毎日新聞社は2021年6月19日の朝刊に、人気絵本「はらぺこあおむし」をモチーフにした風刺漫画をめぐる問題について、「絵本や作者をおとしめる意図はありませんでした」などとする見解を掲載した。風刺漫画に抗議していた「はらぺこあおむし」の出版元・偕成社(東京都新宿区)は21日、同紙の対応を受けてコメントを発表。「紙面にて誠実にご対応いただいたことを、お伝え申し上げます」と公式サイトで伝えている。風刺漫画の中身は問題視されたのは、毎日新聞の5日付朝刊に掲載された風刺画だ。内容は、5月に死去したエリック・カール氏の絵本「はらぺこあおむし」のあおむしに擬したトーマス・バッハ会長らIOC幹部らが、「放映権」と書かれた「ゴリン(五輪)の実」をむさぼっているというもの。98年から続く同紙の長寿コーナー「経世済民術(けいせいさいみんじゅつ)」のひとつとして載せられたこの画には、「エリック・カールさんを偲んで はらぺこIOC 食べまくる物語」というタイトルがつけられていた。この風刺画の掲載に、出版元・偕成社の今村正樹社長は21年6月7日、不適当な形で作品を引用されたなどとして、自社サイトで「風刺漫画のあり方について」と題した抗議の声明を発表する事態となった。「皆さんを不快にさせたとすれば本意ではありません」こうした動きを受けて、毎日新聞は19日付朝刊に、「前回(5日付)の当欄『経世済民術』に掲載した作品について」と題して見解を示した。文書では、一連の経緯を説明したうえで、問題となっている風刺画について今村氏の声明文より抜粋して、「(はらぺこあおむしは)金銭的な利権への欲望を風刺するにはまったく不適当と言わざるを得ません」「風刺は引用する作品全体の意味を理解したうえでこそ力をもつ」などの指摘を受けたと説明。その一方で、読者からは、「今後も質の高い風刺画を掲載してほしい」などの意見が寄せられたとした。続けて、「今回の作品は肥大化するIOCを皮肉る風刺画で、絵本や作者をおとしめる意図はありませんでしたが、絵本作りに携わった方々や絵本の読者の皆さんを不快にさせたとすれば本意ではありません」と釈明し、「皆さんからいただいたさまざまなご意見を真摯に受け止め、今後も洗練された風刺画をお届けできるよう紙面づくりに努めてまいります」とした。こうした見解文の掲載を受けて、偕成社は21日、「今回掲載した意見についてのご回答をいただきました。紙面にて誠実にご対応いただいたことを、お伝え申し上げます」と報告する文書を公式サイトに掲載した。
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