「50才腐女子、子宮体がんになる」――衝撃的なタイトルの闘病ブログが「参考になる」と、SNSで大きな注目を集めている。「腐女子」はボーイズラブ(BL)作品を愛好する女性のことを指す。数多のBL小説を手掛けた人気作家・水戸泉さん(51)が自らの体験をもとに公開した。J-CASTニュース編集部は2023年1月12日、水戸さんに闘病ブログを公開した背景を取材した。「痛みも不調もなく、元気いっぱいだった」水戸さんは1971年12月14日生まれ。職業は小説家だ。1996年4月に茜新社の小説誌「小説オヴィス」でデビューし、同年10月に初の単行本「ロマンスの王様」を出版している。BL小説を中心に著作は100冊を超え、政党擬人化漫画「政党たん」の原作や、乙女ゲーム「オトナ100恋」のシナリオなども手掛けている。「50才腐女子、子宮体がんになる。」と題した闘病ブログを公開したのは23年1月6日だった。「生理の出血が止まらなかったのである。それも2022年2月5日から、手術で子宮、卵巣、卵管、リンパ節を全摘する2022年6月22日までずっと、毎日。2022年3月17日には、椅子に染みこむくらいの大出血。スーパーサイズのタンポンと夜用ナプキンを軽く通過する量だった。服を汚してしまい、姪に服を借りて帰る。なのに痛みも不調もなく、元気いっぱいだった」生理周期外で起こる出血「不正出血」のほかに自覚症状はなかったそうで、水戸さんは「更年期特有の生理不順かなー」とのんきに過ごしていたと振り返る。しかし4月27日、受診したレディースクリニックの医師の表情は厳しかったという。病変の一部の組織片をとって顕微鏡で調べる組織診がうまくいかなかったため、5月11日に紹介された総合病院を受診し、20日に医師から検査の結果が告げられた。「『子宮体がんです』と告知された時は診察室で『えっ、でも私めちゃくちゃ元気なんですが!?』って叫んじゃったよ。お医者さんがしみじみと『がんというのは、初期だと痛みがないことも多いんです』と言わはりました」水戸さんは元気そのものだったそうで、実感がわかなかったという。ブログでは、このようにがんの告知や検査内容を明るくコミカルに紹介している。現在の具合は?日本産科婦人科学会公式サイトの説明によれば、子宮体がんは成人女性に増えてきているがんのひとつ。子宮体がんになる年代は比較的高齢で、一番多い自覚症状は不正出血だという。治療の主体は手術で、進行具合にもよるが、基本的には子宮、卵巣・卵管、リンパ節を摘出するのが一般的とされる。ブログによれば、水戸さんは22年6月22日までに手術で子宮、卵巣、卵管、リンパ節を全摘した。取材に対し水戸さんは、現在の体調について次のように説明する。「お陰様で今のところ転移もなく、去年の12月16日に最後の抗がん剤治療を終えて、経過観察に入っています。主治医の先生に『コロナにはくれぐれも気をつけて、無駄に外出しないように!』と釘を刺されるくらい元気です(笑)」水戸さんは抗がん剤治療を終えた12月、はじめてインターネット上で自身のがんについて言及した。年が明けて1月6日からはほぼ毎日、闘病生活を振り返るブログを公開している。水戸さんは、自分ががんを告知された時に知りたかった情報を自分の体験を通して多くの人と共有したいと意気込む。「医学的なことは専門外で書けないので、抗がん剤の副作用を軽くする工夫などを主にお伝えしたいです。抗がん剤の点滴中に氷を舐めていると、味覚障害が少し軽くなる!とか、水分をたくさんとると抗がん剤を早く排出できて良いぞ!とかそういうの。更新はなるべく毎日したいですが、できるかな~...(笑)」キャッチーなブログタイトルは「職業病」だといい、明るい文体は自らの作風であり、読者にはブログを通して明るい気持ちになってほしいと望んでいる。早期検査、治療が大切闘病中の作家活動については次のように振り返る。「仕事先の方にはお伝えしてご配慮いただいたので、特に困ることはありませんでしたが、抗がん剤投与後10日間くらいは動悸、息切れが激しく、さすがに平常通りに仕事や家事をするのは難しかったです。投与後10日過ぎれば、次の抗がん剤まではそこそこ元気です」抗がん剤の点滴を受けながら食べた親子丼は美味しかったそうだが、「でも肉が少ないと病室で不評だった...」と茶目っ気交じりに述べた。水戸さんのブログは9日ごろからツイッターで拡散され始め、「すごく参考になる記事」「他人事じゃないな...」などと大きな注目を集めた。ファンからも「ヒトゴトではないなぁと思ったら水戸泉先生じゃん!」「あの、レジェンドBL作家、私が大好きな水戸泉先生です??」などと驚く声が広がっている。ブログを参考にしたいという声に対して水戸さんは、「嬉しいです。私は無知で不正出血を放置してステージ2まで進めてしまったので、これを契機に皆さんが検診に行ってくれたら幸いです」と受け止める。「がんは怖い病気ですが、医学の進歩は目覚ましく、必ずしも死ぬ病気ではなくなりました。副作用対策やがん患者へのメンタルケアも、10年前と比べたら格段に改善されていると医療関係者も言っていますし、私も実感しました。絶望が一番健康に良くない。なるべくしょーもないことでいっしょに笑いましょう」日本産科婦人科学会の公式サイトにも次のような記述がある。「子宮体がん(子宮内膜がん)は決して治りにくいがんではありません。病気が子宮にとどまっている範囲で治療すれば80%以上の方は治ることが期待できます」早期発見や早期治療が重要であるとして、「婦人科での診察を躊躇することなく受けることが大切」だと訴えている。(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)
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