「売れない」紙の書籍・雑誌 大規模郊外店、完全無人店舗で「本を売る工夫」を取材した

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   「現在の21歳の62.3%は1か月に1冊も紙の書籍を読まない」。話題となった文部科学省のこの調査結果もさることながら、さらに別の調査では書籍や雑誌の市場規模が縮小している。このままでは、活字の文化が失われてしまう危機感もある。

   そんななか書店では、書籍と読者の接点を増やせるよう、さまざまなタイプの店舗が広まってきている。J-CASTニュースBizは今回、郊外型の床面積の広い大型書店と、駅ナカの完全無人書店を取材した。本を売るための工夫とは?

  • 「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店」(提供元:東京メトロ)
    「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店」(提供元:東京メトロ)
  • 図1 「21世紀出生児縦断調査」この一か月に読んだ書籍の数(出展元:文部科学省)
    図1 「21世紀出生児縦断調査」この一か月に読んだ書籍の数(出展元:文部科学省)
  • 図2 紙の出版物推定販売金額(出展元:全国出版協会・出版科学研究所)
    図2 紙の出版物推定販売金額(出展元:全国出版協会・出版科学研究所)
  • 「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店」(提供元:東京メトロ)
  • 図1 「21世紀出生児縦断調査」この一か月に読んだ書籍の数(出展元:文部科学省)
  • 図2 紙の出版物推定販売金額(出展元:全国出版協会・出版科学研究所)

若者の「紙の本」離れは、年々深刻に

   文科省が2023年10月13日に発表した「21世紀出生児縦断調査」の第21回調査(2022年)」のうち、「この1か月に読んだ書籍の数」を21歳の成人に聞くと、「紙の書籍(本)が0冊」だった人の割合は「62.3%」と、調査対象者の過半数を超えた。

   また、「紙の書籍(雑誌・漫画)が0冊」だった人の割合も「51.9%」と、こちらも回答者の過半数を超える結果だった。つまり、21歳のおよそ半数以上は1か月の間に、紙の書籍や雑誌、漫画を読むことがないというわけだ。(図1)

   一方で、紙の出版不況も深刻だ。全国出版協会・出版科学研究所の調査によると、紙の出版物推定販売金額は、前年比6.5%減の1兆1292億円だ。コロナ禍前の2019年比では、紙全体は8.6%減、書籍は3.4%減、雑誌は14.9%減となっており、書籍よりも雑誌の低迷が顕著だ。(図2)

   この要因として、全国出版協会・出版科学研究所は、

「雑誌は、月刊誌(コミックス・ムックを含む)が前年比9.7%減の4017億円、週刊誌が同5.7%減の778億円。月刊誌の減少は、コミックス(単行本)が2桁減と大きく落ち込んだのが大きな要因」

としている。

   こうした状況があるなか、書籍とお客さん(読者)のリアルな接点となる書店では、どのような工夫がなされているのだろうか。書店に話を聞いた。

   まずは、床面積6600平方メートルをもち、東京都稲城市若葉台と茨城県つくば市学園の森などで「コーチャンフォー」を営業しているリラィアブル(北海道釧路市)。

   執行役員統括マネージャーの佐藤英俊氏は、J-CASTニュースBiz編集部の取材に、

「お客様のニーズを売り場に即座に反映できるように強く意識しています。日々変わるニーズをつかむためには、お客様とのコミュニケーションが不可欠です。そのため、セルフレジは使わず、接客を通してお客様との対話を大事にしています」

とし、コミュニケーション強化を打ち出している。また、魅力的な売り場づくりにも力を入れている。

「当社は各店舗で150位まで並べる文庫本のランキングコーナーが名物となっています。これはお客様にまだ知らない本に出会っていただくという意味もありますが、まだ業務に慣れていない新人スタッフがランキング更新をすることで、売れている作家名や商品名を覚えていただき、商品知識を身に付けてもらいたいという意味合いも隠されています」

   ちなみに、紙の本を読む「読書文化」を守りたいという思いから、未来の読書好きを育てるためにも、児童書コーナーも充実させているという。

本屋に行き慣れていない「ライトユーザー」取り込む

   駅ナカで、完全無人書店を営業している会社もある。

   東京メトロ銀座線/南北線の溜池山王駅構内にある「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店」。2023年9月にオープンしたこの完全無人書店では、スマホなどを通じて支払うのが特長だ。

   同店は、東京メトロ、メトロプロパティーズ、日本出版販売(日販)、丹青社が連携して運営する。日販広報課担当者に、完全無人書店を始めたねらいを聞いた。

   お店のターゲットについて、日販広報課担当者は「駅を通勤で利用するビジネスパーソンで、彼らの生活導線上に書店との接点をつくることがねらいです」という。駅ナカゆえに「通勤前や帰り道にふらっと立ち寄り、溜池山王にマッチした旬の本をサクッと手に取れる」ことも魅力だ。

   今回、駅ナカに着目した点については、次のように説明する。

「全国的に書店が減少していますが、駅ナカや駅周辺は人流が活発で書店を求めている人が多くいると考えられるエリアは、多数存在すると考えております。しかし、駅近に立地していても売上に対して、人件費や賃料など運営コストが見合わず、閉店傾向にあるのが実情です。加えて、最寄り駅など生活導線上に本屋がなくなった、または本屋に行き慣れていない『ライトユーザー』を想定して店づくりを行っています」

   つまり、「完全無人によるローコスト運営」と「ライトユーザーにもやさしい店舗設計」がポイントだ。目指したいのは、「生活者と本の接点である書店という場所を守っていくこと」だという。

「将来的には、書店が抱えるかもしれない人件費の高騰や後継者不足といった課題に対応し、書店が抱える課題に対するソリューションのひとつとしてお取引先にご提案し、書店経営の持続性向上に貢献していきたいと考えます」

   なお、文科省の「21世紀出生児縦断調査」は全国の2001年に出生した子どものうち、1月10日~17日の間に出生した子(1月生)と7月10日~17日の間に出生した子(7月生)を調査対象としている。今回で第21回目。対象者の年齢は21歳だ。

   調査時期は2021年12月23日から2022年3月6日を1月生に行った。回答者は1万1466人におよぶ。また、7月生は2022年7月19日から2022年10月10日までで回答者は1万1406人となった。

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