「円安と人口減少で日本は貧しくなったと言われますが」
Aさんの感覚を裏付ける調査結果が、4月12日に公開されている。第一生命経済研究所の星野卓也氏(経済調査部 主席エコノミスト)による「賃上げで格差は広がっているのか?」というレポートだ。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を元に分析したところによると、都道府県別の所定内賃金を2013年と2023年を比較すると、トップの「東京都」の増加よりも他の道府県の増加率の方が高かった。
最も増加額が多かったのは栃木県で、およそ4万円も増えている。これにより所定内賃金の順位は2013年の14位から2023年には4位にまで上昇しており、愛知や千葉などを追い越して東京・神奈川・大阪に迫り、上位都県との「格差」が縮小している。
年齢階層別で見ても、この10年間で40代後半の給与は伸びていない一方で、20~30代の賃金は伸びており、年齢面でも「格差」は縮小している。
産業別に見ても、2013年の時点でトップ3の「電気・ガス・熱供給・水道業」「教育、学習支援業」「情報通信業」はこの10年でほとんど賃上げが行われていないが、最下位の「宿泊業、飲食サービス業」や「その他サービス業」は大きく伸びている。この結果、順位の変動とともに、上位業種と下位業種との「格差」は縮小している。
なお、Aさんは「円安と人口減少で日本は貧しくなったと言われますが、少なくとも観光サービス業の賃金は上がっています。地方にとっては、大都市圏との格差縮小のチャンスになるかもしれないと期待しています」と述べている。