2024年 4月 25日 (木)

「小池百合子氏のアラビア語能力は高い」 元外務省の通訳者がツイートした理由

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新谷氏のnote「小池都知事のアラビア語力をどう評価したらいいのかわからない方へ」全文(3)

   黒木亮さんが文春オンラインで書いた評価について

   私のツイートは、多くの方が論拠としている黒木亮さんの記事とは真っ向から反対の意見であるため、何人もの方からお問合せを戴きました。そこでお答えしようと思いますが、その前に次のような事情は説明しておこうと思います。

   黒木さんは、実に小生の早稲田大学の先輩で、アメ大(AUC)の中東研究科においても1年先輩です。箱根駅伝を選手として走ったスポーツマンでもあり、フェアプレー精神あふれる大変立派な人です。その人が、なぜこのような記事を書いたのかと、残念ですが、正義感の強い方です。おそらくは知事の「経歴詐称」を確信し、許せないという気持ちが根底にあるのかもしれません。私はそのこと自体、褒められることであり何ら否定すべきものでないと考えています。お調べになって書かれていることも尊重したいと思います。

   しかし、記事に披露されている黒木さんのアラビア語観、特に知事のアラビア語能力に関するアセスメントは一言で言って幼稚、かつ杜撰です。あれほど賢く、精密な仕事をされる方が、なぜこういうものを書いたのか、理解に苦しみます。編集者が加筆して、筆者の意図以上に過激化するということはよく起こります。そういう部分もありそうな気がしています。

   2,3例を挙げましょう。まず、いきなり「日本で6か月やった程度のレベル」との見出しが躍っていますが、日本人が日本で6か月学んだ程度でエジプト口語(アンミーヤ)を話すようになることはできません。アラビア語はノンネイティブには敷居の高い言語で、始めてから1年でようやく辞書を引けるようになる、と言われています。エジプト口語はそんな簡単なものではない。現地で長く暮らした知事だからこそ、すっと口をついて出てしまうのがエジプト口語なのです。黒木さんは、そのような評価を下した人が「エジプト人」であると権威づけしていますが、このエジプト人に日本人のアラビア語能力を評価する力がないことは明らかです。また、黒木さん自身、このステートメントの矛盾に気づいているはずです。一生懸命勉強されたのですから。

   2ページ目には、小池知事がリビアで会見した時の肉声が張り付けられています。これを聞いて、なぜ記事のような評価になるのでしょうか。これは全く理解不能です。35年アラビア語を学び、会議通訳者として執務し、教鞭も取っている者として証言しますが、知事の発音、イントネーションは極めて正しく、非常に聞きやすいものです。これゆえに、アラブ人が感動し、このようにメディアが引用もするし、会った人が直接話したいと思う理由です。

   黒木さんの指摘:「クウワート」(複数形)だと「軍隊」という意味になるので「人の軍隊を推進したい」というわけの分からない発言になっている。

   確かに、ここは単数形を使うのが正しいのですが、複数にしても意味は十分に通じています。軍隊にとられる恐れはありません。「わけの分からない発言」とは、それこそ、わけがわかりません。

   全文を通じそうですが、このパラグラフに書かれていることも独善的かつ間違いです。女性形を使ってしまった、とか、言葉が出なかった、ということについては、数十年日本の政治の世界で仕事をしていて、普段アラビア語を使っていない、ということを考えれば、むしろこれだけ残しているということの方が驚異的だと考えるのが普通です。男性形、女性形の間違いのことを言えば、ネイティブでも間違えることはあり、ガイジンの小生は今も間違いっぱなしです。さすがに、(知事のした)この間違いはしないと思いますが。普段使っていないと間違えるのは仕方のないことです。

   フスハー(文語)で言うべきところ(留学している学生)を口語で言った、との指摘に至っては、口語できちんと通じていますし、前述したとおり、博士号を持ったエジプト人であっても、同じようになるか、そもそも最初から文語で話せません。

   写真は、2016.12.パレスチナ・オリンピック委員会会長が表敬した際のもの。私がツイートで「記憶している」と言った3回の通訳機会のうちのひとつ。このときも、お客さんは直接知事と話した。

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