2021年 10月 25日 (月)

ご当地ヒーロー「仮面ライダー酷似」指摘で活動休止 著作権侵害?CF返金?弁護士に法的見解を聞く

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   クラウドファンディング(CF)で約89万円の支援を受けて誕生したご当地ヒーローが2021年9月14日夜、活動期間わずか1か月で休止を報告した。

   当該ヒーローを巡っては、13日夜頃から複数のツイッターユーザーの投稿をきっかけに、衣装デザインが東映制作の特撮ドラマ「仮面ライダーシリーズ」のヒーローと酷似しているのではないかと問題視する声が集まっていた。

   J-CASTニュースはネット上で注目を集めている「著作権問題」を中心に、弁護士に見解を求めた。

  • ツイッターアカウント「【公式】水ト炎ノ戦士 ソルディア」(@yOfE0t8kG7Tn6CO)より
    ツイッターアカウント「【公式】水ト炎ノ戦士 ソルディア」(@yOfE0t8kG7Tn6CO)より
  • 中央左より仮面ライダーゼロツー、ゼロワン(東映公式サイトより)
    中央左より仮面ライダーゼロツー、ゼロワン(東映公式サイトより)
  • ツイッターアカウント「【公式】水ト炎ノ戦士 ソルディア」(@yOfE0t8kG7Tn6CO)より
  • 中央左より仮面ライダーゼロツー、ゼロワン(東映公式サイトより)

スーツは「ゼロワン」、ベルトは「アギト」のものをベースに発注・制作

   話題を集めているのは、「阿蘇の新しいローカルヒーロー」として活動していた「水ト炎ノ戦士ソルディア」だ。4~5月にクラウドファンディングサービス・CAMPFIREで支援金を募り、目標の64万円を上回る88万円超を集めて8月に誕生した。

   プロジェクトは熊本・南阿蘇を中心に広告代理業を行っているという代表を筆頭に、元アクターなど4人で企画したという。同月28日に初回公演を実施したほか、ツイッターやYouTube投稿も行っていた。

   問題となった衣装については、「仮面ライダーシリーズ」のファンらのツイートによって頭部が「ゼロツー」、体は「ゼロワン」、ベルトは「アギト」の造形に酷似しているとされた。さらに配色が石ノ森章太郎さん原作の「人造人間キカイダー」を彷彿させるという声も。

   ソルディア公式ツイッターは9月14日朝、スーツとベルト部分について著作権侵害ではないかという指摘を受けているとして、「阿蘇に新しいローカルヒーローをつくる会」の名義で報告書を公開。スーツ自体は制作を委託しており、

「事実、ヒーロースーツは仮面ライダーゼロワン、ベルトはアギトのものをベースに発注、制作をしております。この点に関しましてはご指摘の通りで、 『色を変えたから良いのではないか』という甘い認識でございました。大変申し訳ございません」

と伝えた。文書によるとスーツは6月に制作開始・発注、8月に完成・到着。完成後の12日、「東映株式会社コンテンツ第一営業部」へメールを送ったという。

   メールではソルディアについて「不定期のボランティア活動」だとしながら、「グッズ販売や動画制作等の展開を予定しております」としていた。資料を添付してゼロワンをベースにスーツを制作したと申告し、「もし、似すぎており著作権侵害の疑いがある場合は大変お手数ではございますが、ご一報いただけますと幸いです」とつづる。活動にあたっての注意点や留意事項なども求めたが、14日10時時点で東映からの返信はなく、「ご連絡があった場合、真摯に対応する所存です」とする。

スーツ・ベルト破棄、アカウント凍結、活動休止を報告

   報告書が投稿された14日の夜、ソルディア公式ツイッターは「今後の活動についてのお知らせ」とした文書で「この度は私たちの身勝手な行為にてたくさんの皆様にご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません」と改めて謝罪。以下を伝え、「大変申し訳ございませんでした」と重ねた。

「1.ご指摘のスーツとベルトにつきましては当方にて破棄致します。またその旨を東映株式会社様へご報告致します。
2.Twitter、Instagram、YouTubeの公式アカウントを凍結し、活動を休止致します。
3.クラウドファンディングにご支援いただいた皆様へ
今後の活動につきまして、後日メールにてご報告を致します」

   また作中で敵対組織とするキャラクターが着用していたマスクは、作家の倉戸みとさんが制作したものを無許諾で使い、さらに倉戸さんの著作物を「本団体の著作物であると誤解を招く形で撮影に使用しておりました」と報告した。このマスクはネットで一般販売されている。

   倉戸さんは当該案件について「衣装製作等のご依頼を承っておりません」とツイートし、14日18時時点でソルディア運営からの連絡はないとする。著作権は放棄していないとして、

「私的利用の範囲であれば問題ございませんが【第三者の著作物と誤解されるおそれがある】場合等については、トラブル防止のため事前のご連絡を頂けますと助かります」

と伝えた。

   一連の騒動には、支援金を投じたとするツイッターユーザーから「金返せとか言わない ただ、ただ、悲しいし腹立たしいよ」といった反応も寄せられた。

   15日夜、各公式アカウントの停止が確認された。少なくとも16日時点で東映による発表はなく、ソルディア側の一方的な対応に終始したようにみえる。

   J-CASTニュースは弁護士法人 天音総合法律事務所の正木絢生・代表弁護士に法的観点からの見解を聞いた。

著作権の侵害にあたるのか?弁護士の見解

   公の場から姿を消したソルディアだが、そもそも休止までの活動内容において著作権の侵害に該当していたのだろうか。15日、正木弁護士は本件の著作権問題について争点を説明した。

「著作権によって保護される権利は複数ありますが、今回は著作権法27条の『翻案』にあたるかが問題となります。翻案とは、著作物の本質的な部分を維持したまま表現方法を変更することです。著作権法27条は『著作者は、その著作物を...変形し、...その他翻案する権利を専有する。』と規定しており、著作権者以外が無断で翻案をすることは著作権法違反になります。

今回の問題の場合、ソルディアのスーツ・ベルトが、仮面ライダーゼロワンのスーツ、仮面ライダーアギトのベルトを『翻案』したかの問題となります。裁判上、翻案とは、『既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為』とされています」(正木弁護士)

   その上で、以下のように述べる。

「著作権の侵害にあたりうると考えます。

今回のスーツのようなものを識別する上で、顔は重要な要素だと考えられますが、ゼロワンとソルディアについては、特に顔の形状はかなり酷似していて、色以外の形状についてはほぼ同じです。その点は特に本質的な特徴を直接感得すると言えます。それ以外の部分についても、色や細部は違いますが黒い部分と装甲のような部分がある位置についても似ています。

スーツ全体でみる場合、ベルトの部分は異なり、色の使い方はそれなりに違いますが、顔の部分や体の形状はスーツの本質的な特徴と考えうるので、『翻案』にあたりうるものであると思われます。

ベルトについてはスーツほど特徴的な形状はしていないので、スーツに比べると著作権違反となるハードルは高いかもしれません」(正木弁護士)

色を変えたからいいという場合は「あり得ると思います」

   本件が著作権侵害にあたる場合には、どのような罰則が考えられるだろうか。

「まず、著作権者はスーツの利用等の差止請求をすることができます(著作権法第112条1項、2項)。

加えて金銭的な請求としては、無断で著作物を『翻案』されたことを理由に、『翻案』の際に請求できる翻案許諾料を請求することができます。こういう形での翻案はあまり許諾されないと思いますが、作品の関連商品を作成するときのライセンス料は請求額の参考にはなるかもしれません。

刑事上の罰則としては著作権法119条1号より著作権を侵害した者には十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処せられる可能性があります。懲役と罰金は併科される可能性があります」(正木弁護士)

   ソルディアの報告書では、著作権について「『色を変えたから良いのではないか』という甘い認識」があったと記述されていた。著作物の色だけを変えることで著作権の侵害をまぬかれる事はあるのだろうか。

「ケースバイケースですが、色を変えたからいいという場合はあり得ると思います。著作物が法律上保護されているのは、創造性が認められるからです。逆にありふれたものであるなら、著作権法上保護されません。

仮に創造性の大部分を色に依拠した作品があるとします。言い換えれば、色の部分以外は極めて一般的なもので、創造性を認められるほどのものでないが、色の使い方が極めて特徴的であるなら、色使いの創造性を主な理由として、創造性が認められることは考えられます。

その場合、色をありふれた色使いに変更した場合、本質的な特徴の部分を模倣したことにはならないため、著作権違反にはなりません。もっとも、著作権法以外の法律に触れる可能性はありえます」(正木弁護士)

   また本件が触れうる著作権以外の法律について、正木弁護士はこう述べる。

「仮に今回の行為が著作権侵害にあたらない場合でも、特にゼロワン・アギトと形状が似ていることは否定できません。商品化の際にゼロワン・アギトと混同するような商品の作り方をした場合、不正競争防止法の『不正競争』(第2条1項、同項1号)に当たりうるのではないでしょうか」(正木弁護士)

クラファン返金の可能性は?

   本件はクラウドファンディングで資金を募って開始したプロジェクトだったという点も、より悪質性が高いというようにネット上では問題視されている。支援者が望んだ場合、支援金が返金される可能性はあるのか。

「CAMPFIRE利用規約によると、『プロジェクトオーナーと支援者の間において支援契約が成立します。』とあります。つまり、ソルディア関係のプロジェクトの遂行者(以下プロジェクトオーナーとします)と支援者の間で直接の契約が存在することになります。契約の内容については、購入型の場合は売買契約になると考えられ、寄付型の場合は負担付贈与となり、どちらにせよプロジェクトを遂行する義務があると考えられます。したがって、プロジェクトを完遂できなかった場合、債務不履行の問題となります。

仮に今回の案件に著作権違反があり、その著作権違反のせいでプロジェクトがとん挫した場合を前提に説明しますが、今回についての支援契約は負担付贈与だと考えられるので、プロジェクトが完遂できなかった場合は、債務不履行を理由に契約を解除し、プロジェクトオーナーに対し支援をしたお金の返還を求めることができます。

もっとも、クラウドファンディングを利用する案件には、そもそもプロジェクトの遂行が困難な案件も含まれることから、プロジェクトオーナーの義務は、あくまでプロジェクトを適切に遂行する義務であり、完遂できなかったとしても、当然に債務不履行が認められない可能性もあります。

しかし、そのような立場をとったとしても、プロジェクトオーナーは著作権法等、法に反しない適切な方法でプロジェクトを遂行する義務はあります。今回のプロジェクトオーナーの行動はその義務を果たしていません。そうすると、仮にプロジェクトオーナーに完遂の義務まではないとしても、やはり債務不履行は認められるといえます」(正木弁護士)
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