2024年 4月 25日 (木)

外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(22)新型コロナの実態 これまでに分かったこと

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「コロナウイルス」の特性でわかったこと

   コロナウイルスの特性はどこまで解明されたのだろう。大岩さんの説明を聞いてみよう。

   新型コロナはコロナウイルス科オルソコロナウイルス亜科の一種だ。そこには多くのウイルスが属しているが、ヒトに感染するものはこれまで6種分かっていた。新型コロナは7番目だ。ヒトに感染する6種のうち4種類は社会に蔓延し、ふつうの風邪の症状を引き起こすが、重症化することはほとんどない。

   5番目に見つかったのがSARS(重症急性呼吸器症候群)、6番目がMERSだ。

   新型コロナのゲノムはSARSと75~80%の相同性がある。そこで国際ウイルス分類委員会はSARSの仲間という意味で、「SARS-CoV-2」と命名した。しかし病態はかなり異なるので、WHOは「COVID-19」と命名した。

   「コロナ」はラテン語で「王冠」を意味する。球状のウイルスの表面に突起(スパイク)がついているため、王冠や太陽のコロナに似ているからだ。コロナは脂質やたんぱく質でできた「エンベロープ」と呼ばれる外皮膜に覆われ、せっけんやエタノールなどによって膜が破壊されると感染性を失う。手指洗いの効果が高いのはそのせいだ。

   コロナウイルスのゲノムはRNAでできている。ゲノムがDNAのウイルスよりも変異が起きやすい。それはRNAそのものがDNAより不安定で、増殖する際にRNAの複製ミスが起きやすいからだ。だが、新型コロナは複製ミスを修復する機能を持っているので、持たないRNAウイルスよりも変異が起きにくいという。

   新型コロナはSARSやMERSと同じように、感染者の飛沫を浴びたり、飛沫についたものに触ったりして広がる。

   問題は飛沫より小さい微粒子が咳やくしゃみで飛び散り、空中でエアロゾルとなって浮遊し感染する可能性だ。これを「空気感染」と呼ぶ。この空気感染については、その可能性を示唆する研究やデータが増えているとして、世界の約240人の研究者が連名で部屋の換気などの対策を強化すべきという公開書簡を発表した。これを受けたWHOは、主な感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」としつつも、屋内の合唱練習など特定の環境では「空気感染」の可能性もある、としている。

   この点について大岩さんは、「中国の広州市では、同じ飲食店で接触のない、飛沫も飛ばない距離にいた人が感染した、という報告もある。エアロゾルによる感染がないとは言えない。一方で、新型コロナウイルスは、空気感染でよく知られている麻疹や結核ほどの感染力はない、という研究者が多い。新型コロナウイルスが空気感染するしないにかかわらず、屋内の換気をよくする、3密を避けるといった基本的な対応は変わらない」という。

   潜伏期間は人によって異なる。米ジョンズホプキンス大などによると2~14日で、平均は5~6日という。

   新型コロナウイルスの特徴は、感染しても何の症状も出ない「不顕性」感染がかなり多いことだ。他の感染症でも「不顕性」感染はあるが、他の感染症よりも割合は高い。中国やシンガポールなどの研究チームの疫学調査で、不顕性感染の人も、いずれ症状が出る人でも発症から2日ほど前から、他の人にうつす可能性があることがわかった。

   厚労省によると、感染者の8割程度は軽症で、症状が出てから1週間程度で治る。重症化は2割で、うち4分の1が集中治療室などでの治療を要する。小児の感染や重症化は少ない。

   新型コロナウイルスのゲノム解析から、日本で2月に流行った中国由来のウイルスと、3月に流行った欧州由来のウイルスが異なることがわかった。研究者によっては前者を「第1波」、後者を「第2波」と呼ぶ人もいる。世間では春の流行を「第1波」、夏の流行を「第2波」と呼ぶので、混乱のもとになっている。

   こうして整理してみると、大岩さんが言うように、個人としては手指洗いの徹底、他人に飛沫を飛ばさないマスク着用、「3密回避」や「物理的距離」の確保、換気など、厚労省や専門家が奨励する方法が有効だし、逆に言えば、それ以上にできることは、現段階ではあまりない、ということになる。

「あとは、感染が拡大しつつあれば、ガンガン山を叩いてピークを遅らせる。そうやって感染爆発を避けながら、重症化が進むのを抑えて医療崩壊を防ぐ。地域ごとに、きめ細かく対応して、少しずつ、コロナがあっても制約の少ない生活を送れるようにしていくしかないでしょう」
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