【連載】MUTEKIDEADSNAKEのBUCHIAGARU!!music俳優にアーティストと、マルチに活躍する星野源さん。私生活でいえば、2021年5月に発表した新垣結衣さんとの「逃げ恥婚」で、日本中の注目を集めたばかり。国民的クリエイターの1人、といっても過言ではないだろう。ところで、俳優としての星野さんの魅力は、出演作品を見ていれば、素人でも何となく伝わってくる。では、アーティストとしての星野さんが作る楽曲には、いったいどんな魅力や特徴があるのだろうか。音楽作家のMUTEKIDEADSNAKE(ムテキデッドスネーク)氏が、「逃げ恥」の主題歌「恋」を通じて解説する。あのアニメソングが制作のヒントに?ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で共演した新垣結衣さんとご結婚され、日本中から祝福を受けた星野源さん。自分も当時ドラマを見ていたこともあり、ニュースを聞いた時は非常に驚き、思わず知人にメールしてしまいました。そこで今回の記事では改めて『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌として大ヒットした「恋」について書いていきたいなと思います。◆縦横無尽に動き回るストリングスにBUCHIAGARU!!星野源サウンドの要になっているのは派手なストリングスだと思いますが、「恋」においてもそれは存分に堪能することができます。一般的にストリングスを曲中で歌が入っている箇所に使用する際は、長い音符で、歌の邪魔をしないように、かつ曲に派手さを与えるために使われることが多いですが、この「恋」ではメロディに負けないくらいの勢いでストリングスも動き回ります。曲のアウトロ部分では非常に速いフレーズでこれでもかというくらいに弾きまくり、曲の終わりに向けて聴いている側のテンションをこれでもかと言うほど上げてくれます。どうやってこのようなアレンジの発想に至ったのだろう...と思っていたところ、以前星野源さんがラジオ番組で、アニメ『おジャ魔女どれみ』の主題歌で、派手なストリングスが非常に印象的な「おジャ魔女カーニバル!!」が好きだと言う話をされていて、それを聞いた時に、なるほど!と妙に納得したのを覚えています。それ以外にも、「恋」にはポップスには珍しく中国の楽器である二胡を使用したり、ギターも軽やかにカッティングしていたりと、様々なジャンルからいいところを吸収する星野源さんの音楽に対する視野の広さが感じられます。ある曲を聴いていて、その作者が影響を受けた別の音楽に想いを馳せる瞬間って、とても楽しいですね!ドラムの「音量」に大きな特徴◆スネアドラムを強調したサウンドにBUCHIAGARU!!そして、派手なストリングスや二胡に気を取られてしまいがちですが「恋」のサウンドには、ドラムがとても大きな役割を果たしていると思います。ドラムの中でも、特にスネアドラムの音なんですが、改めて聴いてみると、「恋」に入っているスネアの音、めちゃくちゃ存在感も音量自体も大きいと思いませんか?一般的にJ-POPの音楽制作をする時は、ボーカルが一番前にくるようにミックス(レコーディングした楽器やボーカルを一つの曲としてまとめ上げる作業)をすることが多いですが、「恋」ではスネアドラムの音をボーカルと同じくらい前面に出していこうという意思が明確に感じられます。「恋」以前の楽曲でサウンド的に近しい、「SUN」や「Weekend」といったような楽曲では、まだスネアドラムの音は控えめなのですが、この「恋」を機にと言いますか、その後の星野源さんのヒット曲である「アイデア」や「創造」といった楽曲でも一気にスネアドラムの存在感が増しています。もしかすると、「恋」のあたりから星野源さん及び星野源さんの制作チームが、一般的なJ-POP的なサウンドに寄せていくよりも、自分たちのセンスでかっこいいものを作った方がいいんじゃないか、という意思の元で楽曲の制作をはじめたからなのではないかな・・・などと勝手に想像してしまいました。そしてこの大きなスネアドラムの音、めちゃくちゃかっこよくて、正直僕はドラムを聴きたくて星野源さんの楽曲を聴いているみたいなところがあったりします。「恋」は王道のようでもありながらポップスという枠の中で遊びまくっており、随所にこだわりが感じられる素晴らしい名曲だなと改めて思いました!
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