2024年 4月 16日 (火)

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
中止決定の「桜を見る会」 会計の重要性原則から見ると...

   野党は、総理の桜を見る会について、税金の私物化だと追及する動きを強めている。

   と思っていたら、菅義偉官房長官は2019年11月13日の記者会見で、招待者の基準の明確化など全般的な見直しを検討するとして、来年の開催を中止することを発表した。野党が追及チームを立ち上げようとした矢先で、安倍政権のリスク管理で機先を制する形になった。

  • 2020年の「桜を見る会」が中止された
    2020年の「桜を見る会」が中止された
  • 2020年の「桜を見る会」が中止された

予算は1人当たり3000円程度

   桜を見る会は、1952年から、例年4月に新宿御苑に行われる内閣総理大臣主催の公的行事である。その前身は天皇主催で1881年から開催された観桜会だ。総理が各界において功績、功労のあった方々を招き、日頃の御苦労を慰労するとともに、親しく懇談する内閣の公的行事として開催しているものだ。

   民主党政権の時も行われている。これを批判し報道するマスコミ関係者も数多く参加してきた。筆者は桜を見る会に参加したことがないが、参加者から聞くと食べ物などのお土産が出るという。しかし、せいぜい1000円程度だろう。

   今年は、1.8万人参加で、予算は5500万円という。1人当たり3000円程度だ。予算の多くは警備や会場費用に当てられるので、お土産代は1000円というのは社会儀礼の範囲だ。地元の後援会の人を招いたというが、交通費はそれぞれが負担すれば法的な問題はない。

   筆者のように、数字ばかり見る人にとって、5500万円の予算を野党が一斉に税金の無駄遣いと非難するのは、会計の重要性原則からみれば的外れだ。

   会計の重要性原則には、質的と量的がある。質的には問題となりうるが、これまで60回以上も平穏に開催されてきた過去の実績もある。

国家予算の0.00005%

   量的には、国家予算100兆円の僅か0.00005%にすぎない。この程度の金額は、先日森ゆうこ議員(国民民主党)が質問通告が遅れて霞が関官僚が残業せざるを得なくなったために被った1日の無駄と同じだ。国会通告を維新の会のようにルール化すれば、国会会期が150日とすれば、その無駄カットは100倍以上も有益だ。

   ただし、60年以上続いた歴史的伝統行事として国民が受け入れるかどうかがポイントである。招待客では、政治家に一定の枠もあったようであり、時代にふさわしいように来年から簡素化や廃止という選択肢もあり得る。

   この意味で、官房長官が記者会見で述べた招待客基準の見直しなどは時宜を得たものである。なにより、こうした問題で国会の時間が費やされるのは国民にとって好ましくない。

   さらに、筆者らにとって、今回の決定は朗報だ。前回の本コラムで、森ゆうこ議員らがとんでもない国会質疑をしていることを書いた。その後も、筆者のツイート時間を変造した資料を使ったり、原英史氏の自宅住所を公開したり、暴走は止まらない。そのたびに原氏らは抗議しているが、謝罪もなく、桜を見る会への追及によって、森ゆうこ議員問題をフェードアウトする動きもある。

   こうした点から、森ゆうこ議員らの原氏や筆者らに謝罪もなく逃げ得を許さないためにも、今回の桜を見る会の見直しはいいタイミングであると思う。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「『バカ』を一撃で倒すニッポンの大正解」(ビジネス社)、「韓国、ウソの代償」(扶桑社)など。


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