。

   もともと日本人の大腸劣化も、食の欧米化や過度なダイエットにより、善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維の摂取量が減り、短鎖脂肪酸が生成されにくくなっていることが一因。元来、海藻や穀物を多く摂取し、他民族に比べてビフィズス菌が多い傾向にある日本人は適切な食生活を続ければ、健康な大腸を保ちやすいと松井教授は指摘する。

誰にでもわかる大腸の健康のバロメーターは...

   「大腸劣化」という現象は気づきにくいが、大腸の健康を維持するコツはあるのだろうか。松井教授はシンプルに、「ウンチが臭ければ悪い、臭くなければ良好です」と答えた。大便の腐臭もまた大腸の悪玉菌によるもので、臭いの度合いが低ければそれはビフィズス菌などの善玉菌が悪玉菌を抑えてくれている証だという。「赤ちゃんのウンチは臭くない」といわれるのも、母体の産道や母乳からビフィズス菌を取り込んで、乳児の腸内はビフィズス菌で恵まれているためだ。さらに母乳にはビフィズス菌を増やす成分が含まれていることも影響している。

   食物繊維やビフィズス菌を含む食品を増やし、なるべくストレスのない日常生活を心がける。これを2週間も続ければ大腸の環境は改善できるが、大切なのは継続だ。加齢に伴ってビフィズス菌は減少ペースを速めていくが、継続して大腸にやさしい生活を続ければ、健康寿命を延ばすことができる。40歳以上の壮年期ならば、定期的ながん検診によって疾患の早期発見も可能で、食事と検診を継続することで大腸劣化を撃退できるのだ。 このような大腸のメカニズムを知って、食べ物の表示にも気をつけたくなった、という人が増えそうだ。

「大腸劣化」対策委員会ホームページ


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