2024年 4月 24日 (水)

Amazonで買える「2万円の棺」 販売者が語る「意義」と、注目集める「直葬」の注意点

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   アマゾンで「棺(ひつぎ)」が、約2万円というリーズナブルな価格で販売されていた――そんな話題が、ネット上で盛り上がりを見せている。

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コンセプトは「自分で準備できるものは自分で準備しよう」

   注目を集めているのは、「棺 平棺 折りたたみ式 布団付 直葬 家族葬 適」という商品名で売りだされている2万1000円(配送料別)の棺。白木作りのシンプルな見た目ではあるが、顔の部分の「窓」や、棺内の布団などの設備はちゃんと備えられているようだ。

   ネット上で葬儀会社の棺のカタログを見ていくと、20万円以上するものも多く、安価なものでも5万円といったところだ。約2万円は安価と言っていいだろう。この棺はユーザーによって2020年10月3日にツイッター上で紹介され、話題を呼んだ。

   J-CASTニュースは7日、出品者の「HITUGI.ねっと」に取材を行った。

   仏具や神具を販売し、葬祭関係の仕事もしているという代表者に出品の経緯について尋ねると、

「もう6年ぐらいになりますかね。アマゾンに最初に棺を出した時には、まだ棺なんていうものはなくて、『逆に棺なんかがアマゾンで売れるんだろうか』とまだ思われてた時代でした。ただ、家族葬や密葬とかが多くなってきた時期でもあったんですよ。それで、できるだけ葬儀の費用を安くしたいという流れが出てきた時代だったので、そんな時に『自分で準備できるものは自分で準備しよう』というようなコンセプトから、その棺を売り出したのですね」

と回答。また一部の葬儀社が販売する棺について「過度に金額が高い部分もあるのではないか」と考え、卸値に近い金額で出しているとのことだ。以前から1万9000円前後としており、消費税の影響で「若干の値上げ」はありつつも、ほとんど値段は変えていない。

   また、品質についても「葬儀屋さんに出しているものと変わらない」という。なお、取材当時は棺の価格は2万1000円だったが、9日現在1万9000円(配送料別)とされている。

「直葬」とは?

   ところで、商品名には用途として「直葬」とも書いてある。代表者は「当時(約6年前)は直葬という言葉もまだなかったですね」と話していたが、そもそも直葬とは、一般的に通夜や告別式を行わずに病院や自宅から直接火葬場に遺体を移し、火葬を行うことを指す。

   葬儀社によってはこの直葬のプランを用意しており、たとえば「小さなお葬式」という葬儀ブランドでは「小さなお別れ葬」として火葬のみのセットプランを通常価格12万9000円(火葬料金や税は別)で用意している。J-CASTニュースは8日に「小さなお葬式」ブランドで葬儀ビジネスを展開するユニクエスト(大阪市)に取材した。

   まずは直葬の注意点について質問すると、担当者は様々な点を挙げた。それによれば、地域や火葬場によって火葬料金が違うこと、故人の顔を見るタイミングがとれないケースがあること、通夜式や告別式をすればよかったと後悔するケースがあること、火葬場で棺に花を入れることは基本的にできないこと、火葬場に病院から直接安置をすることができない場合が多いこと、火葬炉は夕方までしか稼働せず、営業時間も夕方までのところが多いこと、といったポイントがある。

   また、上記のように棺を購入して持ち込むことは、「積極的に受け入れている葬儀社さんはあまりない」とのことだ。

   担当者は「費用を抑える目的だけでなく、『こだわった棺を使いたい』というお客様もいらっしゃるので、受け入れることはありますが」とした上で、「葬儀社さんの棺の料金には、棺自体だけなく、納棺作業の費用も含まれている場合がございますので」といった事情を指摘した。ただし、「セットプランを提供している葬儀社」については、「棺を持ち込まれてもお値引きはできないのですが、それを了承頂ければ、持ち込み自体は構わないみたいです」。

葬儀社に頼まない場合、「たしかに費用は抑えられますが...」

   では、いっそのこと葬儀社を通さず、自分で棺や骨壺などを購入し、完全に個人で「直葬」を行うことは可能なのだろうか。実際、上記の棺が話題になると、SNSではそんな議論が盛り上がった。

   前述のユニクエストの担当者は、もし個人で手配するとすれば、火葬料金が「1~6万円(市民は無料のところもあり)」で、骨壺は「数千円」とした上で、

「一般的に葬儀社で提供されている直葬プランよりも半額くらいになりそうですが、自分たちで行うのは無謀かと思います」

とコメント。また、業者を用いないデメリットについて、搬送時に体液が漏れ出るなど遺体が損傷し得ること、ドライアイスの用意に手間がかかること、手元に棺や骨壷がない場合には届くまで火葬を待たなければならないこと、そして火葬許可証や火葬場の予約の手間を挙げた。また、納棺をする上で、死後硬直が発生するため、素人では姿勢を直すのが難しいとのことだ。

「たしかに費用は抑えられますが、手間と遺体が損傷するリスクを考えると葬儀社に任せるのがベストだと思いますね」

   一方で、前述の棺のAmazonページでは、この棺を使い、自ら直葬を行ったとみられるユーザーの声も書き込まれている。「この棺がなければ父の葬儀ができなかった」との感謝の文章は、少なからぬ人々の心を打った。「HITUGI.ねっと」の代表者は、J-CASTニュースの取材にこう語る。

「その方のためになってよかったなと思います。棺を出していて、この棺によって喜んでもらえる方が1人でも2人でもいれば、アマゾンに棺といったものが全くなかった時から、一からこの棺を出したことに対して、よかったな、と思いますね」
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