2021年 8月 2日 (月)

外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(22)新型コロナの実態 これまでに分かったこと

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今後に検証すべきこと

   では次の感染拡大、あるいは次の新たなパンデミックに備えて日本は何を、どう検証すべきなのだろうか。

   大岩さんはまず、緊急事態宣言の在り方について、どこまでが有効だったのか、あるいは不要だったのかについて、改めて検証すべきだという。

「私自身は、全国一律に宣言を出す必要はなかったと思う。感染者が多いのは東京、愛知、大阪、福岡周辺の大都市圏であり、まったく感染が広がっていない地域もあった。まだら模様の感染に対しては、その流行の程度に応じたキメの細かい対応が必要でしょう。そうでなければ、経済・社会活動の制限の弊害が、より強く出てしまう」

   それは小中高校への休校要請についても同じだ。

「季節性インフルエンザの流行に当たっては、学級閉鎖など小さな単位できめ細やかに対応することが慣例化している。子どもにとって学校生活は、勉学だけでなく、友人との交流や給食で必要な栄養を補うなど、様々な意味で重要です。そういった機会を子どもから奪う措置は、できるだけ少ない方がいいと思います。日本小児学会も、小児は感染が少なく、重症化もまれだとして、一斉休校には反対する見解を出しています。数理モデルによる研究でも、休校の効果は大規模集会の中止など他の手段と比べても効果は少なく、死亡者の減少効果も2~3%に留まる、という結果が出ている。医療従事者が子どもの世話などで仕事を休まざるをえなくなったり、子ども自身の発育や教育に大きな影響を与えたりするなど、失うものが大きかった」

   春から夏にかけては、保健所を通したPCR検査が目詰まりになったことについて、多くの批判が寄せられた。「多くの希望者が検査に殺到すれば、本来検査が必要とする人が受けられなくなり、保健所や医療機関の負担も大きくなる」という意見もあった一方、「外国に比べて圧倒的に検査の少ない日本では、感染実態がつかめない」とか、「検査が受けられないまま待機し、重症化につながる人もいる」といった批判も多かった。

   この点について大岩さんは、まず日本ではPCR検査の能力にそもそも限界があり、限られた資源をどう配分するかという問題を突きつけられた、と指摘する。

   09年の新型インフルエンザの流行の翌年、厚労省は「対策総括会議」を開いて報告書をまとめ、PCR検査体制の充実や保健所機能の強化などを打ち出したが、その後も教訓は活かされなかった。

   「この点について政府は責任があり、それは批判されるべきです。ただ、現実問題として準備ができていなかった中で、次善の策をとるしかなかったのではないでしょうか。十分な準備態勢がない状況で希望者が殺到すると、重症化するリスクの高いお年寄りや、透析患者といった基礎疾患がある人たちが受けられなくなる恐れがありました」と大岩さんはいう。

「一方で、希望者が全員、検査を受けられるようになっても、何のために検査を受けるのか、自分にとって検査のデメリットとメリットはどちらが大きいのか、ということは、いつも考えた方がいいと思います。これは新型コロナウイルスに限りません」

   一般論として、個人にとって検査を受けるメリットは、診断がつき、それが治療につながることだ。季節性インフルエンザであれば、迅速診断キットが普及しており、しかも発症から48時間以内に使えば重症化のリスクを下げられる抗ウイルス薬が何種類も存在する。しかし、新型コロナの場合、今でこそ迅速診断キットも出てきたが、当初は検査結果が出るまでに時間のかかるPCR検査しかなかった。また、いまだに新型コロナウイルス特有の治療薬はない。検査で感染が分かっても、無症状や軽症の人は、感染者の多い都市部では指定されたホテルなど療養施設で、少ない地方では原則として病院で、静養し、経過を見守るしかない。

   「不安だから」とか、「安心したい」という理由で検査を受けても、今の段階では、治療という「出口」がないのが現状だ。

   ただし、個人にとっては大きなメリットがなくても、不特定多数の人にはメリットになる検査はある。社会全体の実態を知るための疫学検査は、過剰でも過小でもない、より適切な対応を取るための基礎になる。

   一方、検査のデメリットは、新型コロナウイルスの場合は、感染していないのにしているという結果が出る「偽陽性」、その逆の「偽陰性」になる可能性がある。

   一般論では、採血など検体採取に伴う痛みや、CTなど放射線機器による被ばくなど、肉体的な侵襲がある。とくに子どもの場合、肉体的な侵襲は大きなデメリットになる。

「こういった意味でも、検査を受ける人は、検査の結果が何の役に立つのか常に考える必要がある。また、行政を含めて実施する側は、検査でどれぐらい多くの人の健康が守られ、それに伴う予算や、必要な医療従事者の数を考慮して、誰を対象にどのように実施するか決めるしかないと思う。具体的には、重症化リスクの高い人や、病院や福祉施設で働くリスクの高い人と濃厚接触せざるを得ない人を優先させたうえで、それ以外については流行や実施可能性の変化に応じて、柔軟に変えていくべきだと思う」

   大岩さんは、日本では大きな問題が起きてその対策について検証しても、教訓が引き継がれない傾向が強い、という。その典型は、09年の新型インフルエンザ対策の検証だ。

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