2020年 6月 7日 (日)

食料輸出を制限する国続出 日本への影響の有無は?

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   新型コロナウイルスの感染拡大で、世界的な食料不足への懸念が広がっている。各国が移動に制限を課しているために労働力が不足し、農産物の生産量が減少するとみられ、食料難を警戒して輸出を制限する国が続出している。慢性的な食料不足に苦しむ途上国への打撃はもちろん、食料の輸入大国である日本も影響を受けかねない。

   世界食糧計画(WFP)は、2020年に世界で食料不足に陥る人が19年から倍増し、2億6500万人に上る恐れがあると試算している。国連食糧農業機関(FAO)や世界保健機関(WHO)などは20年4月1日に共同声明を発表し、過度の輸出制限を控えるよう国際社会に呼びかけた。

  • 新型コロナ感染拡大の食料供給体制への影響とは
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EUでは農業労働者の確保に支障

   主要20カ国・地域(G20)の農相は4月21日に臨時のテレビ会議を開き、食料の国際的な貿易体制を維持していくことで一致。声明を発表し、一部の国で起きている小麦やトウモロコシなどを自国で囲い込む輸出規制の動きについて「食料価格の乱高下を招いて、食料の安全保障と人々の栄養を脅かしかねない」と指摘。世界には十分な食料供給がされており、市場のバランスは保たれているとしたうえで、「国際機関や民間企業とも連携し、途上国を含めて各国に必要な量が行き渡るよう食料確保に努める」と表明した。

   国際社会が危機感を深めるのは、まず、人の移動制限の影響だ。欧州各国は農作業の多くを外国人労働者に依存しているが、欧州連合(EU)が域外から域内への渡航を原則として禁止した影響などで、既に労働者の確保に支障が出ている。

   例えばフランスは、農業労働者の8割を北アフリカや東欧出身の外国人に頼るため、今夏までに約20万人の労働力が不足すると試算される。3月下旬に政府が緊急に働き手を募集すると表明したところ、24万人を超える人が手を挙げたというが、外出禁止で一時的に失業状態になった飲食店従業員などだといい、経済活動が正常化していけば農業に向かう人は一部にとどまりそうだ。英国でも農業労働者を東欧などからの外国人に依存しており、農場主らの団体の推計で約8万人の不足が見込まれている。イタリアでは農業で働く不法移民が60万人いるとされ、人手不足の深刻化を受け、政府はこうした人たちの滞在の合法化を検討しているほどだ。

ロシアや東南アジアの対応

   米国も、農業は不法移民が支えているという実態があり、移民規制を進めるトランプ政権も、この部分では一定の配慮をせざるを得ないほどだが、新型コロナの感染拡大が農業の現場にどう影響するかは不透明だ。また、豚肉などを扱う食肉工場で、従業員の新型コロナ感染により操業停止が相次いでいるといった影響はすでに顕在化している。

   こうした中で、食糧生産国の中で輸出を制限する動きが強まっている。世界最大の小麦輸出国であるロシアは4月初め、自国または旧ソ連圏から域外に向けて輸出する小麦、ライ麦、大麦、トウモロコシについて、計700万トンの輸出割り当てを設ける規制を導入し、輸出ペースが速まったために早々に枠に到達し、4月26日、6月末までの穀物の輸出停止を発表した。

   コメ輸出国が多い東南アジアでは、世界3位のコメ輸出国であるベトナムが、国内分の確保のため3月下旬に新たな輸出を一時停止(4月から再開)。カンボジアは4月から輸出規制に乗り出し、ミャンマーも同様に規制に踏み切った。インドに続く世界2位のコメ輸出国であるタイは干ばつで収量減が予想され、輸出量の減少が懸念されるうえ、価格の国際指標にもなるタイ産のコメの値段は年初の1トン当たり400ドルから4月には600ドル近くに急騰しており、輸入国には脅威だ。このほか、ウクライナ、カザフスタン、キルギスなどが小麦を中心に、タイは鶏卵について、それぞれ輸出を規制し、日本の農水省のまとめでは、4月20日時点で輸出を規制する国は13カ国に上る。

「感染拡大で物流が滞る」懸念も

   農業労働力不足や輸出規制の影響を最も受けるのが食料を自給できない途上国だ。例えばアフリカは、通常でも5人に1人が栄養不足に苦しんでおり、絶対的に食料が不足し、必要量を確保できない恐れがあるうえ、価格の上昇、さらにコロナ禍による自国通貨安と、トリプルパンチになりかねない。折しも、アフリカや中東でバッタの大量発生で農作物が食い荒らされる被害が深刻化している。このままでは食料危機に発展する可能性があり、G20などの主要国はFAOなどと協力して食糧援助などの支援に取り組む必要がある。物流を滞らせないよう、この面でもコロナ感染の拡大を防ぐことが重要なのは言うまでもない。

   日本も食料輸入国だが、現時点で途上国のような危機感はない。食料自給率(カロリーベース)は37%(2018年度)と先進国の中でも最低レベル。小麦は88%、大豆は94%、飼料用トウモロコシはほぼ全量を輸入に頼っている。規制が明らかになっている13カ国から日本が輸入している量は少なく、これらの産品の大半は米国、オーストラリア、カナダ、ブラジル産で、例えば食料用小麦粉は2か月分に相当する93万トンの備蓄もある。何より、主食のコメを輸入に頼っていないのは、国民には安心なところだ。

   それでも、「穀物の生産国では作っても、感染拡大で物流が滞る事態が起きるかもしれない」(農水省)などの懸念は消えない。また、国内生産では、外国人技能実習生が来日できず、人手不足が深刻化し始めており、他の産業で職を失った人が農業で働きやすいよう、交通費や宿泊費を助成する方針を打ち出したが、実効性は見通せない状況となっている。

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