2024年 4月 20日 (土)

「糾弾集会」批判も... 「野党合同ヒアリング」はこのまま役割を終えるのか

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   政策について各省庁の担当者を呼んで複数の野党メンバーが問いただす「野党合同ヒアリング」のあり方が改めて問われることになりそうだ。自民党の二階俊博、公明党の石井啓一両幹事長が2020年10月21日に会談し、与野党が行うヒアリングについて、あり方の検証や一定の見直しが必要だとの認識で一致したためだ。野党合同ヒアリングを念頭に置いた対応だ。

   野党合同ヒアリングは、国会閉会中も開かれた場で政策を検証できる機会だが、権限が限られている担当者を野党議員が一方的に罵倒する「糾弾集会」状態になり、問題視されることもある。

  • 野党合同ヒアリングは2018年に始まった(2018年4月19日撮影)
    野党合同ヒアリングは2018年に始まった(2018年4月19日撮影)
  • 野党合同ヒアリングは2018年に始まった(2018年4月19日撮影)

発案の辻元氏「野党合同で行うからこそ影響力が生まれる」

   各野党のウェブサイトで確認できる限りでは、ヒアリングが始まったのは18年2月。立憲民主、希望、民進、共産、自由、社民の6野党(いずれも当時)の議員が集まって、「茂木大臣の線香問題」や「働き方改革虚偽データ疑惑」についてヒアリングを行った。安倍政権では「財務省セクハラ問題」「加計学園『首相案件』問題」「イラク日報隠蔽疑惑」など問題が続出。疑惑や問題が発覚するたびにヒアリングが立ち上がり、メディアの注目度も高かった。

   立憲の辻元清美衆院議員は、20年9月に出版した著書「国対委員長」(集英社新書)で、自らが始めた「ある新しい試み」のひとつとして、この野党合同ヒアリングを挙げている。書籍は、17年10月から19年9月まで野党の国対委員長を務めた経験をまとめた内容で、合同ヒアリングを発案した経緯を

「これまでヒアリングは各党がバラバラで行っていました。しかしそれではメディアからの注目も集まりませんし、幹部や責任者を引っ張り出すことも難しい。野党合同で行うからこそ影響力が生まれると考えたのです」

と説明。その意義を

「口だけで『野党共闘』と叫んでいても意味はありません。みんなで一つのことに取り組み、共同作業をすることが大切だと思っていました。ヒアリングを合同で行うことで、所属政党の大小にかかわらず国会議員一人ひとりの『専門性』『「調査力』が活かせるようになったと思います」

とした。ヒアリングをネットで生中継して国民が見られるようにすることで「自然とその場が『真剣勝負』」になる、とも説明している。

「本当に子どもをいじめているような状況。だけど...」

   ただ、議員の追及姿勢はたびたび問題になっている。ヒアリングには、問題の当事者が招かれることも多いが、議員の様子を見て「子どもをいじめているような状況」という声がもれたこともある。19年12月3日のヒアリングでは、マルチ商法を展開していた「ジャパンライフ」の被害者が招かれ、野党の厳しい追及にもかかわらず省庁の担当者からの実質的な回答がほとんどなかったことについて

「ここに来てた内閣府の課長さんとか、笑っちゃいますけどね。本当に子どもをいじめているような状況。だけど、そういうような状況でも、はっきりしたことを言わないと、野党の皆さんの臆測だけが進んでいっちゃうわけですよ」

などと話した。最近では、立憲の原口一博衆院議員が20年10月19日の「GoToトラベル」事務局人件費をめぐるヒアリングの場で、観光庁担当者の説明に対して

「何をおっしゃっているのか分からない」
「あなたね、非常にコミュニケーション難しい方なんですけれども...」

などと非難。ネット上では、発言は人格攻撃だという指摘が出た。

野党側からは反発強いが

   今回の幹事長会談を受けて、ヒアリングで質問している議員からは批判のツイートが相次いだ。

「与党の力によって国会審議では政府の答弁拒否を容認し、それ以外の場では官僚の説明を拒否させる。そんなことをしたら、議会政治は完全に死に絶えてしまう」(立憲・小西洋之参院議員)
「幹部公務員の本来の職務の一つは、担当する職務に関して説明責任を果たすこと。与党幹事長ならば『野党要求の資料は迅速に提出し、事実関係については正確に説明を』と霞ヶ関を指導すべき。説明責任を放棄するかの如き官僚の現状では、行政の検証という私達野党の職務に支障をきたしてます」(立憲・川内博史衆院議員)

   共産党の山添拓参院議員は、説明や資料の提出を要求しても省庁側が応じないことを主張した上で、

「だいたい国会が開かれないからヒアリングを重ねる事態となっている。責任は政府・与党にあることをお忘れか」

と、国会閉会中でも政策の検証ができる場としてのヒアリングの意義に言及している。ただ、18年4月に野党は「議論の前提が崩れた」として国会審議を拒否している時期に野党合同ヒアリングを開き、本末転倒だという批判が出たこともある。

加藤官房長官、ヒアリングの法的根拠は「具体的には承知していない」

   現時点で政府の対応がどう変化するかは不透明だ。加藤勝信官房長官の10月21日午後の会見では、与党幹事長会談に同席していた自民党の森山裕国対委員長の

「役所によっては、ヒアリングによって非常に負担を感じて、役所を休んだりしなければならないことも起きていると聞いている」

という発言を念頭に、働き方改革との関係について問う質問が出た。加藤氏は

「私ども政府は国会に対する説明は当然だが、その前提として与党、野党から様々な質問をいただく。それに関してはできるだけ丁寧に、真摯に対応していくことが必要だと考えている。さはさりながら、限られた人員の中でやらせていただいているわけだから、そうした点についても、ぜひご理解はいただきたい」

と応じる一方で、ヒアリングの法的根拠や、具体的に業務に生じている影響については。

「各政党から(のヒアリングに応じる)、ということについて、何か法的根拠がある、ということは、私自身は具体的には承知していないところ。具体的に支障があるのかないのか、これはなかなか難しい。いろんな仕事をしている中で、そうした状況(支障)が生じるとしても、『何が要因か』というのは、ひとつひとつ限定はできない」

と話した。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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