性加害疑惑の園子温監督、記者会見で「潔白」主張 民事訴訟で勝訴も「性的行為要求」認定は「不名誉」、控訴の方針

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   「愛のむきだし」などの作品で知られる映画監督の園子温氏が2025年5月27日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見し、自らの性加害疑惑について反論した。

   園氏は、疑惑を指摘した週刊誌「週刊女性」(主婦と生活社)の記事や、俳優の松崎悠希氏のツイッター(現X)の書き込みで名誉を傷つけられたとして、損害賠償などを求めて提訴。主婦と生活社とは23年に和解し、松崎氏との訴訟では、東京地裁が25年5月16日、名誉棄損を一部認める判決を言い渡していた。

   ただ、判決文では、園氏について「複数の女優に対して性的行為を要求する文面のメッセージを送信した」「性的な関係を有した女優を映画に出演させていた」とも指摘していた。園氏は、この部分は主文以外の「終わった後の後書き、感想みたいなところ」だとする一方で、「不明誉なので、僕は控訴を考えている」とした。

  • 日本外国特派員協会で記者会見する映画監督の園子温氏。性加害疑惑に反論した
    日本外国特派員協会で記者会見する映画監督の園子温氏。性加害疑惑に反論した
  • 記者の質問を受ける映画監督の園子温氏(壇上右から2番目)
    記者の質問を受ける映画監督の園子温氏(壇上右から2番目)
  • 東京地裁判決で削除を命じられた松崎悠希氏のポスト。「被害者は何十人もいる」などと書き込んでいた
    東京地裁判決で削除を命じられた松崎悠希氏のポスト。「被害者は何十人もいる」などと書き込んでいた
  • 日本外国特派員協会で記者会見する映画監督の園子温氏。性加害疑惑に反論した
  • 記者の質問を受ける映画監督の園子温氏(壇上右から2番目)
  • 東京地裁判決で削除を命じられた松崎悠希氏のポスト。「被害者は何十人もいる」などと書き込んでいた

「映画という表現活動を絶たれ、家族にも止むことのない誹謗中傷が」

   園氏が提訴の対象にしていたのは、22年4月に週刊女性が「園子温が女優に迫った卑劣な条件『オレと寝たら映画に出してやる!』」などの見出しで掲載した記事や、松崎氏が22年3月に投稿したツイートだ。

   松崎氏のツイートは、園氏が「セクハラパワハラの匂い」しかしない、などと論評するツイート(すでに削除)を引用する形で、

「俺の知り合いは園子音とその取り巻きの『ワークショップ』に通い始めて『事務所(マネージャー)を信用するな』と教えられ、そして『一人』になったところで身体を要求された」
「これを読んで『まさに自分の事だ』と思った?それくらいこれがコイツの『常套手段』だったわけだ。被害者は何十人もいる」

と指摘していた(原文ママ)。

   週刊女性は和解成立後、ウェブサイトの記事を削除。松崎氏を訴えていた訴訟の判決では、松崎氏にツイートの削除と22万円の支払いを命じている。請求額は1100万円だった。

   園氏は会見冒頭、

「この3年間、私は映画という表現活動を絶たれ、家族にも止むことのない誹謗中傷が浴びせられた。しかし、やっと裁判で私の潔白が証明できた」

などと「潔白」が証明できたと主張。松崎氏を刑事告訴していることを説明する中で、

「僕が松崎氏に勝訴して、いったんこれで民事裁判は終わった」

とも話した。

「著名監督という立場を利用した性行為」は「ないです」

   ただ、松崎氏がXで公表した判決文では、慰謝料の算定根拠を説明する中で、園氏が監督としての立場を利用して、複数の女性に性的行為を要求していたと指摘している。次のような内容だ。

「原告が、監督と新人女優という立場が明らかになっている状況において、複数の女優に対して性的行為を要求する文面のメッセージを送信したこと、原告が自身と性的な関係を有した女優を映画に出演させていたことは真実であると認められることからすれば、本件投稿のうち、『身体を要求された』という事実を摘示する部分は、全く根拠を欠くものともいえない」

   「民事裁判は終わった」という発言は、この事実認定を受け入れるのか、という指摘には、受け入れずに争う考えを示した。

   まず、園氏は、判決文の記述について

「裁判は主文が大事。本文は主文にしかなくて、今言っているのは、終わった後の後書き感想みたいなところ」

だと主張。「著名監督という立場を利用した性行為」の有無に関する質問には「ないです」と断言した。

   それでも判決文に性的行為の要求など認定されている理由を、メモを読み上げながら次のように説明した。

「弁護士の立証活動の方針によるもの」
「裁判の遅延を防ぐため、弁護士はこれら本論と関係しない供述を否定するのみで、本論の立証に集中した。このように提出された供述を争わなかったため認定された」

「あのツイートのおかげで週刊誌も乗っかって、それで全てが始まった」

   同様の主張を、メモを見ずによどみなく展開する場面もあった。裁判の目的は損害賠償ではない、などと説明する場面だ。

「あの(編注:松崎氏の)ツイートのおかげで週刊誌も乗っかって、それで全てが始まった。そのツイートがなければ、こんなことにはならなかった。だから最初のきっかけでは、ツイートは本当なのかどうなのか、という裁判だった」

   さらに園氏は、松崎氏が論点を「横に広げて」展開したとして、それに対応しなかったことが「ちょっと失敗」だったとした。その結果、「不名誉」な記述になったとして控訴の意向を示した。

「だから、弁護士団は取り扱わなかったらちょっと失敗したな、というのが実際ある。民事裁判というのは、扱わないと、そういう認定の方にどうしてもしがちになってしまう」
「きっかけとなったツイートは間違いなく虚偽であったということは判決で出た。だから、主文はそのようになっているが、判決文の一部にそうやって書かれたことは不明誉なので、僕は控訴を考えている」

   控訴審での方針については次のように話し、松崎氏側が出した論点を網羅的に反論していく考えだ。

「余計な松崎の証言を1つずつ潰していけばいいだけだ。彼は1個潰すとそこを逃げていく。だから1個を集中して言うとそこは絶対逃げていく、横へ横へと逃げちゃうので、それだったら逃げた分また追いかけて控訴して、これは本当なのかどうかを調べ上げればいいだけだ」

   一方の松崎氏は、Xに会見の動画を投稿して

「ある程度の予想はしていましたが、その予想をはるかに超える、極めて不誠実でごまかしに満ちた会見」

などとコメント。「潰す」発言には、

「控訴しても、裁判所は証言者を最大限護るように動くでしょう。あなたの思うようには進みません」

と反応した。

(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)

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