パリ五輪柔道で「不可解判定」が続出し、世界的に大きな波紋を広げている。最初に物議をかもしたのは男子60キロ級の準々決勝。日本代表・永山竜樹(28)が、フランシスコ・ガルリゴス(スペイン)と対戦し、「不可解判定」で黒星を喫した。男子は60キロ級、73キロ級、女子は57キロ級で波紋試合の中で、永山がガルリゴスに絞められ、主審が「待て」を宣告するも、ガルリゴスは永山をその後6秒間絞め続けた。結果、永山は失神し、技が決まったとみなされ「片手締めで」一本負けを喫した。男子73キロ級でも、橋本壮市(32)の「反則負け」がインターネット上で波紋を広げた。地元フランスのジョアンバンジャマン・ガバ(23)と対戦し、3つの指導を受けて反則負けを喫した。ゴールデンスコアの1分20秒に橋本に2つ目の指導。2分14秒にガバに対して1つ目の指導が与えられ、2分28秒過ぎに、橋本に3つ目の指導が与えられ反則負けした。金メダル獲得の夢は消滅した。試合後、インターネット上では、審判の橋本への指導の理由や、投げを警戒し組手を切るガバの姿勢を消極的とみなしたファンが、Xに不満のコメントを投稿した。女子では、57キロ級決勝で出口クリスタ(カナダ)に反則負けを喫したホ・ミミ(韓国)の地元メディアが、反則負けを不当だと主張。出口のインスタグラムには、韓国語で誹謗する内容が投稿されるなど、物議をかもした。今大会、柔道で不可解な判定が続いているが、五輪柔道の「誤審」として今もなお語り継がれているのが2000年シドニー五輪男子100キロ超級決勝戦だ。日本重量級のエース篠原信一が、金メダルをかけてダビド・ドイエ(フランス)と対戦した。篠原が内また透かし決めるも、ポイントはドイエにシドニー大会の柔道男子は、篠原の試合前に、60キロ級の野村忠宏、81キロ級の瀧本誠、100キロ級の井上康生の3人がすでに金メダルを獲得。男子のトリを務める篠原にも金メダルが期待された。対するドイエは、世界トップクラスの選手で、92年バルセロナ五輪95キロ超級で銅メダル、96年アトランタ五輪では同級で金メダルを獲得。国際大会でのキャリアは篠原を上回るものがあった。日本柔道の威信がかかった一戦は、篠原が一本勝ちしたかに思われた。試合開始から1分半が過ぎたところで、篠原は内股をしかけてきたドイエに、返し技の「内股透かし」を決めた。ドイエは背中から畳に崩れ落ち、篠原の一般勝ちかと思われたが、審判はドイエの有効と判定した。終了直後に日本代表の山下泰裕監督が必死に抗議するも受け入れられず、判定が覆ることはなかった。篠原が決めた「内股透かし」は高度な技として知られ、当時の審判はこれを見抜くことができなかったとみられる。当時のメディアは「世紀の大誤審」として、この試合を報じた。当の篠原は試合後、審判の判定について一切、不満を口にすることなく潔く敗戦を受け入れたという。篠原がつかみかけた金メダルは、シドニーの夜に幻となって消えた。
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