顧客から従業員への過剰な要求や侮辱的な言葉を指す「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。俳優の広末涼子さん(44)が看護師に対して暴力的な行為をしたことで注目を浴びた。
「カスハラが医療業界にも広がりつつある」。そう警鐘を鳴らすのは、医療従事者の野田明さん(仮名・30代)だ。実際、こんな場面に直面したことがあった。
「語気はどんどん強くなっていきました」
「予約しているのに、なぜ待たされるんだ!」
その患者は、外来受付に足を踏み入れた瞬間から明らかにいら立っていたという。腕を組みながら眉間にしわを寄せ、受付の前に来るなり不機嫌な口調でまくし立ててきたそうだ。
「こっちは時間ないんだよ」「なんのための予約なんだ」
受付スタッフが丁寧に説明し始めても、それを遮るようにして声を荒げた。
「語気はどんどん強くなっていきました。待合室にいる他の患者さんたちが、思わず振り返るほどの緊迫感でしたね」(野田さん)
スタッフは冷静に対応しようと必死だったが、その空気は重く張りつめていた。
「もちろん、病院側にも改善すべき点がなかったわけではありません。しかし、診察や会計など並行して行う受付業務のなかで、できる限りの説明と対応を行っていたのも事実です」(野田さん)
それでも、その患者は納得せず、怒りを露わにしたまま受付を立ち去った。
そして数日後......。野田さんは思いもよらぬ事実に直面することになる。