「キャ~、ゴキブリがベッドに飛び込んできた!」パニックになり、スマホで調べた「業界最安値1000円~」の駆除業者を呼ぶと、なんと50万円も取る「ゴキブリ業者」だった。こんな害虫・害獣駆除の相談が急増しているため、国民生活センターは2025年3月4日、「広告の格安料金に要注意!作業後に高額請求する外注駆除トラブル」という警鐘を鳴らす報告リポートを発表した。特に、10代~20代の若い世代に被害が集中している。ゴキブリから身を守るにはどうしたらよいか、担当者に聞いた。本当に「フンや卵」あった? 500円が20万円の錬金術国民生活センターによると、いわゆる「害虫・害獣駆除サービス(ペストコントロール)」(シロアリ駆除を除く)の相談が年々急増している。特に相談が多いのが10~20代のゴキブリ駆除に関する相談ケースだ。2018年度の35件から2024年度(2025年2月末現在)の859件と、7年間で25倍に増えた。こんなケースが代表的だ。【事例1】「フンや卵があった」と言われ、「約500円」が20万円に賃貸アパートの寝室でゴキブリがベッドに飛んできた。明け方なので大家には連絡せず、スマホで「ゴキブリ駆除」「業者」と検索し、「約500円~」と書いてあった業者に電話をすると「30分で訪問可能」と言われた。担当者から折り返しがあったが住所などの確認のみで、詳しい作業内容や料金の説明はなかった。作業員1名が来訪、室内を点検後、隙間箇所やエアコンにスプレーを噴射した。作業員から呼ばれたので見に行くと「フンや卵があった」と言われ卵2個を見せられたが、発見した瞬間は見ていない。「室内全体の燻蒸作業が必要」などと言われ、約20万円を請求された。作業完了後、その場で半額のみ支払い、残金は後日銀行振込する約束をしたが、あまりにも高額ではないか。クーリング・オフしたい。(2024年8月・20歳代女性)【事例2】8畳間に燻煙剤、追い出し剤、フェロモン除去...に50万円!1人暮らしの部屋にゴキブリが出た。インターネットで「約1000円から」と記載されていた駆除業者に電話で依頼した。電話では料金についての説明はなく、せいぜい数千円くらいだろうと思っていた。8畳程度の部屋の駆除作業とクリーニング、薬剤散布などをしてもらったが、作業後に作業請負契約書を提示され、料金は約50万円と言われ、その日は約10万円を現金で支払った。作業請負契約書にはクーリング・オフに関する記載はない。作業内容としてクリーニング、燻煙剤、残効性薬剤、フェロモン除去、侵入経路一式、追い出し剤などと記載されていた。残金を支払わなければならないのか。(2024年8月・20歳代男性)キレイな住まいで育ち、ゴキブリを初めて見てパニックにJ‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった国民生活センター相談情報部の担当者に話を聞いた。――ゴキブリ駆除の相談がものすごく増えていますが、なぜ最近の若い人はゴキブリくらいで大騒ぎするのでしょうか。現在70代の私はゴキブリを見かけたら、箒(ほうき)で掃いて、外に逃がします。また、大型のクモやヤモリもよくタンスの裏や壁に張り付いていますが、こちらはゴキブリを食べてくれるので、「ありがたく」同居しています。担当者 若い人たちは虫に対する苦手意識が非常に強いのだと思われます。昭和の世代と違って衛生環境が進み、小さい頃からとてもキレイな住まいで育っていますから、ゴキブリなど見たこともないし、退治したこともないのかもしれません。虫が外にいるのは許せても、家の中に虫がいるのは許せないと、初めて家の中にいるゴキブリを見て、恐怖でパニックに陥る若者が多いのだと思われます。2021年に東京大学の研究チームが、「現代人に虫嫌いが広がっているのは都市化が原因」とする論文を発表しました。その理由として、(1)都市化が進むと野外の虫が減り、室内で虫を見る機会が増える、(2)また、自然観察体験が減ったため、虫が区別できなくなる、(3)そこに感染症に対する恐怖が加わり、家に侵入してきた虫すべてに強い嫌悪感を抱く、といった内容です。自分で退治することなど思い浮かばず、すぐにスマホ検索――なるほど。若者がゴキブリを極度に嫌う理由はわかりましたが、薬局やホームセンターに行けば、ちゃんと専門コーナーまであり、さまざまなゴキブリ駆除の用品を売っています。自分で簡単に駆除できそうなものですが、なぜいきなり業者を呼んでトラブルに巻き込まれるのでしょうか。担当者 ゴキブリを見たことも退治したこともないから、退治の仕方がわからない。そもそも薬局やホームセンターにゴキブリ駆除の用品があることさえ知らないし、自分で退治しようなどと思いも浮かばない可能性があります。10代~20代の人はいつもスマホを持っており、すぐに検索して調べることが得意です。「ゴキブリ」「駆除」「業者」とキーワードを打ち込むと、「基本料金500円~」「1000円から」といった値段の安さで目を引く宣伝広告が次々と出てきて、つい電話してしまうのでしょう。――事例にあるような悪質な業者のだまされないためには、何が大切ですか。担当者 まず、ゴキブリが突然出てきても、ハチなどと違って身の危険があるわけではありませんから、あわてずに冷静でいること。3桁の料金は絶対にありえません。極端に安い値段を表示する業者には十分に注意してください。次に、賃貸住宅なら事業者に電話する前に、大家や管理会社に相談するのも一法です。それと、家族や友人、知人に相談すれば自分で駆除する方法のアドバイスも受けられるでしょう。害虫・害獣駆除事業者の業界団体である公益社団法人・日本ペストコントロール協会に問い合わせることもおすすめです。「害虫相談所」を設けており、自分で駆除する方法や業者に相談する際の注意点も教えてくれます。業者を呼ぶ際は、その場では絶対に契約せずに複数の業者から相見積もりをとって、自分が納得のいく金額で契約するようにしましょう。お金を払った後もあきらめず、クーリング・オフを――しかし、事例2にあるように、作業が終わった後に50万円などいう巨額を請求されたらどうしたらよいのでしょうか。クーリング・オフ(申し込みの撤回や契約の解除)は可能でしょうか。担当者 可能ですから、作業が済んでお金を払った後でも、あきらめてはいけません。事前の提示額と、実際の請求額が大きく異なる場合は、特定商取引法の訪問販売によるクーリング・オフができる場合があります。すぐに最寄りの消費生活センター「188(いやや!)」に相談することをお勧めします。(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)