2024年 4月 20日 (土)

ユニクロ 「国内最大級」の銀座新店はどんな店? 新ライフスタイルへの戦略との関係

   「ユニクロ」のグローバル旗艦店「UNIQLO TOKYO」が、東京・銀座3丁目にオープンした。売り場面積は約5000平方メートルと、国内最大級で、ウィズコロナ時代の新しいライフスタイルに合わせた販売戦略を展開する拠点と位置付ける。

   新店は商業ビル「マロニエゲート銀座2」の1~4階を占める。同ビルは旧プランタン銀座の本館の跡地開発によって2017年春に誕生。旧プランタン銀座の頃から得意にしてきた女性向けのファッションや雑貨の中小テナントを低層階に集積し、ユニクロは7階に女性向け店舗を構えていたが、今回、移転・拡張した。銀座6丁目の中央通り沿いには新店と同等の売り場面積をもつ銀座店を運営しており、新店を加え銀座は大型店の2店舗体制になる。

  • 「(C)Herzog & de Meuron」(ユニクロのプレスリリースより)
    「(C)Herzog & de Meuron」(ユニクロのプレスリリースより)
  • 「(C)Herzog & de Meuron」(ユニクロのプレスリリースより)

オーダーメード感覚の新サービスも

   2020年6月19日にオープンした旗艦店は、どのような店なのか。まず目を引くのが1階から4階までを貫く大きな吹き抜け。1階の中央部分には、「Life Wear Square」と名付けた、ユニクロのコンセプトである「Life Wear(究極の普段着)」を表現するエリアを設け、季節ごとに展示を行い、顧客にわかりやすく伝える場とする。マロニエ通り沿いの出入り口付近には、横浜や原宿の新店と同様、生活を彩るアイテムの一つとして生花販売エリアも設けた。

   2~4階は、それぞれウィメンズ、メンズ、キッズのフロアとし、2階はベーシックからトレンドまで、機能性、デザイン性を備えたアイテムの世界最大級のラインナップが並ぶ。3階のメンズでは、夏場の「感動ジャケット」を、着丈や袖丈など複数の組み合わせで、約400種類のパターンから注文できるオーダーメード感覚の新サービスを、初めて導入した。4階には、子どもが遊べるライブラリーなども設置した。

   さらに、「服のチカラを、社会のチカラに」と、ユニクロを展開するファーストリテイリングが注力する社会貢献活動「サステナビリティ」の取り組みについて、各フロアに展示スペースを設け、来店客に情報を発信している。1階には早速、新型コロナウイルスに対応して、同社が全国の医療機関等に院内感染防止用ガウンやマスク、機能性肌着を無償提供した活動などについて展示している。

   こうしたコンセプトと店舗展開はそれとして、ウィズコロナの状況で成算はあるのだろうか。

横浜ベイサイド、原宿...

   ファストリは4月に「UNIQLO PARK 横浜ベイサイド店」、6月5日には「ユニクロ 原宿店」もオープンしたばかり。銀座を含め、東京五輪・パラリンピックに向け訪日外国人の増加を見込んでの出店だったが、コロナ禍で目論見が外れたのは確か。だが、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長はウィズコロナでも戦っていけると自信を見せる。UNIQLO TOKYOの内覧会で柳井氏は「東京・銀座はコロナでシュンとしていたが、再生していきたい。日本を代表するハイストリート(繁華街)から優れたコンテンツやメッセージを発信していきたい」と述べた。

   実際、ユニクロはすでに復活しつつある。5月の国内既存店(直営店)の売上高は、前年同月比18.1%減と3カ月連続のマイナスで、月平均で全体の約2割の店舗が臨時休業し、販促活動も控えたことが響いたが、大型連休後は営業を再開する店が増え、減少幅は過去最大の落ち込みだった4月の56.5%減から、縮小した。6月に入って国内のほぼ全店が営業を再開しており、銀座、原宿の新店の効果なども考えると、前年の水準回復も視野に入ってきたようだ。

   既に国内の売り上げを上回っている海外でも、特に強いグレーターチャイナ(中華圏)は、中国も新型コロナの痛手から早めに立ち直ってきており、欧州で大きな打撃を受けたライバルのインディテックス(スペイン)と比べても有利とみられる。

「情報製造小売業」の推進

   また、ユニクロのこれからを占うポイントとして、Life Wearとデジタル化を挙げる声がある。

   「在宅勤務の広がりによって、ファッション性が高い服のニーズは落ちる」との指摘がアパレル業界内で出ている。一方でユニクロの代名詞ともいえる機能性に優れた普段着がLife Wearで、これを基軸に据えた銀座の新店について、柳井氏が「我々の考え方が世界の中心になる。この店から2020年代の世界のアパレル小売業を変えたい」と自信を示している。

   デジタル化は、ファストリが掲げる「情報製造小売業」の推進だ。同じ製品を大量に安く作る「製造小売業」(SPA)は、消費者の好みの多様化で売れ残りの発生などのリスクが高まっている。そこで、販売情報をAI(人工頭脳)などのデジタル技術を駆使して分析し、必要なものを必要なだけ、迅速に作る情報製造小売業への進化が必要というのだ。その究極の姿は「無駄なものをつくらない、無駄なものを運ばない、無駄なものを売らない」だとされる。最適な生産体制ということでは、コロナ禍で浮き彫りになった中国集中などサプライチェーンの偏りの修正も視野に入れる。

   もちろん、国内外でコロナ感染の第2波、第3波の懸念は消えず、UNIQLO TOKYOなどの実績も見なければならないが、日本経済の期待を背負う世界企業だけにコロナを機にもう一段の進化を遂げるか、注目される。

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