2024年 4月 20日 (土)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
大統領はなぜ、映画「ジョーカー」を気に入ったのか

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「極左は極右ととてもよく似ている」

   16歳の息子とこの映画を観に行ったというサミー(50代、ニューヨーク市在住)は、「弱者を社会から疎外し、経済格差をよしとする「トランプのアメリカ」の今を、見事に表現している」と話す。

   「Bowling for Columbine(ボウリング・フォー・コロンバイン)」や「Fahrenheit 9/11(華氏911)」などのドキュメンタリー映画で知られるマイケル・ムーア監督も、こうした見方をしているひとりだ。「It's about the America that gave us Trump.((この映画は)私たちにトランプをもたらした、アメリカそのものだ)。見捨てられた人たちや貧しい人たちを助ける必要がないというアメリカを、卑劣かつ裕福な人間がより卑劣に裕福になるアメリカを、だ」と語っている。

   ムーア氏は言う。「わが国は今、深い絶望のなかにある。憲法はズタズタに裂かれ、クイーンズ出身の狂気の悪党(トランプ氏)は核兵器の発射を決断できる。それなのにどういうわけか、この映画を恐れるべきだという。私は正反対の提案をする。あなたがこの映画を観に行かないとしたら、社会にとって大きな危機になるかもしれない」

   左派やマスコミは公開前からこの映画について、「白人至上主義で、白人男性の暴力や、トランプを生んだ白人男性の怒りを正当化している」と批判してきた。

   これに対し「ジョーカー」のトッド・フィリップス監督は、「そう感じるのは、左派がいつも何かに怒っているからだ」、「自分たちの言い分を通そうとするとき、極左は極右ととてもよく似ていることがわかったよ」と反論している。

   極左の怒りは、「ポリティカリー・コレクトになり過ぎていることにある」と、フィリップス氏は感じているようだ。「何を言っても問題発言にされてしまっては、何も言えなくなってしまう」とインタビューで話している。

   何についての映画なのか。政治的なのか、そうではないのか。それは観る人が決めることだ。この映画のテーマは「A lack of empathy(共感の欠如)」というフィリップス氏の言葉は、極右、極左、富裕層だけでなく、私たちすべてに投げかけられているに違いない。(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

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